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お兄様は敵だった?!


風が吹雪いて肌寒い午前10時。そんな中でエントランスまで私達はおじ王子のお見送りの真っ最中。


でも、肌寒いぐらい構わないの。

ようやく王子達に帰ってもらえるから!

……そんなことは口に出せないので嬉しさを悟られないように平然を装っている。


この人達ったら、まるまる1時間も粘ったんだから!

『家族と相談してから決めたい』って言ってようやく納得したぐらいには手強かったわ。もっと早く帰ってもらうつもりだったのに、全く。


「うわっ。なんだ?あぁ、雨か……」


一粒の雨がおじ王子の低く丸い鼻に当たった。

見上げたら太陽が次第に隠れ始めて、雨がポツリ、ポツリ。


空まで暗いなんて…今の私みたいね!


「空が私の変わりに、あなたとの別れを悲しんでいるのでしょう。それでは明日のパーティーで。」


「あっ、はい……」


昨日の出来事でパーティー嫌いになったのに!

正直もう懲り懲り。もう行きたくない!グルグル考えを巡らせていたら、いつの間にか王子達を乗せた馬車もSP達が乗ってきた馬も前庭にはいなくなってた!


歓喜!!!もう来ないでくださいね!

そんな具合に私が一喜一憂していたら、何やら後ろから視線を感じる……


「ん?マリーどうしたの?」


「お嬢様……先ほどは騙すような真似して申し訳ありませんでした!」


少し思い詰めたような表情のマリー。私を騙して王子と面会させたことを気にしてるみたいで頭を下げながら謝られた。



「マリー気にしないでちょうだい。あの時、あぁしてくれなかったら家中を逃げ回ってただろうから。」



「簡単に目に浮かびます……お嬢様がお屋敷中走り回る姿。」



空を見上げて私が逃げ回っているところを想像してるみたいね……確かにやりかねないと自分の事ながらに思う。



「その話はもう良いの!大事なのは王子との再婚話!」



「そうですよね。あっ、もう直ぐテイリー様が帰宅されます。ご相談されてみては?!」


確かに、今頼れるの兄だけだし!助けてもらうおう。

 

「そうするわ。それじゃあ、待ってる間にお兄様の好物のカモミールクッキーでも焼きましょうか?残ったらあなた達にもあげるね。」



「わぁ!嬉しいです。お嬢様のクッキー久しぶりなので楽しみです!」



           * * *

 

「焼けてきた〜!美味しそう」


部屋中にクッキーの甘〜い香りで包まれた頃、兄の様子を見に行っていたマリーが厨房に戻ってきた。


「テイリー様が、ただ今帰宅されたそうです!」


「すぐ行くわ!おじ王子とは、絶対に再婚しないんだから!!」


「お嬢様頑張って下さい!マリー応援しています!」 

 


マリーの応援を受けてより握った拳に力が入った。



チンッ

「あっ、クッキー焼けた!」

          


          * * *



「フーフ〜フフフ♪再婚の話どうしようかと思ったけど、お兄様なら上手いこと断ってくれそう。」



兄は現在、書斎に籠って領地経営に関する仕事をしているらしい。忙しくて休めてないみたいだから、機嫌を取るべく兄お気に入りのカモミールティーとクッキーをワゴンに乗せて兄の書斎に向かってるってわけ。



コンコン

「お兄様!」


「うわっ!なんだ…お前か。何の用だ?」



私の突然の訪問に驚きを見せたものの、直ぐに机の資料に顔を向けた。



兄テイリーはオカン気質で口うるさく感じることが多いけど、今のみたく仕事に集中している姿は本当に絵になる。身内の私が言うのもなんだけど……兄は中々イケメンなの。



まぁ……オリバーの方が顔が良いけど。



わかりやすく言うと、

『勇ましくてカッコ良い兄』と『中世的でハンサムなオリバー』って表現が分かりやすいかしら? 

 


「その様子だと何か頼み事でもあるのか?クッキーまで持ってきて」



私がワゴンを持って来たことは誰でも分かることだけど、クッキーの皿は銀の蓋をして来たから甘い香りは封印されているはず。



それなのに中身がクッキーだと言い当てるなんて!



「どうしてクッキーって分かったの?!」


ちゃんと銀の蓋をしてるはずなのに。持って来た私でさえ僅かな香りしかしないのに。



「匂いでわかった、それだけだ。」


「鼻よ良すぎ……まぁ、良いか。久しぶりにお兄様と食べようと思って作ってきたの。一緒に食べましょうよ!」

 

「お前の手作りクッキーか。兄妹水要らずでたまには良いかもしれない。丁度仕事が一段落した所だからお茶にしようか。」


「わ〜い」


フフッ

このクッキーで買収して私のお願い聞いてもら――



「気のせいか?ドス黒いオーラが……。」


「いえ。何でもないわ。」


危ない。顔に気をつけないと。しっかり笑っておこう!



「今日のお前の笑顔……なんか怖いな」



           * * *


 

「そうだ……お兄様。婚約者候補は見つかった?」



時間を掛けて本題に入る作戦!だから、どうでも良い兄の婚約者候補の話題に出したってわけよ。



あぁ〜この紅茶美味しいわね。



「まだ見つからないんだ。良い令嬢を紹介してくれ。」


「お兄様ならモテるじゃない。私が紹介する必要ないわよ。」

 


そもそも私には、友達がいないのに。仲良いのは、お姉様と侍女のマリーとエザラくらい。



「夜会で話しかけてくれる令嬢から選べばいいでしょ?」


「肉食系じゃなくて、もっと可愛らしい令嬢をだな……」



「居ないわ。そんな子」



「よ〜く記憶の中の令嬢達を思い出してみろ。良いのか?お兄様が一生独身でも。」



兄の言うように、よ〜く頭の中を思い返しても全く心当たりがないわ。そんな子居ないわ。諦めてもらうしかない。



「そんなに結婚したいなら、オリバーにでも頼んで女の子紹介してもったらいいのに。」



あの人なら1人どころか10人ぐらい紹介して貰えそうね。あー、あの女ったらしのこと考えちゃった!ヤダヤダ

 


「っ!オリバーの名前聞いて思い出した。今日アイツと会う約束してたんだった。」



「ど〜うせ『私と再婚しろ!』とか頼むつもりなんでしょ?」


「まぁ、その話はいい。……で、お前は何しにここへ来たんだ?何か魂胆があるんだろう」


もう、言っちゃえ!



「実は………」



 * * *

 


「ハァ?!隣国の王子に再婚を申し込まれたぁ?!」



隣国の王子という言葉にかなり驚いている様子で、デカデカと口を開けて固まっている。そりゃ驚くよね。



私もプロポーズされた時色んな意味で驚いたもん。

20歳ぐらい歳離れてるし、王子だし……



「そう、相手はなんと40代ぐらいの『おじさん王子』なの。絶対結婚したくな――


「それなら早急に返事を書くしかないな。再婚相手が王子なんて前代未聞だ!」



えっ?話聞いてなかったの?驚きすぎて手に持っていたクッキー床に落としちゃったじゃない!

  


「だから、相手は()()()()なんだってば!」


「それでも、王子だろ。王族の人間なんてどうせ顔がいい。年齢なんてちっぽけな問題だ。顔のいい殿下と再婚なんて俺が女だったら羨ましいぐらいだぞ。」



どうやら兄は、王家は全員美形論を信じているらしい。

流石私と兄妹ね。考えること同じ………


でも美形論は嘘なの!迷信なのよ!

もしイケメンだったら即OKしてるのよ!



「いや、それが――


「どんなイケメンなんだ。個性派か?それともハンサム系か?まぁ、どっちにしろおまえに拒否権はない」



「ハァ?!」



お兄様ったら全く私の話に聞く耳持たない!あんな脂ぎっとりおじ王子と結婚だなんて嫌よ、無理よ、最悪よ。



隣に立つのを想像しただけで墓に入った気分。



いや……このまま行くと本当の意味で同じ墓に入ることになる!?それは絶対に阻止しないと!


「絶対に嫌!無理無理無理!」


「全くワガママな妹を持った。」 


いきなり立ち上がったかと思ったら、あっという間に担ぎ上げられたんだけど、筋肉質な肩にお腹が食い込んで苦しいし痛い。



さっき食べたものとか諸々出ちゃいそう………ぅぐ



でも、そんな苦しさに怯んでられない!今大事なのはこの暴走した兄を止めること!!


「降ろしてよ!」 


「お前は少し頭を冷せ。王子との結婚だぞ」


私を寝室に閉じ込めて逃げないにするつもりね。

かなり怒っているみたいだけど、こっちも嫌なものは嫌!



「今日ここに来たのは、再婚が嫌だから断ってもらいに来たの!」



「それは無理だ。相手は隣国の王子だからな。そんな簡単にこちらからは断れない。」


近衛部隊の監理官として体を鍛えているだけあって手足をバタバタして反抗しているのに全く降りられそうにない。

家でも自主トレに励んでいるみたいだし。そんな兄に私が殴ったところで、これっぽっちも意味ないというもの。


あぁ、ムカつく!



いや、今は兄の筋肉事情とかどうでも良いわ!



「王族だから断りずらいなら、誰か相手を紹介して!直ぐにでも再婚すれば王子も諦めるわよ!」


「その話には応えられないな。お兄様は残念ながら人脈が乏しいんだ。諦めなさい。」


「そんな事ないでしょ!同僚とか部下とか沢山いるじゃない!」



そこそこいい地位についてる兄が、人脈に乏しいわけがない!大嘘よ!



「可愛い妹にあんな奴らを紹介するわけないだろう。ろくな奴がいない。」



妹を想っての発言だろうけどおじ王子に嫁ぐよりマシ!

絶対にマシ!


 

「もうそれでも良いから紹介してよ。それがダメなら、プライベートで交流のある令息を!」



「プライベートで交流があるのはオリバーぐらいだ。残念だったな。」



「そんな……」


「諦めたか」

 


「そんなにお兄様が孤独だったなんて!ほぼ私並みの人脈じゃない!」



ガクッ

「そこかいぃ!ああ、そうだよ。お兄様は孤独だよ。だから相手も見つからないんだ。」


「相手が見つからないのは選り好みするからよ。選択肢私より多いじゃ無い!ちょっとぐらい妥協――


「着いたぞ。たっぷりと自分の立ち番考えて反省しなさい。」



ガチャン!



話に夢中になっていた隙に、私を部屋の中に閉じ込めてあっという間にガチャリと鍵をかけた。



「ちょっとー!置いてかないで!」



部屋に下ろされてから鍵をかけるまでが早過ぎて逃げられなかったわ。悔しい!


「もう!話聞いてくれてもいのに。……そうだ!窓から逃げよう!」



そう思って窓の下を覗いてみたけど………



「うん。無理だわ。」



ここ3階だもんね。兄ならここから布を垂らして降りられそうだけど私の力じゃ無理。途中で力尽きて落っこちちゃう。だって私が弱いもの。


「流石にここから飛び降りるのは危険すぎ……あっ!馬車だわ!ここから出してもらうチャンス!おーい」



前庭に泊まった馬車の中から現れた人物――サラサラな金髪にサラッとした長身。ハットをかぶっていてもオーラは隠せてない彼は、


「っげ、オリバー……」



2週間前に離婚したばかりの元夫だった。



そんな時、追い討ちをかける様に兄が現れた。助けを求めてたってバレたらもっと逃げられないような厳重な部屋に監禁されそう。……そんな檻みたいな部屋がウチにある中は定かじゃないけど。



「ゲッ!こっち向いた!」



兄にバレる!と思った私は私は咄嗟ににしゃがみ込みで隠れるしか無かった。


「そうだ!オリバーに助けてもらおう!彼なら、元夫だから再婚する言い訳にも信憑性あるし!」



なんて名案なのかしら!



でも困ったことに、ここから叫んで部屋から出してもらおうと思ったけど、兄がいる手前で叫べるわけが無い。


「どうしよう………。」



コンコン

「お嬢様!大丈夫ですか?閉じ込められたって聞いて、いてもたってもいられず駆けつけました!」



マリー丁度いいとこに!



「マリー!あなた部屋の鍵持ってるわよね?!」

「はい!ただ今!開けますね。」


ここから出て、オリバーの馬車に乗ってひとまず逃げるのよ!!!



ガチャガチャと鍵を開ける音がする。



「マリー!ドアが開いたのね?!」


「……いえ。この鍵は物置の鍵でした。あっ、部屋の鍵ありました!」


「よくやったわ!マリーこれで私は――


ガチャガチャ

「あっ、これも違う……これかな?……違った。」



ガチャガチャ、ガチャガチャ


 

「マリー。鍵多いのは分かるけど、そんなに有るなら、名前付けときなさいね。」


「はい。すみません。」



どうやらここの部屋から出るのはもう少しかかりそう……



「あっ!……違うか。これ…は、さっき試したし。えーん。分からなくなっちゃったぁー。」




それにしたって鍵多すぎ。


  


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