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オルメニアに向けて⑰〜歌姫ラーララ〜

その光景は正に圧巻であった。会場の灯りが暗くなっていき一人の歌姫だけを照らす。時刻はまだ昼下りの筈が夜の帳が降ろされ紛うことなき星々が輝かんばかりに観客達を照らす。


「♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪」


音楽そのものが声として響いてくる。妖艶で華やかで、何とも形容し難い歌声は観客を虜にする。それは、健人たち一行も例外ではない。


「(す、凄すぎる....。生で聴いているってのも勿論あるんだろうけど...目が耳があの人から離せない。)」



そうして、時間はあっという間に過ぎていった。何曲歌ったのか、それとも一曲だけだったのか。気が付けば歌姫のライブは終了し闇夜に照らされた会場は光に照らされていた。


「〜〜〜〜〜〜!!!!凄すぎんだろ!!!」


一瞬の沈黙が訪れ、ダムが決壊したかのように拍手と歓声が空間を覆い尽くす。歌姫は少しお辞儀すると袖の方にはけていき姿が見えなくなった後もその賛辞は長らく続いた。


「歌姫ラーララ......、私!ファンになっちゃったよ!」


「こ、言葉にもできない...す、すごすぎるぅ〜」


アミットは歓喜、ミティーネに至っては顔をへにゃらせ変になっていた。ヴェマリナ・ジュビアナ・ルシエラは三人で歌姫の素晴らしさについて談議に花を咲かす。


「.........ん?あれ?なんだ?良い匂い!」


匂いにつられ辺りを見渡すと歌姫のライブ開始時には用意されていなかった料理がいつの間にか運び込まれていた。煙が立っていることからも出来立てなのが伺える。いち早く気が付いた健人はお腹が空かない筈なのにと考えながらもその美味しそうな料理に飛びついた。


「うわ〜!めっちゃ美味しい!最高の料理に最高の音楽。今日は最高の日じゃないか〜!」


神木の森林での一件や先程の傲慢貴族の事もあり少し健人の心は荒だっていた。しかし、歌を聴いてからというものそんな気持ちは何処へやら、汚れや疲労感が一気に身体から抜け落ちたそんな感覚だ。

空腹を感じる事のない健人がお腹が空いたと錯覚してしまうほど満たされた時間が終わり意識は自然と料理に向けられる。食事を摂り始めた健人に気が付いたアミットは余韻を感じながらもケントの隣で一緒に料理を食べ始めた。


「ケント!お料理もすっごく美味しいね!!歌も素敵だったし....貴族様には感謝だね!!私達にも普通に接してくれたし。」


「まぁ、王族との繋がりがあるのも大きいと思うけど、それでもさっきの奴の態度と比べると天と地くらい差があるよな。...普通あんな事できないと思うんだけどな...」


頭の中で傲慢貴族のルイスイスを思い浮かべながら、最早哀れみの気持ちで食事を食べる。歌姫のライブも聞けずこの食事にもありつけないまま帝国王女であるヴェマリナに対する無礼、命が惜しく無いのかとさえ思ってしまう。


「(ほんっっとに、色々残念なやつ)」


考えても仕方の無い事だと思い、今は食事に集中する。未だに惚けているミティーネを誘い、その次いでに談議に花を咲かすヴェマリナ達に食事を配膳していく。


「あ、ケント様!」


「非常に素晴らしいものでしたね、どうぞ適当に置いていきますので」


御礼を言われその場所を立ち去る。折角、楽しそうに談笑しているのに男である健人が割って入ってもお邪魔なだけだ。


ミティーネの腕を引きアミットの所まで連れていく。やっと歩いている最中に正気に戻ったミティーネはお腹を空かせていたらしく料理をみた瞬間、健人と同様飛びつくような食事を始めた。三人で料理の感想なんかも言い合いパーティーの楽しさを満喫する。


コンコンコン


「お食事中失礼致します。皆様、本日は楽しんでいただけてるでしょうか?」


屋敷の主であり本日の主催が再び挨拶へと訪れた。物腰柔らかい印象で、丁度ヴェマリナ達王妃王女が同じ席に着いていたので其方へと向かい話しかける。


「ええ!、本当に素晴らしかったですわ。歌姫ラーララ、正に魔声の持ち主ね!ケント様達もお食事を気に入った見たいですし、本日はお招き頂き本当にありがとうございますわ!」


「本当に歌も料理も、素晴らしすぎます!これって包んで貰ったり出来ますか?」


「ええ!大丈夫ですよ!是非お持ちください。」


「ありがとうございます!お願いします!」

(こんな美味しい料理ならヴ二トラに持って帰ってあげよ!待たせちゃってるのも悪いしな、)


ヴ二トラ達 龍人は滅多な事がない限り人前には現れない。厄災に対しても傍観を貫き世界にも不干渉であるが所以、厄災以上に恐れられる一方で神格化され信仰の対象にもなっている。だからこそ人の姿に化けているとはいえ貴族達が大勢集まるパーティー会場には来る訳には行かなかった。


「それ、ヴ二トラさんに?」(小声)


「うん、一人で待たしてるのも悪いと思ってさ」


「きっと喜ぶね!ここのお料理全部美味しいもん!」


そんな他愛もない会話をしている時だった。再びノックが聞こえ扉が開かれた。


ガチャ


「失礼致します。我らがファシュトリッシェ帝国の王女様が此方に居るとお聞きしお伺いに参りました。」


美しく華やかでいて気品さも兼ね備えた王族や貴族令嬢の様な立ち振る舞いは正に本日の主役その人だった。


「お初にお目にかかります、歌姫ラーララの名を受継いだフローライト・ユーティリアでございます。以後お見知り置きを」


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