オルメニアに向けて⑨
次の日の朝、夜更かしをしていた女性陣は起き上がる事が出来ず皆ベッドの上で深い眠りの中にいた。健人は皆より早く就寝したので起床する時間も少し早い。だが、健人以外にも目を覚ましている者がいた、それは、
「貴様、目覚めるのがはやいな。まだ、みな夢の旅を満喫しているが...」
「おはようヴニトラ。てか、それはこっちの台詞な?俺は寝るのが早かったからアレだけど...昨日、結構起きてたんじゃないのか?」
身体を伸ばし眠気まなこを擦り上げヴニトラの方へと歩み寄る。
「私たち龍人は睡眠を必要としないからな、あんなにも楽しい夜は久しぶりだった、貴様も混ざれば良かったものを...」
「ガールズトークに男は要らないんだよ笑」
「ふぅむ、そんなものか...」
ヴニトラに茶を飲むか聞き用意していく、部屋の中は広いがある程度の位置は把握しているのでそそくさとカップを二つ取り出し茶を沸かす。
コポコポコポ
部屋には少しの沈黙と茶を入れる音だけが鳴り響く。黙って健人の所作をジッと見つめるヴニトラは絵画にでもありそうな程に....
「貴様、茶を入れた事がないだろう」
「そりゃあね、違う世界から来てるからな。初めて使った...」
話せば残念なヴニトラに溜息をつきながらカップを差し出し向かい側の席に着く。日差しが照りつけるテラスにて朝日を浴びながらお茶を嗜む。こればっかりは王族の力ありきで考えても異世界を感じざるおえない。
「はぁ〜...いい朝だなぁ。そういえばヴニトラはこれからどうするんだ?」
「ん?そうだな.....。人の世には基本的には干渉しないが今回は五大龍人全員で決めた調査だからなぁ〜。......よし!貴様について行ってやるぞケント!」
良いことを思いついた!と言わんばかりに笑顔で言い放つヴニトラ。そのままぐびーっとお茶を一気飲みすると割れるんじゃないかという勢いで机に置いた。
「おいおい割れるって...それに着いてくるって大丈夫なの?」
「あぁ!問題はない!それに、貴様に着いていけば何かと退屈しなさそうだしな!私は厄災の発生を感知する事とできるし、貴様らにも利があるはすだ!聞いた所によると厄災を討ち払い回っているのだろう?」
「たしかに何処に何時出てくるか分からない厄災の発生を感知できるってのは大きいけど....いやまぁ、ヴニトラが良いなら良いか」
「あぁ!貴様が心配する事は何も無い!」
という流れから行動を共にする事になったヴニトラ。馬車の中も余裕がない訳ではなく護衛の数も多いに越したことは無い。
「それなら....暫し宜しく!ヴニトラ!」
「あぁ!ケント、よろしくな!楽しくなりそうだなぁ〜!」
満面の笑みで笑い返すヴニトラは許しを得た子供の様に目に見えて楽しそうなのが伝わってくる。そんな表情を見た健人は黙ってカップを口元へ傾けると、その一時を味わうように茶を喉に流し込むのだった。
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「はぁ〜、地下都市ガイアナ.....もう少し楽しみたかったなぁ〜....」
アミットがため息混じりに口にする。言わんとする事は痛い程分かる健人とミティーネだが、それを決して口にはしない。地下都市ガイアナの地上に出るとそのまま用意された馬車まで歩いていく。
「ご用意は既に....其方のご婦人も御一緒されるのですか?」
御者がヴニトラを指して言う。それは、当然の疑問ではあるがその話し合いは既に健人によって説明、了承済みである。夜更かしして仲良くなったのもあり反対するものは居らずジュビアナが御者に大丈夫だと説明してくれる。
「馬車の旅か....まぁ飛んでいけば速いんだろうが...こういうのも悪くない!いや、こういうのが良い!!」
馬車など龍人の移動手段としてはあまりにも意味が無さすぎる。しかし、長らく同じ様な生活をしてきたヴニトラにとっては旅=で馬車は繋がってしまう。それは、ヴニトラにとっては心が踊る程楽しい事なのだ。
「ヴニトラ様、どうぞご寛ぎ下さい!馬車が広くて助かりました!」
「さすがは人間の王族だな!中々に気に入ったぞ!ほらケント!早くお前もこい!」
「あ、ちょい!....もぉ〜」
強く引かれる手に抗う事はせず微笑気味に馬車に入る健人。オルメニアに到着するまでの道中、苦労が増した事を不安に思いつつ楽しみを募らせる健人。
「それでは、」
パシン!
音ともに馬車が動き出す。地下都市ガイアナを後にして馬車の中で何度目にもなる揺れを味わう。未だに帝国国内からは出れておらず長い道のりを只管に皇国に向け歩みを進みめる。だが、不思議と心に不安や恐怖・面倒臭さは無かった。




