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パドレス城跡⑨

「こ...ここは...。」


水中へと飛び込んだ健人だったが気が付けば水面から顔を覗かせていた。しかし、周囲を見渡すと先程まで居た洞窟とは少し違い地面は直ぐ傍に在り飛び込んだ筈の崖はなく二人の姿も見えない。


周囲の状況を軽く確認した健人は取り敢えず安全と判断し二人を呼ぶべく再び潜水した。


ザパァァーン!


「あ、ミティ!!」


水面から顔を見せた健人は二人に手を振る。


「おーい!!」


「ケント!無事で良かった!どうだ何か分かったか?」


崖から屈み込む体勢で下を覗き込むミティーネ。アミットに関しては堂々と身体を乗り出し大手を振る。


ダッダッダッ


崖と壁を交互にジャンプする事で一度崖上まで昇る健人。そして水の先で見た事について二人に話すのであった。


「水に潜ったら別の空間に繋がってるなんて...。でもダンジョンだし何があっても不思議じゃないよね」


「あぁそれに、ケントが見に行ってるのなら間違いはないしな」


「俺もビックリしたよ、水に潜ったと思ったら外に出てるんだからさ」


「じゃあ早速...。行ってみようよ!!」


「そうだな!百聞は一見にって言うしな!」


「ひゃくぶん?なにそれ?」


次に進む手掛かりを掴んだ一行は普段の明るい空気感で談笑する。ただ、一人を除き。


「さっきからどうしたんだよミティ?」


健人が異変に気付き声を掛ける。アミットは何かに気付いたらしくニヤニヤと口角を上げている。


「い、いや、そ、その。じつ、実は、」


「ん?」


言い淀むミティーネ。ハッキリとした性格なので普段からでは想像もつかないほど狼狽えている。


「ミティって実は高い所が苦手なんだよね!」


「なっ!ア、アミット〜」


「へぇ〜そうなんだ〜...って結構落ちる事多くなかった?最近?」


恥ずかしがるミティーネと悪い笑顔で揶揄うアミット、健人は高所恐怖症を知っているので「そんな事」か程度で何も思う事も無い。


「アトラスのダンジョンの時は落ちると言うより吸い込まれる感覚だったし暗かったから...。で、でも、こ、これは...」


チラリと覗き込む様に崖下を見るが即座に目を離してしまう。


「まぁ高所恐怖症なんだろ、珍しい話でもないんじゃない?」


「こ、こう?ん?...。それが何か分からんが...ケント!高い所が苦手というのは冒険者として致命的なんだぞ!!!こんな事恥ずかして、い、言えないだろう」


高所恐怖症という聞き慣れない言葉に一瞬躓くもミティーネの勢いは止まる事なくその心音が語られる。この世界、特に冒険者にとってダンジョン探索は勿論魔物討伐や護衛様々な依頼を請け負う事になる中で各地各地の地形や土地環境は考慮するのが当たり前。高い所が苦手というのは冒険者にとっては致命的でありミティーネにとってはそれが足枷になっていた。


「いやいや、俺の世界じゃ結構な人が高所恐怖症だと思うぞ?全く気にする必要ないよ!そういう時の為の仲間とか冒険者だろ?全然俺でいいなら抱えていくし!」


健人は本当に何も考えていなかった。ただ、事実と自分の思っている事を伝えただけ。しかし、馬鹿にされるどころかそれを肯定し自分がっと言い出した健人に対してミティーネの心は軽くなり救われた。


「あ、ありがとうケント。冒険者で馬鹿にしなかったのはお前とアミットくらいだ...、ホントに..」


少し照れくさそうな顔をしながら礼をするミティーネ。その表情は何処か気品の有る顔立ちというよりかは年頃の少女の様に見えた。


「もしミティの事馬鹿にする冒険者なんか居たら俺がぶっ殺してやるよ!」


「私も私も!ぶん殴るっ!」


「いやいや、物騒過ぎるぞお前達...」


プッ


ハハハッハハハハハハ!!!


その笑い声は洞窟内に響き渡る。場所を知らなければ仲良し三人組のピクニックにも見えなくは無い。しかしここはダンジョンであり階層の途中である。三人は今一度気を引き締め次の場所へと飛び込む。


「よしっ、それじゃ行くか!」


「うん!」「あぁ!」



「ホントに別の所に繋がってるなんて...。これってまだ同じ階層だよね?」


崖から飛び降りた三人は水中を抜けた先の陸へと上がっていた。アミットは周囲を見渡しながら念の為探知を行う。


「こ、こわか、」


「目閉じてだろ....。もう地面だって」


目を瞑っていても一度見た光景は中々脳裏からは離れてくれないらしい。落下の浮遊感も相まって膝が震えている。


「す、すまない、ほんとに」


「だからいいって!・・・・うんミティ」


明るく元気に返答した健人だったが少し間を開けて何かを閃いた様な顔で立ち上がる。


ヒョイ


「ほらこれならいいだろ」


飛び降りた時同様にお姫様抱っこで抱き上げる。次第に不安や動揺は消えるが別の意味で鼓動は早くなる。


「なんか、ミティばっかズルい気がするんだけどっ!」


そう言って不満げに起こるアミット。


「おいおいアミットまで....よし!それなら背中!おんぶでどう?」


冗談半分で背中を向けると数えぬ間にも勢いよく飛び乗るミティ、健人の身体この勢いにも動じない。


「勢いつけすぎだろ!」


「これでなんでビクともしなの?」


「俺にも分からない」


こうして何故かお姫様抱っことおんぶの形で二人を運ぶ事になった健人だった。


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