パドレス城跡④
戦いの火蓋は突如として切って落とされる。二人がドラゴンと呼ぶそのモンスターは口の中を大きく開け青色の息吹を頭上から吹き掛ける。
ボォォォォォォーーーーン!!!!!
灯りが消え急に現れたドラゴンに気を取られている所に仕掛けられた攻撃は三人の不意を着く。視界があまり変わらない健人は即座に対応、二人の肩を叩き正気に戻しブレスを回避する。
ドォォォォォン!!!!!
青く燃え盛る炎は周囲を照らす。収まるどころか着弾した部分からドンドンと燃え広がっていく。各自バラバラに散開した為連携は取れない中いち早く動く健人は一直線にドラゴンに向けて飛んでいく。
「オラァ!!!!」
ザフンッッ
煙に巻かれる感覚。透き通るとは言わないが攻撃に手応えは全く無い。
「チィ!何だこの感覚!」
槍で突き刺した途端に溢れて出ていた煙が更に勢いを増す。地上へと降り始めたドラゴンを見て健人は二人の事を気にかける。
「せいっ!!!!」
躊躇いもなく大きくなった剣を振り翳すミティーネは煙やドラゴンにあまり動じない。その間にアミットが避ける為に身を上空へと投げ其れを見逃さない健人が回収する。
バシッ!
「ありがとう!ケント!!」
「全然!それよりアレって毒だと思う?」
壁を蹴り地面に落ちないようにアミットを抱えたまま飛び回る健人は状況を整理する。ミティーネの攻撃も空を切った様で様子を伺いながら回収を試みる。
「どうなんだろ?でも、吸わないに越した事はないと思うよ」
飛び回る中抱えられたアミットは安定しており健人との会話に支障はない、この間にドラゴンに攻撃をし気を逸らしミティーネを回収する。
「すまない!ケント!」
「俺の方こそ遅なってごめん!」
両腕に二人を抱えたままでも速度を落とすことなく以前とに飛び回る。しかし、地上に敵が居なくなったと分るや否や即座に飛翔、床付近にまで溜まりに溜まった煙はドラゴンの羽ばたきにより目の前を覆い尽くす程舞い上がる。
「うわぁ!!!ウザっ!!」
霧ではなく煙による視界遮断は健人の適応を遅らせる。視界が遮られ両腕も塞がれている今の状況は非常に不利。これを見逃す筈のないドラゴン。
グギャァァァァ!!!!!!!
耳鳴りがする程の咆哮はドラゴンとの距離を教えてくれる。目を瞑り完全に目が見えないアミットとミティーネは息を止め呼吸しない為に我慢をし動けずにいた。
「(ヤバいヤバい!どうする!槍も使えな..いや、そうだ!)」
シュ
空中に現れる魔槍ゲイボルグ。両手は塞がっている健人は槍を信じただ念じるのだった。
「行け!ゲイボルグ!!」
健人の言葉に突き動かされる魔槍は迫りくるドラゴンに対して臆する事なく向かっていく。しかし攻撃は依然通じず勢い収まる事なくコチラに向かってくるドラゴンは宛ら飢えた野獣だ。
「クッソ!槍は動いたけど駄目か!ゲイボル〜〜グ!!!!」
叫び声と共に紫雷の雨が降り注ぐ。貫かれたドラゴンの身体が霧散し消えていく。物理攻撃が効かないのかゲイボルグによる紫雷は確かにドラゴンを捉え煙も出ない。
「え?なに?どうなったの?」
「ドラゴンに攻撃当たった!でも....」
やはり手応えは感じない。身体が再生していくその様は生物としての違和感を増幅させる。完全に再生が再生が終わってしまう前に健人は意識を集中させた。
「!!!!!!」
健人が感じたのは目の前にいるドラゴンではなく別方向にいる敵意だった。
「二人とも!本体は上だ!このドラゴンは本体じゃない!!」
「え?」「なに?どいうことだ!」
二人の驚きも頷ける。ドラゴンから感じた魔力は生物と同等のそれだったからだ。しかし、健人の五感は隠れた本当の敵を見つけ出す。感じたのは健人達の頭上、見上げても先が見えない天井ドラゴンが下降して来た場所からである。
「あのドラゴン以外からは何も感じないよ?」
「でもケントが言うなら間違いは...」
「「ない!」」
体を引っくり返し仰向になると抱えていた二人を天井へと思い切り投げ飛ばす。そしてゲイボルグを手にとり再生が終わったドラゴンに対してもう一度雷を放つ。
「うわぁ!!」
「きゃぁぁぁ!!!」
急な事で二人は驚く。だが直ぐに体制を立て直し身構え臨機応変に対応してみせる。その姿はやはり冒険者というに相応しい。
「もう!急に投げるんだから!」
「ああ!ホントにビックリしたぞ!」
ドラゴンを消し去り壁を蹴り上げ上空へと向かう健人。再び二人を抱き抱え本体を目指す。暗く天井の先が見えない中を健人はお構いなしに飛んでいく。
「ケ、ケント!いきなり投げるなんて!」
「そ、そうだ!変な声が出たじゃないか!!」
「ごめんごめん!でも二人なら大丈夫かなって...信じた!」
抱えながらも会話は成立する。激しく動いている筈だがアミットとミティーネは安定しており揺られてもいない。怒る二人を宥めつつ謝罪し目的を果たす為に集中するよう促す。
「あ、あれは!」
ようやく見えてきた天井付近、そこで健人達が目にしたものとは。




