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オルメニアに向けて⑥

大きく開けた口の中は全てが牙、舌は三又に分かれ八つ目がギョロリと睨みを利かせ六つの翼が大きく飛翔する。向かっていく健人に臆すること無く突っ込んでくるそのモンスターは化け物みたいだかドラゴンである。


「チッ!コイツ!!」


槍を思い切り横に振り殴打する様に顔面に叩きつける。鈍い音が響くが思っていたより硬い表皮に健人自身も驚いていた。今までの戦闘からして一撃で終わっていてもおかしくない筈が吹っ飛ぶだけで致命傷にも及ばない。


ゴギヤァァァァァァァ!!!!


翼をはためかせ打撃の威力を緩和させる。そしてその勢いのまま此方へと恨めしく向かってくる。激しい怒気を纏い口から黒い煙を出す。


「コイツッ!!本当にモンスターかよ!!ゲイボルグ!!!」


向かってくるドラゴンに対して魔槍の全力で迎撃する。空中に奔る紫雷はゲイボルグに纏わりつき段々と収束していく。そして、ドラゴンの口から黒炎の息吹が放たれる。


ギャァァァァァァァァァァ!!!!!!!


「ぶっ飛べ!!!!!.......なっ!!!」


息吹を容易く切り裂けると考えていた健人は拮抗するその力に驚きを隠せずにいた。だがそれは、ドラゴンも同様であった。


「ッッッッ!!.....フッ、疲れてきたんじゃないか?このまま押し切るっ!!!」


拮抗していた力は段々と健人の方に優位な形になっていく。ドラゴンの黒炎は持続力に於いても申し分ないが魔力を使わない健人とゲイボルグに持久戦は全く意味をなさなかった。そして、槍は黒炎を真っ二つに切り裂く。


落ちろ!!!


声にならない声と共に鳴り響いた轟音は、空を紫色に染め上げた。落ちた雷に打たれプスプスと黒い煙を上げながら地面に向かって沈んでいく。


「あいつ....モンスターじゃないのか?」


いつまで経っても霧散せず実体を保ったままでいる。気になり馬車に向かうよりも前にドラゴンの元へと向かう健人。結構な高さから落ちた筈がここからでも生きている分かる。


「うわぁ〜やばぁ〜黒焦げやん....。本当にまだ生きてんのかな...」


焦げ臭さが周囲に漂い近付けば煙たくて視界が悪い。槍で小突いて見るが動く様子は無い。しかし、鼓動を感じるので脈はある。


「ん?んん??」


周囲の煙が晴れて来たかと思えば目の前の巨体がみるみる内に縮んでいく。


ドラゴンだったものは今何故か人の形に収まっている。全裸で全身傷だらけの角の生えた女性は苦しそうに眠っている。健人は居た堪れない気持ちになりその女性を拾い上げると一秒でも速くとその場をあとにするのだった。



健人が飛び出した後、馬車を任されたアミットとミティーネは一息だけ深呼吸をし直ぐに冷静に戻る。そのまま馬車を今夜宿泊する街まで走らせ、一刻も先に王女達の安全を確保する。道中も何があるか分からないので当然警戒は怠らない。


「ねぇミティ...あれモンスターだと思う?」


「あの空を飛ぶ影か?いや、正直よく分からないな。だが、恐ろしいとは遠目でも感じた...」


「確かに....。ここ最近ですっごい強い敵といっぱい戦って私達も強くなって...今だからこそ言える今までとは違う異質な感じがした...」


二人の直感は冒険者としての経験からだった。健人は異世界人な為この世界の知識や常識には乏しい所がある。しかし二人は違う。更には健人と出会ってからの怒涛の連続がその経験を加速させていた。


「まぁ、ケントだから心配は要らないと思うんだけど...」


馬車の扉から後方を見つめるアミット。直後、天が一瞬だけ紫に染まり夕暮れの静けさを忘れされる。光の後を追うように鳴り響いた轟音はゲイボルグによるものだと察する事ができた。


「い、いまの、お、おとは?」


馬車内に居たジュビアナとルシエラは突然の轟音に驚いていた。何の予兆もなく近くで雷が落ちたのだ、車内にいれば余計外の状況は掴めず分からない。


「恐らくケントだと思います...多分終わったのかと...」


「はい!ミティの言う通り多分終わったと思います!」


二人が多分という表現を使ったのは完全に気配が絶たれた訳ではなかったからだ。しかし戦闘の気配はなく気が付けば陽は沈み暗くなり始めていた。


「皆様!!街が見えて参りました!」


その声で皆一同に安心する。街を照らす灯りは少ないが確かな人の気配と大きな外観。都市とまではいかないが中々の面積を誇っている。


「取り敢えずは一安心ですわね!」


「え、ええ。流石ヴェマリナ様、あまり動揺なさらないのですね。」


「もちろん!実際に見た訳では無いですし、ケント様もいらっしゃるので!」


心の底から信用しているのが伝わる。それに!と勢いそのまま


「アミット様とミティ様も居るので!」


そのまま暗がりの街へと消えていく馬車。先程までの騒がしさが嘘の様に落ち着いた空気の中健人の帰りを待つ。緊張が解けた一行はこの後の食事をどうするかで盛り上がった。


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