出発②
野営で一晩を明かし次の日の朝。健人にとっては初めての野営だったのでアミットやミティーネのの指導の元色々と教授を受け新鮮な楽しい夜を過ごした。
「それにしてもこのテント凄いね!流石!皇様直々なだけあるよ!!こんな楽な野営初めてだったよ!」
「これは俺でもやり過ぎだと思う...。」
出発の前日、オルメニア皇から話とは別に旅に役立つ様々な品を託されていた。その一つが野営に使ったテントである。これには認識阻害の魔法と幻惑魔法が施されており先ずモンスターに見つかる事はない。加えて健人の危機感知は魔力ではなく五感由来の為睡眠中でも危険が近付けば無意識に反応できる。それ故野営にも関わずなにも気にすることなく休息・睡眠を取ることができた。
「こんなに気持ちよく寝られた野営は初めてだ!オルメニア皇には改めて礼を言わねばな!!」
「あぁ、良い土産話を持って行けるといいんだけど」
朝食を食べ終えテントの中で身支度を済ませる。魔法のポーチがあるお陰で荷物は嵩張らない、テントを収納し出発する。
「さぁ、行こうか!」
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3日後
〜ファシュトリッシェ帝国〜
水上都市:ガレリオ
巨大な湖の上に栄える水上都市ガレリオ。遥か大昔より存在するとされるこの湖の周辺には幾度となく国家・都市が栄えた。しかし、厄災に太刀打ち出来ず滅亡を繰り返す中でこの湖だけは何の欠落も穢れも無く存在し続けている。そして、現在のファシュトリッシェ帝国が建国される。その湖は祝福の湖畔と呼ばれる様になり湖の上に都市を作る事で国が護られるのでは?と信じられ今に至る。
そして、現在...水上都市ガレリオは厄災による侵攻を受けていた。それは此度の帝国を襲ったと言われる厄災によるものだった。
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「にげろ〜!!!みんな!急いで逃げるだぁ!!!」
「きゃぁぁ〜〜!!!!!」
「うわぁ〜〜〜!!!!」
ファシュトリッシェ帝国はこの世界で最大の国土を誇る大国である。厄災に襲われた、という情報は先ず世界各地の国々に警告と注意喚起を含めて伝達される。厄災の等級と侵攻速度にもよるがオルメニア皇国を襲った厄災はこの伝達をする余地を殆ど与えなかった。だからこそ自国よりも先に他国に情報を伝えるのが最優先されてきた。
しかし、今回、帝国を襲った厄災の侵攻速度は異常に遅かった。これが帝国内の危機感を著しく低下させてしまう。厄災に襲われた都市とその周辺にある町や村の人々は既に避難を完了しているが、爆心地から遠く離れた都市や街の人々は普段通りの生活を送っていた。それに加え前回の厄災の襲来が凡そ数百年前。現代を生きる普通の人々から厄災の恐ろしさを消してしまうには十分すぎる時間が経っていた。
「あんなモンスター見た事ねぇ〜よ!なんなんだよ!!どうなってだ!!」
「まさか....ほんとに厄災??」
逃げ惑う人々は一心不乱に走り続ける。その後ろを追いかける黒狼は嘗て栄華を呑んだ王国の都市を幾つも滅ぼした厄災ベルディ・バウンドであった。その姿はおとぎ話に出てくるそれとは異なる見た目をしており健人達がパドレス城跡ダンジョンで出会った物とは明らかに違った。
「きゃあ!!」
「どけっ!!どけっ!!」
「う゛ぁぁぁぁぁ!!!!!だず....げ...」
逃げ惑う人々は叫び声と恐怖の心で大騒乱になっていた。ぶつかり倒れた人を気にする事もなく踏んでいく。逃げ遅れた人々は闇に飲まれるが如く体の至る所が貪られている。
「も.....も゛う゛......」
「だ、だれか、、、だれか」
助けの声は虚しく空に消えていく。街は保たれたまま人だけが無惨に狙われ殺されて血みどろに染まりゆく。
「きゃっ」
小さな子供が倒れる。地面に踏した少女が振り返る先には目前に迫る黒狼。怯えたまま立ち上がる事も出来ずただ、震えるのみ。
「う.....ぅぅ...」
ガルルルルバウバウ!!!!
目を瞑り死を覚悟する。
ザシュ!!!
大きく開けた口の様な物に真っ直ぐと槍が突き刺さる。
「ごめん.....遅くなった。」
「行くよ!ケント!ミティ!!」
そこに一筋の希望の光が差し込む。禍々しくも神々しく見える武器達は目の前に広がる絶望を悉く滅ぼしていく。
時は少し遡る。健人たちはファシュトリッシェ帝国に向けて飛行を続けていた。水上都市ガレリオは健人たちが進んでいた方向の最初に到着する予定の都市だった。近付くにつれ感じる厄災の気配をいち早く察してしまった健人はできうる限りの最高速度でガレリオを目指した。
だが、少し遅かった。街が見えた頃には人々の悲鳴と逃げ惑う叫び声が耳に入り、目に映る悲惨な光景は街を紅に染め上げていた。
「くっそ!!!」
間に合わなかった憤りを吐き出すかの様に戦闘する。ガレリオを襲う厄災ベルディ・バウンドは凡そ十数匹。街の構造上逃げ道が決まっており人が密集してしまう。散らばらず纏まっている事がせめてもの救いだ。
ザシュッ、ガ、ガ、ギィン!ザシュッザシュッ!!
「(感情に身を任せるほど槍の動きがなんか...研ぎ澄まされていく)」
今はただ、目の前の出来ることに集中する。その気持ちの赴くままに。




