救世主降臨で神!!
「夫…だと?!どういうことだ、離婚したから元夫の間違いだろう?」
「いえ、法的に夫で間違いありません殿下」
王子相手だと言うのに、全く臆することなく平然と話すその姿が不覚にもカッコよく見えた。いつもならあの余裕のある表情と態度の何から何まで嫌いだったのに……
♡いざ助けられてみたら案外悪くないかもぉ♡
そんなフェーズにいる私は、現在横抱きにされている状況。つまりお姫様抱っこ。夢にまで見たお姫様抱っこ初体験の感想は『案外悪くない』って感じ。
私の気持ちも聞かず突き進む王子と嫌々でも私のことを助けてくれる元夫。どっちが良いかと言われたら断然後者。今までにないくらいオリバーの株が爆上がりしているけど…婚姻届提出済みのにそんなこと言って大丈夫なの?
「ねぇ、私たち離婚したのに……」
「全く問題ないよ。エラ」
心配して顔を見上げると彼は余裕そうに『ッフ』と笑った。
その表情のなんて艶めかしいこと!
一体この顔でどれだけの令嬢達を虜にしてきたのだろう。1、2、3、4……数えきれない。
なんて考えていたら王子の後ろで大人しくしていた宰相が、わざとらしく『ゴホン』と大きく咳払い。
あっという間に私たちの前に立ちはだかった。
「お取り込み中失礼。ヴィンセント伯爵『法的に夫』とは?婚姻届を出したことは既にこちらで確認が取れている。もし先ほどの発言が嘘なら、そなたを処罰せねばらん。」
後ろで静かにしていたと思ったら痛い所ついてくるわ、この宰相。
「ご説明いたします。婚姻届は出しましたが正式にはまだ受理されていません。先月法が改正されて、受理されるのが3週間後になったからです。」
「なんだ……あっ」
何やら心当たりありそうな面持ち。
これ絶対に『やらかした顔』だわ。
確か…離婚する人を減らすために頭を冷やす期間を作ったみたいな話だったかな?私はもう離婚した気になっていたからそんな法律のこと頭から抜けていた。
この制度作った人神様だわぁ。
あれ?でも待って、宰相の案って聞いたけど。作った本人が忘れてたってこと?……黙っておこう。
「それとも、私の妻を奪うのですか?一国の王子とあろう者が。」
オリバーが放った爆弾発言に会場中がザワザワしてきた。
良いよ、良いよ。良い感じよ!
「そうですよ!このまま結婚するのはあなたにも不利です。殿下!諦めて!」
オリバーに横抱きにされている今の私は『虎の威を借る狐』
私の発言だとバレると厄介なので口元を隠して頑張って声色を変えたからあの人達にはバレてないはず……うわっ!宰相と目が合っちゃった。
口笛吹いて誤魔化しておこう――。
「っく。恥をかくところだったというけか。だが、お主とはあと1週間もすれば離婚。そうなったら赤の他人だろう!口を挟まないでくれ!」
「今朝、婚姻届を取り下げてきたので私達は仮夫婦ではなく正式な夫婦に戻りました。これがその証拠です。」
懐にしまっていた婚姻届を堂々と王子に見せる。
あぁ、オリバーと結婚するのが嫌で殴り書きした二年前の婚姻届……懐かしいわ。それにしても、王子がこれでもかと言うほ紙に近づいているのが凄く気になる……ねぇ、紙と顔近づき過ぎじゃない?
「お分かりいただけましたか?」
王子の反応に満足したオリバーは、ニッコリマークも恥じらうような爽やか〜な笑顔を見せている。周りの令嬢達が素敵……と目がハートになるほどの威力に流石の王子もたじろいでいる。
「っく……。」
「ですので妻のことは諦めてくださいね。」
「そうです。諦めて下さい!」
彼とまた結婚継続する事になったけど、これで王子と結婚せずに済むから別に問題なし!オリバーの株が爆上がりしているのでこっちと結婚する方がいい。
「きっ、気分が悪いのでこれで失礼する」
王子が踵を返して逃げていくのとほぼ同時に、人混みから弾き出されるようにして兄が現れた。何故だか半泣きの顔だけど、泣きたいのこっちだよ。
「なっ、何がどうなっているんだ??お前本当はうちのエラを……うぅ……エラを好いていたんだな。見損なったとか言って悪かった」
「見損なったは余計だったね。あと、抱き付くのやめてくれる?今エラを抱えてるからバランス崩しちゃうよ」
「結婚式でもお姫様抱っこを拒絶していたと言うのに。こんな日が来ようとは父さんも母さんも泣いて喜ぶだろうな」
天を仰いで神に感謝しているみたいだけど……。お父様とお母様まだ生きてるから!それだと亡くなったみたいだから!やめて!
「それじゃあ、テイリーそういう事だから王子とエラの婚約の話は諦めてね。」
「あぁ、しっかり断っておこう!」
お兄様!ナイスじゃない!心の中で『筋肉馬鹿』だとか『脳みそ筋肉』とか悪口言っちゃって悪かったわ。ちょっと反省。
「今日はこの辺で帰る事にするよ。沢山注目されてるみたいだからこのまま参加は出来そうにない。エラはこのままヴィセント家に連れて帰るけど構わない?」
サラッと言うけど、私ヴィセント家に移り住む事になったらしい。展開早い。
「あぁ、是非ともそうしてくれ!あぁ、明日にでも荷物をヴィセント伯爵家に送ろう!」
* * *
「ねぇ、なんで私のこと助けてくれたの?」
揺れるヴィセン家の馬車の中。昨日助けてって懇願した時一ミリも助けてくれようとしなかった彼が、わざわざ役所に行って離婚届を取り下げに行ってくれたなんて……
本当は私のことが好きだったとか?!
「何でだろうね……歳の離れた王子と再婚はちょっと可哀想と思ったのかな?」
「何よ……もっと『本当は君のことが好きだった』展開とかが良かったわ」
「ッフ、君って正直だね。」
「でも……ありがとう。お陰で助かった」
オリバーに感謝を伝えるのは初めてだから自分でもどうしたら良いのかわからなくて、隣に座る彼の裾をちょこんと引っ張った。声が小さいのは恥ずかしいから。
別に甘えてなんかいないのよ……。
「っふふ。それじゃあ、お礼に蔵の掃除でもしてもらおうかな?」
「そっ、その蔵ってレナードですら近づきたいないって言う、曰く付きの…」
まさか私にお化けや怪物が出ると噂の蔵を私に掃除しろって?!
「お礼言うんじゃなかったぁぁーーーーー!やっぱり離婚よーーー!」
「ハハハ。今日再婚して離婚したら最速だね。王子がまた婚約を申し込むんだろうな〜。結婚式には呼んでくれよ?」
「もぉぉぉーーーーーーーーーー!」
明日から隣に座る、人たらしさの悪魔との結婚生活が再び始まる。……それでも、不思議な事に初婚の時ほど嫌じゃない。
何故かしら?………………
顔がいいから、そうよね!
次回はオリバー視点です。その後の回は個性的なメイドが登場するのでお楽しみに!!




