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この子絶対守らなきゃ……


ちょっと重め。


あとレーティングかけました。全年齢向けに書く予定だったけど、重くしたくなる病が発症して、結局R15になってしまいました。


 ちょ待てよ。


 ま、まっ、ままま待て、今は慌てる時じゃない。嘘だ、お、男だとッ!?


 俺の次に顔が良い、タレ目の中性顔が!? いやまぁ、確かによく見たら男っぽいが、この歳の男はガキだぞ!? いや、確かにガキなんだが、そうじゃねぇ。


 とりあえず仮面ラ○ダーとか戦隊シリーズを見て、そこらに落ちてる長い木の棒振り回して、ダチと保育園でバカやって怒られるもんだぞ!?


 男のガキが、こんな大人しい筈がねぇ!!!


 それより、まずは謝っとかないとな。いい女は間違いをスッと認めて謝れるもんだ。



「ご、ごめんね!? 凄く、その……落ち着いてて大人っぽい子だと思ったから……」



 とりあえずガキは、他の奴より大人って言われると嬉しく感じる生き物。こう褒めときゃさっきの間違いも、良いもんだって受け止める筈。ガキはチョロいからな。



「そんな事ないよ。それに可愛くて素敵な女の子にそう言われるのは嬉しいから、気にしないでね」



 けっ、謙遜、だと……!?? なんだコイツ、人生二週目か!?


 俺はそんなことを考えながら、目の前にいる有り得ねぇ生き物を見ていると、紫紀ママンが「明ちゃん、紫紀は同じ保育園に入る事になったから、明日からよろしくね」と、ぽやぽやオーラを発しながら、家に帰りそうな雰囲気を醸し出す。

 


「また明日ね、明ちゃん」



 そう言い、紫紀は小さく控えめに手を振る。さっきの控えめスマイル付きで。女子かコイツ、お前のママンと同じぽやぽやエフェクト出てんぞ。


 おい、そこはもっとガキらしく、元気に大きく腕を振るようにだな……。まぁ、手本を見せるつもりは無いが。なんたって俺は、圧倒的美を持ったママンみたいな大人の女になる予定の、今は清楚系パーフェクトビジュアルロリだからな!



「紫紀くん、また明日! 保育園でいっぱい遊ぼうね!」


「うん、また明日」




 ~・~・~・~・~・~・~・~




 紫紀side



 気が付けば、私の体は男の子になっていた。


 あぁ、輪廻転生って有り得ることなんだなぁ……。


 そう思うのと同時に、私は恐怖から開放された事にとても深い安堵を感じた。


 私は前世のいわゆるストーカーというものの被害に遭っていた。相手は当時私が小学生の時から関わりがあった5つ年上の男性で、執拗なくらい私の事を追い回していた。


 前世は地味な子で、お世話にも凄く可愛いとは言えなかったからどうして私の事を追い回していたか理解ができなかったし、ストーカーの正体を知った時には余計に恐怖を感じた。


 最初は私の事を何故かよく聞き出す人だと思っていた。身長と体重、年齢と誕生日、好きな物と嫌いな物、それから家の場所と家族構成……根掘り葉掘り聞かれた。


 それらを時々、私は通学路で会って話していた。確かに今思うと変に距離が近かったし、ボディータッチが多かった。けれど小学生の頃の私は、世の中にはそういった感情を持った人が居るという事を、理解できていなかった。


 その人が見せる優しさは、おぞましい下心から産まれる物ではなく、純粋な気持ちで満たされていると私は信じて疑わなかった。


 中学生になると、ポストには隠し撮りされた黄ばんだ物がこびり付いている写真、それから少しして今度は手紙などが送られるようになった。そして手紙もまた、何かがこびり付いていた。その頃になると、流石にこれはストーカーだと理解できるようになり、恐怖に震えた。時々感じる視線、そして汚れた写真と手紙。


 気持ち悪くて仕方なかった。


 そんな中、親身になって話を聞いていたのが、私の事をよく聞き出していた年上の男性……加害者本人。当時その人は大学生だった。


 当時の私が安心できる場所はもう、私の部屋にある暗くて狭いクローゼットくらいしかなかった。本当に申し訳ないけれど、クローゼットの中身を全部出して他の場所に移してもらった。何も無い状態じゃないと安心できなかった。こうすれば、相手は隠してカメラを仕掛けることができないし、暗い場所ではほとんど映らないから。


 その内、僅かな光にすら恐怖するようになって、クローゼットの僅かな隙間さえ塞ぐようになった。クローゼットをノックされるのも、クローゼット越しに話しかけられるのも、ストーカーなんじゃないかと思って過呼吸になりかけた。その内、スマホを渡されて、家族とはチャットでのやり取りでしか話せなくなった。


 本当に、お父さんとお母さんには迷惑をかけたし、心配させたと思う。


 だから私は必死に勉強して、家とは遠い学校で高校生になって一人暮らしして逃げようと思った。


 本当に苦痛だった。


 本当におぞましかった。


 けれど暗い場所で勉強なんてできないから、その時だけ灯りをつけて、もしかしたら見られているんじゃないかと震えながら勉強した。


 その努力が実り私は高校生になって、とても平和に学生生活を過ごしていた。


 ……最初の一年だけは。


 私はその頃、飲食店でバイトをしていた。ある日のバイト中、見覚えのある男性がお店に入ってきた。


 そう、私のストーカーにして、小学生の時から付き合いがあった男性だ。



「あれ、○○ちゃん? ○○ちゃんだ! 久しぶりだね、元気だった? 俺だよ、まさかこんな所で会えるなんて! 夢にも思わなかったよ」


「○○さん? お久しぶりです、お元気でしたか? あ、お席にご案内いたしますね」



 それからその人は、しばらく毎日お店に立ち寄って、その内私のバイトがある日にだけ通うようになった。


 思いもよらない再会から数カ月後、私はまたストーカー被害に遭うようになった。前と同じ被害を受けるようになったから、犯人は同一人物だと確信した。


 一体どうして、何で私がここに居る事がバレたの。


 痕跡だって何も残さなかったし、引越し先だって親が細心の注意を払って全部準備して用意してくれた。


 なのに一体どうして。



 私はまた怯えながら生活するようになった。けれど前より安心感はあった。周りには大人が多かったし、バイト先に話せば先輩達や周りは心配してくれたから。


 怪しい人が居たら、追い払うと店長も言ってくれたし。そして何より、その当時は信じていた年上の知り合いも居たから。


 けれどある日、その人が差し入れだと言ってバイト中に私に半透明な袋に入ったコンビニの食べ物を渡して来た。流石に知り合いとはいえ、お客さんとして来ていた人に物を貰うのはよくないこと。


 とりあえずその場では受け取って、店長に相談した。


 すると店長は少し不審に思ったようで、袋を開けて見た。



「……今すぐに警察を呼ぼう」


「え?」



「○○、袋の中を見たか?」


「いえ、まだですけど……」



「食べ物にな、男の……精液がかかってる」



 そう聞いて私は思わず吐き気を感じて、そのまま胃の中の物を戻してしまった。


 信じていたし、心の支えの一部になっていた人が、本当はストーカーの正体だった。そう確信した瞬間、私の心は消えてなくなった。私は吐いた物と一緒に、心まで抜け落ちてしまったかのようだった。



「○○!? おい、大丈夫か!?」


「ゲホッ、ケホ……大丈夫、です」



「何処が大丈夫なんだ!? とりあえず早退……いや、駄目だ。今の状態で帰ったらマズ過ぎる、何されるか分かったもんじゃない。とりあえず警察呼ぶからそれまで休憩室で待ってろ」


「……はい」



 そして私は休憩室に行ったフリをして、裏口から静かに出ると家に帰ってすぐ、包丁を外に持ち出した。


 ……凄く、痛かった。けれど、これで私はあの男から開放されるんだと思うと、凄く救われたような気分になれた。


 借りた家の中で自殺すると、請求が身内の方にいってしまうと聞いたし、事故物件になってしまって大家さんに迷惑がかかる。だから誰にも迷惑をかけないように、周りに家が無い森のある場所で私の人生は幕を閉じた。



 ……そして気が付けば、私は()になっていた。


 驚きはあったし、異性の体に転生してしまったから強い戸惑いを感じていた。けれど、ようやくあの男から開放されたんだなと感じると、それらはとても些細な事に思えて。


 事故で今世のお父さんは僕が産まれる前日に逝ってしまったらしく、僕に不自由をさせたくないからと起業をして女手一つで今のお母さんに育てられる内に、段々と僕に心の余裕ができていった。


 そして僕は、酷く前世の両親に謝った。


 最期まで迷惑かけて、ごめんなさい。


 何度も心の中で謝って、回数は数え切れないほどに謝った。でも一つ言い訳をすると僕はただ、死にたかったんじゃなくて……解放されたかったんだよ。


 でも前世の両親は、とても僕を大事にしてくれていたから、ショックを受けていると思うと……今更ながらにやっぱり死ぬべきじゃなかったとも思う。


 けれど、それは今があるからこその思考で、結局その選択をしても僕はずっと心が死んでいたままだったと思う。


 結局、捕まった所で数十年したら刑務所から出てくるんだから。あの男が死なない限り、僕は一生あの男が釈放される日に震えながら、また生きていかないといけなかっただろうから。




 そして心の中で懺悔する毎日が続いた。ある時、お母さんの会社が成功し、数年でかなりの成長を遂げて軌道に乗った。僕が大人しい子供で手がかからない事もあり、長らく狭いワンルームで過ごしていたけれど、これからの事を考えて会社に近い場所の方が通勤時間の短縮になるし、僕が熱を出した時の事、そして家の収納場所がもう無かった事も考えて一軒家に引っ越す事をお母さんは決めた。


 とうとう自分の部屋が持てる。自分の安心できる自分だけの場所ができる。


 その時を心待ちにして過ごし、やってきた引っ越し当日。



「初めまして紫紀ちゃん! 私は明、よろしくね!」



 そう笑顔でお隣に住む、息を飲むほど可愛らしい女の子に言われて、思った。


 

ちなみに、TS男の子は別の世界線の日本(歴史や場所の名前は全く同じなものの、時期が少しズレている)から転生しております。なので前世の両親とは二度と会えない代わりに、ストーカー男と会う事もありません。

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