パドレス城跡⑤
「あ....あれ、なに?」
アミットが動揺するのも頷ける。漸く天井付近まで登ってきたかと思えば広がっていたのは壁から壁へと満遍なく張り巡らされた大量の蜘蛛の巣だったからだ。それに加えて張り巡らされた糸の分厚さは尋常ではなく最早捻り合わされたロープが如し、健人は周囲を確認しつつ巣の上へと着地した。
「ふぅ〜。ここから気配が...。なっ!!!!」
シィーーーーーー!!!!!
それは一瞬の油断。気配は感じていたものの詳しい位置まで特定していなかった。蜘蛛の巣に気を取られていた健人達は闇に紛れたその巨体を攻撃が当たるまで認識できなかった。
「うわぁ!!!!!」
幸い攻撃を仕掛けられたのは健人だった。巨大な蜘蛛は荒々しく生えた棘の有る腕を獲物を逃がさないように挟み込み身体に突き刺そうとしてくるが、驚き仰け反ったものの反射的に槍を向け串刺しにする健人。
バシュ!!!!
キィィィィィィィ!!!!!!!!
槍は蜘蛛の胴体に突き刺さる。大きな叫声が響き渡り反響しているのか全員が一斉に耳を塞ぐ。
「(ダメだ!鳴き声がうるさくて声がまともに...)」
耳を塞ぎながらこの鳴き声中会話するのは無理と考えた健人は思考でゲイボルグを操り巨大蜘蛛に対して更なる追撃を掛ける。
バシュ!ザシュッ!
鋭い切れ味と振り回す様に踊る魔槍は次々に蜘蛛をバラバラにしていく。暴れ回っていたのも二撃三撃と入れた途端鳴き声と共に落ち着いていき最後のトドメと言わんばかりに雷撃を放つ。
バヂィィィィィーーン!!!!
落雷が一直線に落ち塵も無く消えていく。
「た、倒した..の??」
耳と目を瞑っていアミットが恐る恐ると瞼を開ける。
「あぁ、ケ、ケントが倒してくれた」
健人同様に耳だけ塞いでいたミティーネはその一部始終を見ていた。
「ケントが?ありがとう!!」
「俺ってよりコイツのお陰だよ!ホントに凄いよゲイボルグ!!」
「しかし、魔力を持たないケントがどうやって槍を宙に浮かしながら操れるんだ?さっきの動きは凄まじかったぞ」
「なんでなんだろうな?俺にもよく分からない。ただ、頭で考えたら動いてくれるんだゲイボルグが...」
「なるほど....」
思うところが有るのかミティーネが自分の腰に据えられた魔剣を見つめる。
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〜5階層〜
あの後、登ってきた時同様健人が二人を抱えて壁伝いを蹴り飛び地面へと降りた一行。先の道へ進むとそのまま次の階層に行く事ができた。階段を降りた先に待っていたとのは前階層と同様の入口だった。
「またさっきと一緒だね。」
足を踏み入れた途端に火が灯る。空間が照らされた事によりその狭さを際立たせる。正に入口の為だけの空間。
「取り敢えず行ってみようか」
先程同様に健人が先頭を行く。しかし、思いのほか早くに扉に突き当たる。まだ、入口の光が届く距離にある事からあまり進んでいない事がわかる。
健人は振り返り確認を取るとそのまま扉に手をかけ一気に開く。流れ込むように部屋の中に入る一行。
ボッボッボッ
即座に灯りが灯り空間が照らされる。先程のドラゴンが居た空間よりは狭く見えるがある程度は開けている。
ゴワッ!!ゴワッ!!ゴワッ!!
金棒を持った猪頭の二足歩行型モンスターが何処からともなく現れる。次に繋がる道はなく無視は出来ない状況に三人は戦闘体制に入った。
「それぞれ適当でいいでしょ!」
「了解!」
「こ、こらアミット!また勝手に!」
動き出せば速いものだった。武器を抜き、ものの数秒で全モンスターを屠るが息一つ切れていない。
「なんかさっきより随分優しいね...、。あ!見て!何か出てきたよ!」
部屋の中央に光の柱が現れる。近付いて行けば行く程その光は強さをまし眩しくってくる。
「これってなんだと思う?」
「う〜ん。私にはさっぱり。でも転移魔法陣に似ている気も...」
近付いて分かった事はこの光の柱は魔法陣では無いと言う事だ。しかし、不思議と恐怖も何も感じなければ安心感さえ三人は感じている。しかし、未知の物、ダンジョン、重なるアクシデントが三人の不安感・疑念感を募らせる。
何れにしろ選択肢は一つしかない。この沈黙を破ったのは健人だった。
「直感的に大丈夫だと思うからこの上に乗ってみようか」
ヒョイ
「あ!」 「あ!」
片足で少し跳ぶように光の柱に入っていく健人。柱といってもやはりただの光らしく阻まれる事もない。
「ほら二人とも!はやく!」
両手を差し出す健人に対して少し躊躇うものの手を握り光へと入ってくる二人。段々と身体が宙に浮き始め遂には完全に空中に浮かぶ。
「す、すげ〜!浮いてる!浮いてる!」
「ケ、ケント!そんなはしゃぐ事じゃ...」
ヒュ
気が付けばそこは元いた入口と同じ所であった。火が灯り空間は程よく狭く暗く先の見てない道が続いてるように見える。
「こ、これは一体...」
突然の事で理解が追いつかない一行。健人は周りを見渡し足踏みをする。先程まで宙に浮いていた筈が気が付けば立っていたからだ。
「ケ、ケント...。これって入ってきた入口かな?」
最もな疑問である。振り出しに戻されたのか或いは先へ進めたのか。
「う〜ん.....。ミティはどう思う?」
「まぁ考えても分からないし先に進むしかないだろう。」
「そうだね!!」
意見が纏まり先程と同じ陣形を取る。そして暗い道を槍を片手に進んでいく。その先にあるのは果たして...。




