オルメニアに向けて㉒
夜が明けて朝になる。睡眠を必要としない健人の身体は一日程度なら余裕で耐えることができる。ヴニトラ達龍人も特に睡眠を必要としない為、共に夜を明かすことになった。重ねた雑談は健人とヴニトラの仲を深めるのには十分過ぎる程の時間があり、皆が起きた時にはまだ談笑は続いていた。
起きた事を確認すると、そのまま朝食の準備を始める。目覚めのお茶を入れ、その湯気がまた眠気を誘う。分かっているが寝起きのみんなにはそれが心地良いのか起きてきた面々は次々と健人から渡させるカップを手に熱を冷まし乍温かな其れを胃の中へと流し込む。
「ケントとヴニトラ様は、ずっと起きてたの?」
「うん、気が付けば夜が明けてたから」
「うむうむ!色々な話が出来て私は大満足だぞ?とても有意義な時間になった!」
健人の元居た世界の話を気に入り殆どが其の話で時間を占めた。やはり、この世界は全く別の発展を遂げているみたいでヴニトラにとっては全く別の世界の話は貴重以外の何者でもなかった。
「ケントォ〜.....おはようぉ〜!」
「んっ...むぅ〜。...おはようケント」
見慣れた顔の二人が馬車から降りてくる。寝起きにしても可愛いというのは反則だ。健人は大きく欠伸をした二人に対して挨拶を返すとそのまま朝食の準備を滞りなく進めた。
「さぁ、皆様方!私めのとっておきですよ!」
陽が段々と高くなる光景を気にすることなく健人達は朝食を食べた。森林浴とでも言うのか気持ちの良い風と早朝の冷たい空気が身を包み不安よりも安心を与える。
・
・
・
食事を終え、出発した一行は昨日と然程代わりのない道を進む。代わり映えがない中でも健人以外はこの景色さえ心地よく落ち着くらしい。本当に意味がわからない。そう思いながらも口や態度には出さない。健人はの話だ。ヴニトラに関してはまたしても馬車の中で眠りにつき深々と夢の中。
「ケント様、オルメニアに帰られましたらどうなさるのですか?」
ジュビアナからの質問に対して真摯に答える
「また、好きに旅をしながら厄災を対処したいと思います。ヴニトラさえ良ければこのまま一緒に着いてきてもらいだですが...こればっかりは俺が決めれる事では無いので...。まぁ、今はおふたりを無事に皇国に送り届けることが先決ですので、後のことはその時になれば考えたいと思います。」
私達も健人と同じです!と元気よく答えるアミットと力強く頷くミティーネ。健人からすれば二人が一緒に来てくれる前提で話をしていたが、やはり嬉しく思う。少し、残念そうにしながらも事の重大さに気が付いているジュビアナとルシエラは そうですか と笑顔で返答するが作り笑いが目に見えて分かる。
しかし、それに関してはしょうがないとも思うし元々厄災の有無に関係なく世界を旅する予定の健人にとってはオルメニア皇国は既に滞在を済ませているので無闇矢鱈に長居する意味が全くない。
「この時間が、ずっと続けばなんて、我儘なのでしょうが...凄く楽しかったです。本当に...。一度は死を覚悟しましたが、奇跡が起き果ては厄災を討ち滅ぼすまでに...私達の現在はケント様によって作り出されたと言っても過言ではありません。感謝してもしきれません。」
「俺は俺のやれる事をやったまでですから...でも、俺がこの世界に呼ばれた意味はコレだったのかと偶に思います。魔槍に出会い、アミット、ミティに出会い、そして、ヴェマリナ様やジュビアナ様、ルシエラ様との出会いだってそうです。全てが運命の様に結びつき、今がある。だから、俺の方こそ感謝させてください。本当にありがとうございます。」
健人の言葉に照れている二人と戸惑う二人。腕を組む力が強くなり思いが伝わったのだと分かる。この帝国からの数日、ジュビアナは兎も角ルシエラとの距離は確実に縮まっていた。健人に対するボディタッチは明らかに増えたし健人の隣に居る率も圧倒的に多い。それが単純な好意なのか何なのか、分からないままだったが、其れを確信付けたのはルシエラの一言だった。
「ケント様、本当に、本当にお慕いしております。私は貴方様の事が好きです。今になりヴェマリナ様が凄く羨ましい、貴方と様心だけでなく体まで繋がったのですから...。もし、叶うのであれば皇国に帰るまでの何処かで私も貴方様と...」.
消え入りそうな声色は涙ぐんでいるのが嫌という程に伝わる。まだ、皇国までは一週間以上掛かるがその間の何処かで健人と繋がりたいと、一国の王女がそう言うのだ。
正直に、嬉しく無い訳がないが同時に本当に良いのかという気持ちもふつふつと湧いてくる。当たり前だ、身分の無い世界から来たといってもこの世界では関係ない、寧ろそういう風に接してきた健人からすればヴェマリナでさえ無理矢理に状況を進められなければ絶対に拒んでいた。
しかし、逆に言えば前例を作ってしまったが故に断るという選択肢は殆ど無かった。
何も言わない。健人はただ、無言でその問に対して肯定するように短く頬にキスをする。それが、その質問に対する答えだと言わんばかりに。




