オリバーに助けを求める【逃げ出す】
文字数が多かったので前編と後編に分割しました。
寝室の鍵が見つからず3分――。『オリバーはもう帰ってしまったのでは?』という不安から、私の焦りは募るばかり。
冷静になってみると、用事で訪ねて来た客がたった3分で帰るわけ無いのにね☆
焦っている今の私にそんなこと考えてる余裕?
――あるわけないじゃない!
「あっ!今度こそ本物の鍵を見つけました!!」
《マリー……悪いけど1分前にも同じこと言ってたわ》
ドアが開かなすぎて自暴自棄になりかけたその時――。
『ガチャッ』と音を立ててようやくドアが開いた。
あぁ、鍵が開くの長かった……。
ドア向こうには目尻に涙を浮かべたマリーの姿が。全く鍵が見つからなくてマリーも心が折れていた様子。
「お嬢様ー!開きました!」
「マリー。良くやったわぁ……うぅ」
たかが鍵を開けただけ――。それなのに偉業成し遂げたかのように気分が大きくなっている私達は、感動の(?)抱擁を交わした。
「「うわーーーん。」」
正直、大きい声で泣き叫んじゃった自覚はある。
幸い誰にも気づかれてないから良かったけど。
渡り廊下に響いた声が消えるの見計らって今度は出来るだけ小さい声で話すことにした。
「先ほど書斎を確認しに行きましたが、テイリー様と深く話し込んでいたので、まだお帰りではないと思います!」
はっ!
様子を見に行ったのね、なんて気が効く子なのかしら……
やっぱりマリーを侍女にして正解だったみたい。
「それは良かったわ。確認してくれてありがとう。」
マリーからの慰めの言葉と抱擁のお陰でどん底だった気分もすっかり元通り『あぁ、この子のヒーリング効果絶大。』としみじみ感じた。
マリーに感動し終わった私は、急いで自分の着ているワンピースと彼女のお仕着せを交換して無事変装完了!
私がいない間は彼女に影武者を頼むってわけ!
名案でしょ?
「じゃあ行ってくるね!」
* * *
内心ビクビクしながらも表向きは、『えっ?私、メイドですけど〜』な顔をして屋敷の中を歩き回り早4分――。屋敷の角を3回も曲がり、ようやく裏口から外へ出ることに成功した!
……ものの、
「どうやって荷台の中へ入れば良いの?!」
馬車に普通に乗り込んだらバレるだろうから
『荷台の中に隠れる計画(←私ってば冴えてる!)』
を立てたんだけど――。
馬車の前に御者が立っていて荷台には近づけそうにない。
ここまで来るの大変だったから絶対に失敗出来ないのに…。
[これまでの道のり]
①おじ王子訪問&プロポーズ
↓
②兄に監禁される
↓
③元夫の馬車に侵入!←new
今日1日で色んなこと起こりすぎよ!まだ午前中だって言うのに。
『伯爵様ぁ、全然戻って来ないなぁ。ふぁ……。』
疲れているのはどうやら私だけではないよう。
簡易椅子に腰掛けてあくびまでしている姿は気怠げそう。
なんか、やる気が無さそうな御者ね。
まぁ、私からしてみればやる気ない方がありがたいけどね☆
ここは眠そうな彼を寝かせてあげようじゃない!
催眠術師がよくやる手の動きを見よう見まねでやってみる。
『物は試し』って言うし。
「あなたは段々眠くな〜る!そのまま眠りについちゃいなさい!お眠りなさ〜い!」
「ふぁー、……グゥ……。」
私の念力が通じたのか眠りについた彼はそのままビクリともしない。催眠術の才能ありそうで怖くなってきたけど、私の行く手を阻む者は居なくなったわけだし……
スピード勝負でササっと行って、ササっと中に入ろう!
(いまだ!)
ササッと身軽に荷台へ入ることが出来た。案外すんなり入れたわね。荷台の居心地に問題があるとしたら耳をすまして何とか聞こえるかなぁ〜ぐらいの微かな音しか聞こえないこと。
あと真っ暗。狭いから気をつけないと頭打っちゃいそう。
『……はっ!いっけね。また居眠りしちまった。』
居眠りした従者は常習犯で立ち寝したことを微塵も悪いと思っていない。そんな声が荷台の中まで聞こえて来た。
『おっ、これはこれは伯爵様。お帰りで〜』
っ!やっとオリバーが伯爵家に帰るのね!
私も疲れちゃったから荷台の中で一眠りしようっと。
おやすみ…………グゥ……。




