パドレス城跡②
三階層も終わりが見えてくる。今までは道が通路みたくなっており入り組んでもいた。しかし、大きな扉の前に開けた広間が出てきた事によりここが三階層の終わりなのだと悟る事ができた。
「この感じ、前にも同じ様な状況になった事あるよな?」
「しかもつい最近ね」
「しかし流石に最終階層ではないだろう...」
アミットとミティーネの武具の整備を終えいざ大扉の前へ。
三人で頷き合いアミットが思い切り殴り開ける。
ガシャン!
勢いよく開かれた扉と同時に部屋の中へと駆け込む一行。そこは乾涸びた荒野であった。扉の向こう側が別空間になっており中央に大きな獣が居眠りをしている。
「環境まで変わるのか...暑くなったな」
「うん、風も暑いね!最早熱風だよ!」
空には太陽の様な物が浮かんでいる。内部で吹く風は正に熱風で肌を焦がす勢いだ。荒野とはいったものの砂漠地帯に近い。環境が一気に変わった事によりアミットとミティーネの二人は少し苦しそうだ。
パチッ
眼を見開きノッソリと起き上がる四足歩行の獅子型モンスター。顔が前に二つ獅子と鷲、胴体も獅子で尻尾は八岐に分かれた蛇が伸びる。
「起きたみたいだな...。先ずは様子を」
ジュュ
「!!!!!!」
全員が同じ反応をする、獣のモンスターが霧状に姿を消したからだ。音も無く消えたモンスターは足跡だけがその場に残っており魔力探知にも引っ掛からない。
しかし、健人には位置が分かる。姿は確かに消えているが気配や殺気がモンスターの位置をハッキリと示し伝えてくれる。
「近付いてきてるなぁ〜。うん?いや待って!気配が分散した!」
「どいうこと?魔力探知には引っ掛からないよ!」
「なんか分裂したっぽい!」
放たれていた殺気が二つに別れる。分裂しても尚その殺気は萎む事なく同じモンスターが二体に増えた感覚だ。
ダッ!
考える前に動き出す健人。姿が見えず魔力探知にも引っ掛からないとなるとアミットとミティーネの二人はあまりにも不利だと思い先にどちらか一方を屠る為だ。
ジュュュ
再び姿を現したモンスターは最初に見た時と同じ姿形をしていた。赤い眼がキラリと光り手を振りかざしたかと思えば霧散する様に姿を消す。
「くっ!!そっちか!!」
足を思い切り踏み込みもう一方の気配に飛び込む。その健人に気付いたのか姿を現し再び攻撃を分裂して躱す。
「ちぃ!」
挟み撃ちになる形で二匹同時に鋭く尖った爪を振り翳す。一方を槍で弾きつつ身体を捻り攻撃の合間をすり抜ける。実体化しているのが判明した事で分裂した個体が本体ではなく分身であることが分かった。
そしてそれを見逃さないアミットとミティーネ。避けた健人の動きと連動しつつ気を取られているモンスターを狙う。どちらが本体か判別できない二人は別れて一体ずつ叩く事に決める。
「えい!!」
ドガンッ!!
「せい!!」
シュパン!!
片方は消え去り本体とおもしきモンスターは殴り飛ばされる。拳の跡がクッキリと残った獣は怯んで少し蹌踉ける。
ドジュンシューン!!!!
その隙の糸を見逃さず手繰り寄せる健人の一閃は紫雷が後を追う。口から真っ二つに裂ける様に切り裂かれたモンスターはそのまま塵となり消え去っていく。
「やったね!!三人での初連携だよ!!」
「ああ!素晴らしい動きだったぞ!」
健人もやっと二人の役に立てたと喜びを分かち合う。集まり少し談笑をし、空間の探索を開始する。階層ボスである事は間違いないだろうが次の階層への階段が見当たらない。
「やはりここが最終階層なのか?」
剣を納め荒野を見渡すミティーネが呟く。
「あ!あれは?」
アミットが指を差した方向に人ひとりが入れる程度の穴を見つける。ダンジョン内に於いて偶々である事の方が考え難いこの穴は空間の中でも異質な雰囲気を放っていた。
「あれ怪しすぎるな」
「そ、そうだな...」
近付いて分かる違和感。モンスターの気配はしないが次階層に行くとは到底思えないその穴は未知の恐怖を駆り立てる。
「な、何だか怖いね...」
「深さも分からないからな。もう高いとこは...い、いやだな」
この前の大穴からの落下が相当怖かったのか高所恐怖症も相まって穴にも恐怖心を抱くようになってしまったミティーネは少し震えている。
「よし、俺が先に入るから皆で手を繋いで一気にいこう!」
手を差し出し提案する健人。一列に数珠繋ぎに入る事で多少なりに落下の怖さがマシになると考えたからだ。
「よし!皆で固まって出来るだけくっついて行こう!!ケントお願いね!」スッ
「あ、あぁよろしく頼むホントに」スッ
先頭にあたる健人の次にミティーネを繋ぎその後にアミットと続く。心の準備を整えて三人で穴の前に立ち健人は片足を穴の上で浮かせている。
「多分危険はないと思うし大丈夫!行くぞ!」
「ちょ、ケン....」
ミティーネの心の準備は整っていなかったらしい。穴へと落ちていく一行は無惨にも叫び声だけが木霊し残響が遠のくばかりであった。




