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オルメニアに向けて⑲〜歌の街ラーララ〜

時刻は夕暮れ時、ドーム状に囲われたラーララの街は昼夜が分かりにくく感覚が少しおかしくなる。明るい屋敷から暗い街へと出ればそれは余計である。


健人たちはパーティーを思う存分に満喫したあと、来賓客が帰ってから帰路に着いた。ヴ二トラは先に宿で休んでいるらしく、包んでもらった料理を持ち今夜泊まる宿へと足を進める。


「それより、今日はほんっっとに楽しかった!ヴェマリナ様!ありがとうございました!」


「いえ、わたくしは何もしていませんわ。ですが、楽しんで頂けたのなら良かったですわ!ケント様も楽しんで頂けましたか?」


「はい!めっちゃくちゃ楽しめました!あぁ〜!夢のような時間だった。また、歌姫様の歌聞きに来たいですね〜」


その時は是非!と張り切った少女の様に明るい表情で答えてくれる。健人も心が軽くなった気持ちで厄災の事なんてみんな忘れている。それに関しても良かったと感じつつ宿へと向かう途中...


「おいっ!!貴様!!」


音楽が鳴り響く街の中で一際大きな声で誰かが叫ぶ。だが、全くもって無視して歩みを止めない。


「おいっ!!!貴様!!貴様だ!この私を無視するなど本当に命知らずな奴らしいな!!!」


肩を掴まれしょうがなく振り返る。


「だれ?お前?なにか用?」


覚えているがハッキリと面倒臭い気持ちを表に包み隠さず出す。そこにはルイスイスと名乗った傲慢貴族が顔を真っ赤にして怒りを露わにしていた。


「キッ!キッサマ〜!!!どこまでも私を苔にしやがって!!もう、許さん!!おい!!此奴を出来るだけ痛ぶって殺してやれ!!」


「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」


大きな溜息を吐きながら銀色の白髪を靡かせて歩いてくる一人の女性。背中に大きな大剣を背負いながらその目には殺気と呆れが入り交じる。


「シャオン!!!分かっているな!!もし、手を抜けば」

「分かってるって!うるさいなホントに....アンタには悪いけど雇い主の命令なんでね....」


そう言いながら健人の隣や後ろに居る女性陣を見渡す。


「アンタ、良い女達侍らしてんだね。それで、このクソ貴族に目をつけられたってところか?」


「いや、この国の王女に無礼を働いたから、それを止めただけだよ。ホントにいい迷惑だわ」


「ん?この国の王女?」


「初めまして、ヴェマリナ・センブル・ファシュトリッシェにございますわ。」


「おいおい、ルイスイス様よぉ〜。これほんとに大丈夫か?私は死刑なんてごめんだぞ?」


「ふん!そんな平民風情を葬ったところで何にもならん!それに、...貴様は私の命令に逆らう事は出来ないんだぞ?」


「チッ!あいあい分かったよやりゃーいいんだろやりゃー」


その瞬間大きな剣を引き抜き一気に地面を蹴り出した。人の往来があるにも関わらずその大きな剣を思い切り振り抜いた。


ギャァァァン!!!!


高い金属音が周囲に響き渡る。アミットとミティーネも構えるが健人は目配せして王族三人の護衛を任せる。


キィィィン!!!


「ほう!シャオンの一撃を止めるとは中々やるな!だが、それでも此奴の力は.....」


「いや、あれはヤバいな....ルイスイス様よぉ〜喧嘩売る相手間違えたみたいだぞ」


「な、何を言って.....。!!!!」


目の前に健人の姿は既にない。気が付けばルイスイスの後ろに周り込み槍の先端を首元に突き立てていた。


「ほんっっっとに......心底救えない奴だな。このまま殺すのも良いけど!!!!っと!!危ない危ない!」


ルイスイスに構う事なく健人に向かい剣を振り抜くシャオン。凄まじい圧は地面に剣が触れると突き刺さり地面を砕く。


「っお、、、おい!シャオン!私に当たったらどうす...」

「うっさいね!どうせアンタに攻撃なんて出来ないだろ!」


「シャオンさんね...。どうしてそんな奴の護衛?なんかするんだ?シャオンさん位の実力なら冒険者でもそこそこやっていけるだろうし、他にも色々やりようあるんじゃない?」


冷静な健人はシャオンに対して質問する。それが地雷だったのかキッ!っと健人を睨みつけ明らかな怒りを露わにする。


「アンタには....アンタには関係ない!!黙って切られろ!!」


このままでは埒が明かず時間だけを無駄にすると考えた健人は地面から建物を蹴りながら移動しはじめた。森の中でゴブリンたち相手にした様な動きで街の騒音も相まって全く何処にいるか分からなくなる。


「!!!!....此奴、さっきから狂しいと思ったら魔力を感じない。何がどうなって...グッ!!っがはっ!」


不意を着くように横腹に蹴りを入れ、そのまま首元に向かい刃先が無い部分で思い切り殴打する。その瞬間、パリン!と何かが割れる音がし、シャオンと名乗った女性はそのまま地面に伏して倒れた。


バタッン!


「なっ!!このっ...やくた....」


シャオンが倒れたのと同時に槍の刃先をルイスイスの顔面付近で留めた。言葉が出せず冷や汗をかいているが恐怖はしていない様子、流石は貴族といったところか。


「くっ、シャ、シャオン!....なっ!く、首輪が....」


「お前さぁ?なんなの?マジで?」


「ケント様、もう大丈夫ですわ。どうやら、奴隷契約を交わしていたみたいですが...先程の攻撃で奴隷の首輪が壊れてしまった見たいですわね。それに.....我が帝国では奴隷の私的傷害行為は認めておりません。全て、わたくしが見ていましたわ。」


「え?こいつ....どんだけ馬鹿なんですか?」


騒ぎを聞きつけた衛兵が集まってくるとそのままルイスイスを連行されるヴェマリナ。その際に、シャオンも連れていかれそうになったが奴隷だった事が証明されたので此方で引き取らせてもらう事になった。


「ケント様、帝国の者が此処に来るまで...わたくしはここで留まろうと思います。ですので...」


宿に戻ってから少し寂しそうな顔で話をし始めたヴェマリナ。ルイスイスはあれでも貴族で伯爵の嫡男なので一応権力はあるらしく帝都からの迎えが来るまではしっかり見張っておかないと釈放される可能性があるかららしい。


「え?でも護衛は...」


「それなら私がするよ。助けて貰ったお礼もしたいし....改めてヴェマリナ様、本当にありがとうございます。」


目覚めてヴ二トラと一緒に食事をとっていたシャオンが席を立ち此方に向き直る。こうして、ヴェマリナとは歌の街ラーララで別れる事になった健人たち一行はこの日の夜を惜しむように過ごした。


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