ファシュトリッシェ帝国②
健人が黒い球体に近付いて分かった事は何も感じないという事だ。都市の外からも感じていたが厄災独特の泥に塗れた様な気配が一切感じられなかった。それ故に生物的な意識は無く機械的だと考えたがその予想は当たりだったようだ。
「ほっ!ほっ!っと」
建物の壁や屋根の上の侵食されていない部分を見極めて跳んでいく。丸で最初からこの街を把握していたかの様な 俊敏な動きは目を見張る。
「そーーーれ!!!」
ある程度近付いた所で思い切り魔槍を投擲する。一直線に球体に向かい突き刺さるとそのまま貫通。貫かれた部分から槍に引き寄せられる様に球体は跡形もなく消滅する。それと同時に鼓動していた黒い触手は消えていき塵となっいく。
「めっちゃ呆気ないな.....。もっと早く来れてればっ!」
簡単に解決出来たのは魔力も持たない異分子の健人だからである。この厄災の本質上もちろん国滅級である事は明白。一都市を滅ぼしたに飽き足らず広大な帝国全土に広がろうとした波紋は最早誰にも止める事は出来なかった。もし仮に居たとしても魔力を持つものならばこの帝大都市ルドニクスに近付く事さえできない。例え魔剣と魔篭手を手にした二人でも相当苦戦を強いられたであろう。
解放され街がみるみる内に見えてくるが矢張り面影はあまり残っていない。触手が消えたのを見て街へとやって来たアミットとミティーネが此方へと向かってくるのを感じながらも振り返らず街の風景を眺める。
「ケント〜!!もう終わったの!流石すぎるよ!!でも、街は....」
「あぁ!ケントの実力はほんとに桁外れだな!」
「二人とも!ありがとう...。でも、もっとはやく...」
「ケント!それは違うよ!」
健人の後悔の言葉を遮るようにアミットは割り込む。それは、意味の無い事だと分かっているからだ。そして黙って健人の横に行き腕に身を寄せる。
「ケントが居なかったら今頃私たちは...。それに、この帝国だってそう!助けられたのはケントのお陰だよ!!」
励ましの言葉を投げ掛ける。そして逆側の腕にそっと身を寄せるミティーネ。
「そ、そうだ..、それに!!...ケントがいなければ私の魔剣もアミットのガントレットも手に入ら無かったしダンジョンだって踏破できなかった。冒険者として人間として!ケントを尊敬するし敬愛するぞ!」
少し照れた顔は赤く染まり此方まで照れくさくなってしまう。だが、それだけ言われれば健人はクヨクヨしてる訳には行かないとばかりに二人の腕を組み笑顔見せる。
「二人とも...ほんとにありがとう!!」
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三人は話しあった末、一度帝都に向かってみることにした。ルドニクスに死体や人の痕跡が残っていない事から厄災に飲み込まれたのではと推測していた。もし仮にオルメニア女王と王女がこの地に滞在していた場合痕跡は何一つ残って居ないため生存すら分からない。だが一応は帝都に滞在しているらしく厄災の被害も無いとは言い切れないので其れも含め見に行って見る事にしたのだ。
「帝都ってどれくらい掛かるのかな?」
小休憩を挟みつつ進んでいく。厄災を倒した事で安心している事もあるが方向や場所があまり分からないので都度都度、地図で確認している。
「うん、俺あんまり地図分かんないだけど」
「うむ、私もだ。なんせ帝国領に来る事自体が初めてだしな」
二人で何やら地図を色々な方向に回しながら風景を見ている。それを見兼ねたアミットが景色と地図で現在地が分かるわけないと諭し取り敢えず進む事にした。
「上から見てもあんまり分かんないね!」
槍を使い上空から地形を把握しようと試みたがやはり分からない。健人達は厄災の気配を追って帝国内移動していた為なんの気配もないまま帝都に目指すのは見知らぬ土地でましてや異世界人の健人には無理な話であった。
「ケント!あっち方面行ってみようよ!」
アミットは健人から見て右斜め前方向を指さした。
「ちなみに、なんで?」
「勘っ!!!」
凄まじい剣幕で差し迫る。健人は少し圧倒されてしまう。
「ア、アミ、ットの勘は良くあ、あたる。ぞ。」
目を瞑り震えながらに答えるミティーネ。会話は聞いていたようで健人に信用をする一言を与える。
「なら行ってみよう!どうせ、厄災は倒したいし!」
「ケント!一応油断禁物だよっ!!」
三人は槍に捕まり飛んでいく。その光景は正しく摩訶不思議だが未だに人に見られた事が無いのは幸運か将又。健人達一行は帝都を目地し進んでいく。




