オルメニア皇国①
気持ちがいい風が吹き抜ける平原を鎧を着た兵士と絵に書いた様なお姫様とそこに似つかわしく無い衣服を纏った人間が歩いていく。森を迂回し来た道を戻る。
馬車が無くなった現状歩くしかなくお姫様を歩かせる訳には行かないと最初は抱ろうとしていた兵士達だったが俺と一緒に歩きながら話をしたいと言うお姫様に強く言い出せず結局並んで歩いている。
「ケント様のお洋服は見た事ありません!変わっていますね、何というお名前なんでしょう?」
「これはスーツって言う俺の世界で言う まぁ、制服みたいなもんですかねー」
「なるほど!ですが、動き難そうですね」
「そうなんですよ、戦うにはちょっと...」
「では!皇国に着いたら先ずはケント様のお洋服を揃えましょう!私が選んで差し上げます!」
お姫様とは少しの時間しかまだ話していないが随分と仲良くなった。親しみやすく年齢も近かった事から一気に打ち解けた。
それと、呼び方についても使い人様では何だか気持ちが悪かったので名前で呼んで貰うことにした。俺もお姫様の事はセリルと呼んでいる。
「しかし、どうやってモンスターを倒したのですか?何も武器は持っていない様に思えますが...。それに、魔力も無いように思えるのですが...」
「ま、魔力?ってのはちょっと後で聞くとして、じ、じつは」
俺は目が覚めてから起きた出来事を包み隠さずに説明した。
「.........」
「セ、セリルさん?」
「も、森の中にはいったのですか?」
「はい」
「そこで、遺跡みたいな所へ飛ばされて黒い槍を手に入れた?」
「はい」
「す、すこし待って下さいケント様...。ちょ、ちょっと理解が追いつかないです」
「これがその槍なんです」
右手に突如として出現したその禍々しい槍はやはりどこか目を引き付けられ、釘付けになる。
「うぉぉぉぉ〜!!」
後ろから兵士達のどよめきと歓声が聞こえる。
「うわぁ!ビックリした〜!」
「それはこっちのセリフです!!何で魔槍を持っているのですか!!」
「ま、まそう?」
「それは恐らく魔槍ゲイボルグ。あの禁忌庫の森に眠ると言われる伝説の魔を司る槍。しかし、何度も皇国の調査隊や冒険者があの森へ調査に行っても何一つ見つからずモンスターは凶暴で桁違いに強く被害が出るばかりで、唯の伝承とばかり思っていましたが...」
「魔槍ゲイボルグ。この槍の名前...なるほど。やっと、ちゃんとしっくり来た気がするな。」
一人でボソッと呟く。しかし確かに手の中に有る槍を握りしめなおす。
「この場所に召喚されたのも若しかしたら槍に選ばれたのかもしれませんね。それに、凄い...。槍の存在感も然ることながらもうケント様に馴染んでいますわ。」
「ま、まぁ... あの森で一晩明かしましたから。コイツと...」
「は??」
「ん?うーん.......。」 プイ
俺は態とらしく顔を逸らし吹けない口笛を必死に吹いてみる。
「.........( ºロº)」
驚いたまま変な顔で固まってしまったセリルの意識を再び呼び戻し会話を続ける。
「いや、しかし。よく考えればまだ此方に来て1日しか経っていないのにも関わらずモンスターを倒したとなれば不思議では...私達が聞いたあの思い出すも恐ろしい轟音は間違いなく国滅級....視認した者がケント様以外居ないのが悔やまれます...」
「俺ってかこの槍が凄いんですよ、何せ思った通りに動いてくれるしオマケに威力も半端ないですもん」
「いいえ、ケント様。魔槍は先程も言いました通り国や冒険者が何度も調査をしたにも関わらずその遺跡?ですら発見できず経つこと1000年以上になります。」
「せ、せんねん!??」
「はい、私たち皇族も代々あの地の管理を任されているので度々調査しに行くんです。まぁ、管理と行っても1番森に近いというだけで他国から押し付けられた嫌がらせの様なものですが...。それにモンスターが強すぎるが故にもうここ数百年は森には立ち入らず外から経過観察するというのを定期的行っているだけでして」
「そんな、危険な場所だったんですね...。てか、あのぱ、ぱんどら?の森?って何なんですか?」
「禁忌庫の森...。大昔に居た伝説の魔法使いパンシィルフ・ ドラグリアが余生を過ごしたとされる森だそうです。私たちの間では禁忌庫の森と呼ばれています。」
「禁忌庫の森。パンドラの森か...かっこいい名前だな」
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会話も弾み談笑をしながら進んでいく道のりは時間があっという間に過ぎていく。セリルの疲れを感じ取った従者が休憩を勧め今は少し休憩中である。
「しかし、結構歩いた気がするな〜。」
森が見えなくなり、そこからどれ程歩いただろうか。陽は十分に上がりスーツだと凄く暑いし動き難い。
「そろそろ、迎えが来ても....あ!!!!」
セリルの従者が何かをブツブツと呟きそして一言。大きな声で「あ」と言った。
「姫様!迎えが来ました!森を出る際にカラスに手紙を持たせ先に皇国に向かわせて迎えをお願いしておいたのです!」
「そ、それは助かります...。もう足が取れるかと思いました」
「セリルさん、めっちゃ動き難そうですもんね。しかも、足元もそれじゃ...」
危険な場所に行くと言うのにドレスに少しのヒール。これでここまで歩いて来ただけでも凄い。
「は、はい。足も...痛たたっ」
激しく靴擦れを起こしたのか少し血が馴染む。従者は慌てふためき焦りながら急いで処置をする。
「(お姫様も大変だなホントに....)」
俺は迎えの馬車が辿り着くまでセリルの処置を呆けながら見つめるのであった。




