王子のアポなし訪問(辞めろや
ゴーンゴーンと結婚式でしか聞かないような鐘の音が……
(あれ?私って結婚するの?)
20mくらいの長〜いバージンロードが見える………
(いや、長過ぎない?)
視界が何故かぼやけているのと、ベールを被っているせいで、目の前に居る結婚相手の顔は一切見えない…………
(えーと、相手は誰?)
『それでは誓いのキスを…』
外国から来たであろうカタコト神父のお言葉により、新郎が私のベールに手をゆっくり持ち上げていく……
(えっ、ちょっと!まだ心の準備が出来てない!イケメンだったらどうしましょう♡)
緊張と恥ずかしさから目を瞑っちゃった!
『顔を上げてくれ、エラ……』
『はいっ………えっ?!』
『僕だよ、エラ!おじ王子だよ!』
ハハって爽やかに笑ってるけど、握られてる手が油っぽい
「いやぁぁぁーーーーーーーーーーーーー!!!!」
* * *
「っは!夢?!良かったぁ……。悔しいから、もう一回イケメンと結婚し直して来よう!おやす――
「お嬢様ー!」
ニ度寝を決め込もうとした所、ドアを壊れんばかりに叩きつけて入ってきたのはマリー・ショコラティエ(19)。
あぁ、私の二度寝が!イケメンが!
「お嬢様!!!大変です!!」
「何?天気が悪くてお母様たち旅行に行けなかったの??」
眠気が抜けきらなくて目がしっかり開かない私はあくびまでしている。
「昨日疲れて帰ってきたんだからもうちょっと寝ててもいいじゃない〜」
あの後、気絶した私をおじ王子が馬車まで運んでくれたらしい。って言うのを昨日目が覚めた時マリーから教えてもらった。昨日驚いちゃって、悪いことばかり考えちゃったけど……そんなに王子は悪い人じゃないのかも――
やっぱり私のこと『持ち帰りたい』発言してたから嫌い!
「30分前に出発されたので奥様達は大丈夫です!取り敢えず……お嬢様はお支度済ませましょう!!!」
「えっ?うん。」
異様に慌てたマリーは早急に私の支度に取り掛かった。
マリーに怪しさを感じる……気のせい?
昨日の、ゆっくり、じっくり、ドレスを考えていた時に比べて凄いスピード感があるわ。因みに今日のドレスは淡〜いピンクの花柄な物を着ている。
「今日の服も昨日に引き続き可愛い。」
「勿論ですとも。お嬢様が気に入りそうな物を持ってきましたから!」
流石、マリーは私の事を知り尽くしているだけあるわ。…それにしても、私の褒め言葉にも反応せずやたら早々と仕事をこなしているわねぇ。
もっと怪しい。
「ねぇ、何かあったの??」
「いえいえ、急いでいるだけでございます〜」
こんなに笑顔で返されると、もっと、も〜と怪しい…まぁ、いいっか☆
そんな大したことじゃないはず〜。
そんなことよりも、このドレス柔らかい素材だから歩きやすいし楽で良い!今着ているのは普段着のドレスで昨日のよりかは質素だけど普段着ならこれくらいが普通だし。
「今日は気分を上げる為にいつもは絶対着けないネックレスとピアスも着けようかしら?」
「えぇ、そうしましょう。是非ともそうしましょう。」
「なんかテンションおかしくない?……やっぱり怪しい」
「そっ、そんなことございません〜。料理長がお嬢様の事を今か今かと待っているので、早く支度をしているんですよ〜」
「な〜んだ。そうだったのね」
* * *
応接間に届きものがあるので見てきてほしいと言われたので向かっている。
何が届いたのかしら?
マリーも一緒にくればいいのにぃ〜。
フ〜ン、フフーン♪
『まだ、彼女は来ないのか?』
ゲッ!この声き覚えある……嫌な予感がしたけど、一応入って確かめてみよう。
そんなまさかね〜なんて陽気にドアを開けるとそこには、
「おぉ、やはり君はここの令嬢だったのか!」
そんなまさかのおじ王子……マリー、私を騙したのね!
でも現在、家にいるの私だけだろうし冷静に考えると仕方なくもあるけど。私が逃げると思ってギリギリまで言わなかったのね。納得〜
「お嬢様ぁー!遂に!!」
私の顔を見て喜びまくっている彼は新人執事トム・ピーターパン。彼の後ろには、深く腰掛けているおじ王子と、姿勢正しく座る宰相(名前なんだっけ?いつも蝶ネクタイ付けてるわね)が部屋の真ん中の高級ソファーに鎮座している。
実に偉そうだわ……偉いんだけど。
オマケにその二人を囲う様にSPの黒服の男達が!!つまりはお偉いさんが取り巻きを連れてやって来た状況。
小説でよく見る展開だけど、実際に起こると恐怖でしか無い。ソファーに座る二人の前で立って対応していたトムは、冷や汗かいて顔が真っ青。
可哀想に。執事長のセバスチャンに押しつけられたのね。
泣きそうになっていたものの、なんとか堪えた面持ちで部屋を出て行ったけど、その姿がまるでライオンの前から逃げ出すウサギ……これから始まる地獄の時間に私もトムみたいに泣きたくなった。
「支度に時間がかかりまして……」
消え入りそうな声でそれっぽい言い訳をして登場した私に、宰相からは『遅い』と目で訴えられたけどいきなり訪問する方が100悪い!これに尽きる!うん。
それにしても……SP8人ってこの部屋埋まってるし黒服のSP達が目を光らせているのが恐ろしすぎる。『逃げるんじゃねーぞ』と言わんばかりの厳戒態勢に泣くなって方が難しい。
《一体全体私が何をしたって言うの!》
オマケに両親が旅行で居なくて、兄も仕事で家を空けているから一人でなんとかしないといけなくて大ピンチ(涙)
「……と思ったんだ!だから、あなたを妃として娶りたいんだ。君でないとダメなんだ。」
軽く現実逃避した私に突き刺さる嫌な言葉。これ普通に『嫌です!』なんて言おう物ならSPに殺◯れそう………。
ここは!やんわり断るに限る!
「そんな……一度結婚した身ですし、私なんてまだ若くて未熟者ですので高貴な殿下には私如きでは不釣り合いです。」
(訳:歳も離れているし、身分違いすぎるしお断り!)
「そこんなことないぞ!……そなたを一目見て、ビビッと来たんだ!!」
王子が熱く語ってくれてますけども、私の頭の中では……【朝から仰々しい。騒がしい。帰って欲しい。】の3点セットで埋め尽くされているんですよ。
こんなことなら可愛くおめかしするんじゃなかった!私が可愛すぎるあまり王子が結婚を申し込んできてしまったのだから。可愛すぎるのは罪ね……。
シクシク。
だけど泣いてはいられないこの状況にまた意識を取り戻して王子へ意識を向けた……
けど、やっぱり嫌!ごめんけどタイプじゃない!
「王家に嫁ぐ事など身分不相応です。ですので辞退いたします……。」
しっかり辞退する旨を言えた!これで破談になるしかないでしょ!勝利を確信した私は心の中で軽くガッツポーズ。
「殿下はそれでも構わないらしい。実に深い愛だ。」
かっ、構わないの?!何粋な計らい見せてきてんの?あんたにプライドってもんはないですかい?!
「ですが………ですが………ですが!!……」
(訳:ヤダ……。ヤダ………。ヤダ!!………)
「エラ嬢、と言うのだな?」
「…そう、ですが」
私の名前を愛称呼びで……。大嫌いなオリバーでさえ感じたことのない嫌悪を感じた。王子がどれほど嫌な存在なのか伝わるはず。
「歳の差など気にしない、ぜひあなたと結婚したいんだ。」
私の前に跪いて手を取るおじ王子…………あぁ、手がやけに油っぽい。
小さい頃は『王子様にプロポーズされたい!』って夢見てたのに、まさかこんな形で実現するとはね。
「オホホホ〜。まぁ。熱烈ですこと……」
(訳:歳気にしてるのこっちだし!歳の差20とかだし……)
ムリーーーーーーーーーーーーーーーー!
これが、引き攣り笑顔に涙目が加わった瞬間……もう笑うしか無かった。
「オホホホ……。(涙)」
朝からアポなし訪問プロポーズする王子、強過ぎ




