ファシュトリッシェ帝国①
水上都市ガレリオを離れた一行は再び魔槍にて移動をしていた。祝福の湖畔を抜けると街道が整備されており道なりを確認しながらその上を飛行して進む。
川が見え木々や青々と広がる草原を抜けると黒い煙が上がる村が見えてくる。だが、厄災の気配は無く別の意味での嫌な予感が脳裏を過ぎる。
〜ルロナ村〜
燃え上がる住所と共に荒らされた村は悲惨なな状況になっていた。人の気配はなく所々に血が散乱しており土は抉れ無数の足跡と争った形跡が残されている。
「一体、この村で...何が...」
燃える家を目の前に立ち尽くすアミット。ミティーネと健人は周辺の探索をしているが矢張り残っている人は居らず住居の中は全て持ち去られていて村以上に酷い有様だった。
「酷いな...他の街から逃げて来た人達の仕業か、山賊か....。」
「あぁ...そうだな...。少なくともモンスターの仕業ではないだろうな。」
人が居ない事を確認すると合流しすぐに飛び立つ。アミットは少し傷心気味だが今は他の人達が優先だ。それに、一番の目的地、帝大都市ルドニクスまでまだ少し距離がある速度で云えば一晩も掛からないだろうが向かうまでの間に厄災に襲われている所があれば救出していかなければならないので事態は一刻を争う。
帝国の土地が広大なお陰で今回の厄災は速度が遅く考えられるが逆に行くと都市間が離れていればも人間は逃げられないし助けが来るのも遅れてしまう。帝大都市ルドニクスが既に壊滅している事を考慮しても帝都まで厄災の手が伸びていてもおかしくないと健人は考えていてた。
そして日が明け太陽が少し登り始めた頃健人たち一行は帝大都市ルドニクスへと到着した。
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「こ...これが...都市?」
異様な空気を感じた健人は都市が良く見える少し離れた丘に降り立った。真っ黒な球体が都市上空に居座り液体の様な物を垂れ流している。街の面影は跡形もなく別の何かが形成されていた。丸で都市その物が一つの意思を持った生命のように。
ドックンドックンドックン
所々波打つように鼓動する液体は大きな触手か木の根の如く街の外まで張り巡らされている。そして、球体から厄災と思わしき何かがボトボトと堕ちていく。
「な...なにあれ?」
「わ、わからん....。パドレス城跡で見た厄災を生み出す厄災とは似ても似つかぬ....」
三人は目の前に広がる光景に驚愕していた。動揺するのも無理はない、アミットとミティーネの冒険人生でもこんな事は今までに経験がない。ましてや健人にとってはここは異世界である、幾ら強いとはいえど心が無いわけではいない。
「取り敢えず急ごう!あのキモイの潰せば他も多分大丈夫なはず!!!」
これは一つの予想だった。仮に黒い球体が本体なのだとしたら元を壊せば他の厄災も止まる若しくは消えるでは無いかと。不完全な形をした不全で保たれた不気味な身体はそれを物語っているようにも感じたと同時に動きが人間を襲うことに固執していたのも単純な動きしか出来ず自立した生物では無いのではないかと。
この予想は当たっている。本体は生み出した厄災から人の血を糧とし更に多種多様な厄災を生み出す。人間がいる限り続く云わば永久機関である。
ダッダッダッ!!
走りながら都市付近まで近付く。異様な光景に目を取られ乍もしっかりと周囲の警戒を怠らない。が、それは突如として襲いかかってくる。
ヒュン
「!!!!!!」
ドシャァァァァァン!!!!
一部の黒い触手が鞭の様にしなり襲いかかってくる。それはアミットとミティーネも狙った防衛反応だった。
「ミティ!ケント!これま魔力に反応してるのかも!!」
「ま、まりょくに?」
この都市に張り巡らされている黒い触手は全てが球体と繋がっている。それらは魔力に反応し人を判別、襲いかかってくるのだ。
しかし、ここに魔力を全く持たない男が一人。ベルディ・バウンドと違い生物的な意識を持たない球体はただ魔力に反応するというだけの機械にも等しい。つまり、健人は捉えることは出来ない。
「二人とも!俺に任せて少し離れた場所で待ってて!!」
健人は魔槍を使わず自身の体一つで都市の中へと入っていく。
「分かった!!気を付けてね!!!」
「危険があればすぐに戻ってくるのだぞ!」
二人は手を振りながら走っていく。少しでも速く離れた方が懸命だと考えたからだ。
「さて、ここが帝大都市ルドニクスか...。厄災出現前に来たかったな...。来るのが遅かすぎたか...」
都市の中は外側から見るよりも悲惨な状況だった。満遍なく張り巡らされた黒い触手は嘗ての帝大都市ルドニクスの面影をすっかりと消し去っていた。それでも尚止まることなく球体から垂れ続ける液体は非常に気持ちが悪い。
「さぁ、とっとと片付けるか!!」
健人は迷うこと無く黒い球体へと迫っていく。帝国の窮地を救う為に。




