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オルメニアに向けて③〜ユターニアの街 月見亭ゲッカにて〜

〜月見亭 ゲッカ〜


馬車を降り案内されるがままに店の中に入る。一階部分が大衆用スペースになっており居酒屋の様に空間が開けているが個室は完全に独立していて入口も違う。店に入ると目の前には階段がありそこを上っていく一行。


意外と長い階段を上り終えると締め切られた戸に挟まれた広く、そして長く続く廊下が現れる。その光景に思わず声がでてしまう。


「わぁ〜お」


自然と出たその言葉が


聞こえた者は多分居ない。それ位静かで全く何も聞こえない。


「この部屋一つ一つに防音魔法が掛けられてますの。だから、向こう側の声は聞こえませんし、こちらの声も聞こえませんわ。」



「あ、そうなんですね。それなら普通に....。ここの料亭凄いですね!!」


畏まるのも段々と疲れ砕けた口調になってしまう健人。しかし、気付いたとて辞める事はしない、何故なら萎縮したままではこの先あの三人とやっていけないからだ。


「ケント様...。やっぱり普通に話してくれた方が嬉しいですわ!」


そう言うと健人の腕に絡まる様に引っ付くヴェマリナ。その表情はホントに普通の少女に見える。ただ、恋をする普通の女の子に。

その表情やヴェマリナの好意に気付かない健人では無いが内心少しの疑いを持っている為にどう接するべきか悩んでいた。

が、しかし健人の口調は砕けた。それはヴェマリナに対して一人の女性として向き合う事の決意でもあった。王女という肩書き、身分に囚われていたのは自分であってヴェマリナ本人は今もこうして建前を作り旅に同行してくれている。それなら自分も自分として向き合おうとそう思ったのだ。


「ヴェマリナ様....。あんな顔で笑うんですね」


「え、ええ。私も驚きました。」


隣を歩くジュビアナとルシエラが驚いた顔で健人達を見つめる。アミットとミティーネに関しては後ろの方でずっと周りをキョロキョロして子供みたいにはしゃいでいる。本当は其方に混ざりたい健人なのであった。



更に奥へ進むともう一つ上へと続く階段が現れる。そのまま階段を上り一つだけ戸が開いている部屋の中へと案内されていく。奥から順に座っいてく様促されるが健人、アミット、ミティーネはその部屋から見える景色に脱帽し立ち呆けていた。


「す...すご....。月が...」


歓楽街と聞いてい通りこの街は灯りに照らされた賑やかな街だった。しかし、このゲッカの一室から一望できるその景色は暗く月だけが部屋の中を照らしつける。


「さぁさぁ皆様!早くお座りください!」


仲居さんが三人を急く。そそくさと奥から順に座っていくがアミットとミティーネは健人の両脇を陣取り腕を絡め着席した。


「あら残念。ですが、今はお腹ぺこぺこですわ」


「ここの料理は絶品です!さぁさぁ皆様お食事にしましょう!」


一番テンションの高いジュビアナが仲居さん料理のコースを頼むとルシエラと同時に着席した。


「こちらお飲み物でございます。」


「はやっ!」


先程出ていった筈の仲居さんが全員分の飲み物を持って再び現れる。どうやら先程ジュビアナが料理を伝えた際に飲み物も一緒にお願いしたようだがそれにしても速すぎる。


「ふふっ...凄いでしょ?当然ここが特別ではなく下も同じよ?」


下とは二階ではなく一階を指している。この店のサービスは世界をみても五本の指に数えられる名店で厄災の脅威が去った事の反動で街外からも訪れる客が多く大繁盛している。


「皆様お酒にしたのですがよろしかったでしょうか?」


グラスが全員に行き届いたのを見てジュビアナが問う。アミットとミティーネは冒険者の為二人で嗜む事も多く寧ろお酒が好きだ。しかし、王女達は違う。お酒を飲む時は何かの祝い事やパーティーがあった時に一、二杯軽くいただく程度。普段から飲み慣れておらず男が一人のこの状況で健人は心配で気が気じゃなかった。


そんな事を全く気にする素振りもなく視線を皆に送り問題がない事を確認するとジュビアナは美しくも高々にグラスを掲げた。


「せ〜のっ!」


「え、、え、?せーの?」


「かんぱーい!、」

「「かんぱーい!」」


「んぱーい、」


やりたかった!と云わんばかりに満足気な表情で笑うジュビアナ。この女性もまた一人の女性、女の子なんだと改めて実感する。

因みにアミットとミティーネは乾杯の音頭をしっかり合わさルシエラとヴェマリナはグラスだけかち合わせ声は出さなかった。健人はというと せーのっ!に気を取られ途中から頑張ったが無理矢理合わせる形になってしまった。


「失礼します、お食事をお持ち致しました」


仲居さんが戸を開き次々店員が部屋の中に料理を運んでくる。「少し照らしますね」と仲居さんが灯りで部屋を照らすが月明かりの邪魔にならない色合いでいてしっかりと明るい絶妙な明るさだ。


「では、失礼致します。」


光はそのままに手早く撤収する店員達。仲居さんといっているが立ち振る舞いがそう見えるだけで実際にお店も和テイストという訳では無い。席もテーブルでしっかり椅子に着席きた面々、だが健人、アミット、ミティーネの表情は煌めき立ち女性陣に至っては恍惚として見つめている。


「さぁ!冷めないうちにいただきましょう!」


待ってました!と云わんばかりに明るい表情で燥いでいるが食べ方は非常に綺麗で美しい。健人も頂きますと合掌を行うと見た事無い相談程の美しい料理を口の中に運んでいくのだった。


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