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ファシュトリッシェ帝国③

アレから二日と少し経った頃、漸く帝都ファルジェオンに到着した。向かっている道中で過ぎ去る街や村にも厄災の気配がない事を確認しつつも思いの外時間が掛かってしまった。それだけ帝国の国土が広大と言う事を物語っている。


〜帝都ファルジェオン〜


そこは厄災から逃れて来た人達で溢れかえっていた。城壁の外側に無造作に張られたテントや地面に寝そべる人々。健人達は少し離れたところから状況を伺っていたが事態は一刻を争うと判断した。


「ひ、ひどいね...。でも、もう安心だよね?」


「まぁ、うん。そうだな。」


何処か実のない話をするアミットとミティーネ。周りにいる人々は疲弊仕切った顔で無気力に地面に頭を垂れ絶望している。丸でこの世の終わりみたく。


門兵にオルメニア皇族の刻印が刻まれた懐中時計を見せ事情を説明して早急に中に入れてもらう。帝国の国王に謁見すべく混乱の帝都市内を早足で抜けていく。


普段なら目を輝かせ観光している所だが生憎そんな余裕も時間もない。加えて厄災が発生してからの警戒状態が長らく続いている帝都内の国民は酷く心身共に疲弊してしまっておりとても観光客を歓迎するムードでは無い。


「申し訳ございません。緊急事態ゆえ我々も馬車などは回せず...」


「気にしないでください!走るのは慣れてるので」


帝都の中に入れず溢れてしまっている人達よりも更に外側には帝国騎士数名が見張り兼街の警護として駐在している。他にも避難してきた人達への配給や帝国都市内での寝所の確保などで人手が割かれており明らかな人員不足に陥っていた。


帝国国内にも冒険者は大勢居るが彼らは基本的に放浪している身であり危険を冒してまで厄災に立ち向かう無謀者は先ず存在しない。厄災が出現したと情報を掴むや否や周囲の人間に告げることなく立ち去る冒険者が続出、それも人手不足の要因にもなっていた。



城へとやって来た健人達一行は正門前で少し待たされるとそのまま中へと案内され直接謁見できる様に場を設けて貰っていた。オルメニア城とはまた雰囲気の違う物静かで質素だが趣きのある城内は非常に安らぐ。


「お待たせ致しました。こちらでございます。」


案内されたのは謁見の間とは思えない程普通の扉の前だった。


「こちらの応接室にて皇帝陛下がお待ちです。どうぞお入り下さい。」


扉が開かれ中に通されるとそこに広がっていたのは応接室とは名ばかりの大きな会議室だった。円卓に並べられた席に何人もの男女が座り扉から見て一番真正面に大きな玉座が鎮座する。


「良く来たなオルメニアの使者よ。して、この様な急な訪問...何か訳があるのであろうな?」


威嚇する様に睨む皇帝陛下。その眼光は鋭く一目で只者じゃない事が伺える。更に周りの人間も一人一人オーラや威厳を身にまとった様な雰囲気で下手な王室よりと張り詰めた緊張感が部屋を覆う。


「はっ!お初にお目に掛かります。オルメニア皇より使命を預かり馳せ参じた天海健人と申します。この度は急な来訪誠に申し訳...」


健人が膝を付き挨拶をしている途中で会話を遮る一人の女性。金髪ロールのツインテールが特徴的で碧眼に染まる眼球は宝石の如し。


「前置きはよろしくってよ。で、何用かしら?私たち家族の最後の時間を邪魔してまで...。」


健人は不敬を恐れずに口を挟む。その一言がこの場の空気を全て覆せる事を知っているから。


「今回、我々は約五日でオルメニアからこの帝都までやって来ました。理由と致しましては、厄災に対処する為です。」


その言葉が大きな波紋を呼ぶ。


「馬鹿が!!!我々を謀るつもりか!!」


「そうだ!幾らオルメニア皇の使者とはいえ一体何を考えてる!!この非常事態にあまりにも笑えん冗談だ!!」


各位様々な形で非難・批判する。それだけ今切羽詰まった状況で心の余裕がないのだろう。しかし、奥に鎮座する皇帝陛下だけは黙って視線を向けたまま話を聞いている。健人はそのまま続け


「私達は帝都に来るまでに水上都市ガレリオと帝大都市ルドニクスを通ってきました。そこで...」


ガタンッ!!


椅子が倒れてしまう程の勢いで立ち上がる皇帝陛下。その様子は動揺と困惑、そして淡い期待が目に映っていた。


「少し待ってくれ...。オルメニア皇国の使者よ。すまぬ、もう一度名前をお聞きしてよろしいか?」


「お、お父様!?」


皇帝陛下が名前を聞き直した事に酷く動揺する面々。


「はっ!天海 健人。性がアマミ名がケントでございます。」


「そうか、ケントか。では、改めてケント殿!話を聞かせてくれ」


「はい、我々三人で帝大都市ルドニクスの厄災を排除してきました。その道中で水上都市ガレリオが厄災の襲撃を受けていたのでこれも排除しました。」


その場は異様なざわつきを見せた。嘘か誠か此度の厄災を排除したという謎の青年と少女二人、帝国の人達には疑惑の目しかないのも頷ける。


「ケント殿...。」


皇帝陛下の一言でふたたび沈黙が訪れる。俯き、目を伏せ表情はいまいち読み取ることができない。


「.......。改めて礼を言う。本当にありがとう」


皇帝陛下は少しばかりの涙を流し深々と頭を下げた。


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