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オルメニアに向けて⑱〜歌姫ラーララ〜

「お初にお目にかかります、歌姫ラーララの名を受継いだフローライト・ユーティリアでございます。以後お見知り置きを」


一瞬、時が止まった様にその場の全員が動きを止めた。先程歌っていた時とは衣装を変えているが纏っているオーラまでは脱げないらしい。

少しの沈黙の後、ヴェマリナが声をかけた。


「貴方が....こちらこそお会いできて光栄ですわ...えーっとラーララ様とお呼びした方がよろしいでしょうか?」


「どちらでも結構ですよ、私からすればどちらも私の名前ですから」


「では、フローライト様と。改めまして、ファシュトリッシェ帝国が第一王女 ヴェマリナ・センブル・ファシュトリッシェにございます。本日は素晴らしい歌、本当にありがとうございました。帝国を代表して御礼を」


「いえ、私は私の好きな事をしているだけです...それが皆様の生きる活力になればと」


「素晴らしいですわ!こちらのオルメニア皇国の王妃様と王女様も大変ご感動なさっていましてよ!」


「まぁ!まさか、二カ国の王族様方に聴いて頂けるなんて!これからの人生、誇りを持って生きていけそうです!」


是非お話が聞きたいというヴェマリナに了承したフローライトは三人が座る席に着く。部屋の中に給仕は居なかったが気を利かせて料理や飲み物を運んでくる。


「ケント様!アミット様とミティーネ様も!此方で一緒にお食事に致しましょう!」


ヴェマリナからの誘いを受けアミットとミティーネは遠慮しがちに席の方へと歩いていく。一方の健人は自分の食べたい料理を持ちつつアミットとミティーネの飲み物を運んでいく。


「あ、あの、よ、よろしいんでしょうか?」


「勿論ですわよ!わたくし達の仲じゃありませんか!」


「え、えっと...此方の方々も王族の?....」


急に人が増え少し戸惑いを見せるフローライト。


「いえ....えーーっと、、、まぁ護衛の冒険者ですわ!」


周囲を見渡し給仕の者を目線で下がらせると健人が来るのを待ち部屋には健人達だけになる。


「実はここに居るケント様、アミット様、ミティーネ様が此度の厄災から帝国を守って下さったのです。」


小声で言い直しフローライトに事の経緯を説明する。しかし、何を言っているのか理解が出来ない様子で頭には疑問符を浮かべている。


・・・


「え!!!ほ、ホントに!ホントにあの厄災を?!!」


漸く理解したフローライトは先程までの落ち着いた表情から一転、驚きと困惑でその美しい顔を染め上げていた。本来なら厄災とは不可避の滅亡であり、それは歴史が証明している。数々残る文献や文書は国や街から逃げだし新たな地で再出発した者たちが意地と根性で残し続けたものだ。だから今の今まで厄災の事や龍人・エルフについてもこの世界の人間は認識している。


「で、でも...厄災といえば、、私が知る限りでも国が幾つも幾つも滅びてますよね?人類では対処できないというのが常識だとばかり....当の私も覚悟を決めていましたし...」


「勿論わたくしもですわ...。しかし!ケント様がファルジェオンを訪れた時には既に厄災を対処し、その報告をしに帝都まで態々来てくださったのです!」


嬉しさと喜びを全面に出し、丸で子供が自慢する様な姿はとても王女とは思えない可愛い女の子だった。フローライトはそれにも驚いたが一番驚いたのはやはり、健人の存在であった。


「そ、それで...ケント様?は、どのようしにして....いえ、何者なんですか?」


聞かずにはいられない、そんな覚悟が声から伝わってくる。健人は少し迷ったがヴェマリナが厄災の話をしたという事は別に大丈夫なんだろう と思いこの世界に来た時から今までの話をおおまかに説明した。


「きょ、きょうは凄いです....。一度に色々聞きすぎて理解が追いつきません。」


頭から煙を出す勢いで頭を抱えるフローライト。それをみ見て分かる分かる と頷きながら微笑みかける健人以外。健人に関してもこの世界での自分の異常さには当然だが気付いている。


「ん、んっんん!」


喉を鳴らし改めて此方に向き直る。それは、先程までとは違い歌っていた時の様な真剣な眼差しでその場にいた全員が又しても息を飲んでしまう。


「ケント様、私からも是非御礼を。貴方様のお陰で私はまだ歌っていられます。まだ、色んな人達に歌を届けることが出来ます。それに、この国には私の家族もいます、だから本当に本当に!ありがとうございます!」


深々と下げられた頭は感謝を最大限に表現していた。健人ははっ!となり頭を上げるように言うが中々上げて貰えない。


「フローライトさん、俺も今日の歌聞かて良かったです。俺こっちの世界に来て音楽の事忘れかけてて、この街が俺に音楽を思い出させてくれたんです!貴方の歌を聴いて本当に最高だと思った!だから、俺からもありがとうございます!」


健人は感謝をし返した。それは本当の気持ちでもあったし本人と話す機会があれば絶対に御礼を言おうと決めていた。逆に感謝される形にはなったがそれらを引っ括めて健人も最大限に感謝を伝える。


パン!


「さぁ!皆様!この楽しい時間を最後まで存分に満喫致しましょう!」


ヴェマリナの一言が空気を変え明るく華やかにする。そうしてパーティーが終わるその時まで七人は談笑に花を咲かせ最後まで楽しみ尽くしたのだった。


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