トゥミ村⑥
翌朝になりアミットとミティーネの二人と朝食を摂る健人。トゥミ村で泊まった宿でオカミさんが朝食を作ってくれると言うので三人揃ってお言葉に甘える事にしたのだ。
「まだちょっとお酒が残ってるよぉ〜。うぅぅ〜。」
気持ちが悪そうにお腹を抱えるアミット。スープが沁みるらしく美味しそうに頬張っている。
「だから飲みすぎるなと言ったんだ。」
昨晩より明らかに顔色が良いミティーネは早くも朝食を食べ終わっており食後の珈琲を嗜んでいる。どうやら昨日はお酒を控えていたみたいだ。
「ケントも相変わらず大丈夫なんだね...うげぇぇ」
「ん?二日酔い?全然大丈夫!」
元の世界でも飲み会が好きだった健人はお酒自体は好きじゃなくとも滅茶苦茶飲むタイプだった。あまり酔わなくなった事で飲み会の楽しさは半減したものの幾ら飲んでも二日酔いにならないというのは物凄く助かっていた。
「ところでケント、今日はどうするんだ?」
「ん?なにが?」
「この村を発つのか?」
アミットとミティーネは健人を追い掛けて来た。あの後起きて直ぐに出発の準備をして飛び出して来たとの事でラルパンの人達に挨拶も何もしていないらしい。
「ん〜ん。ちょっとまだ気になってる事があるんだよな〜。」
健人と行動を共にすると決めた二人は旅に同行させて欲しいと願い出た。健人からしてみれば心強い事この上なく非常に嬉しい申し出だった。
「てか本当に着いてきてくれるの?俺の旅に」
「あぁ勿論だ!」
「もう離れないから!」
二人の考えでは魔力の無い健人が単独で行動していると何れどこかで突っ込まれる可能性が高いので複数人で行動した方が誤魔化せるのではとの事。それにこの世界について知識のない健人が一人で旅をするのには限界があると元より考えていたのでそれも相まって好都合だった。
「それで、気になっている事って?」
「あ、ああ。パドレス城跡の事なんだけどちょっと気になる事があって」
「あそこは私も行ってみたかったんだ!」
健人の気になっている事とはパドレス城跡の見えない炎についてだった。少し違和感を覚えたのは健人が途中から視認出来た点と触れないのに熱いと感じたり燃え盛っている空気感を感じた事だ。
「なるほど透明な炎か...。確かに不可解だな」
アミットとミティーネにも事情を説明し状況を共有・整理する。二人の冒険者としての経験や知識は健人にとっての一種の生命線でもありコチラに関しても非常に助かる。
「取り敢えず見に行って見ようよ!私とミティもまだ行ったことないし!」
先程までスープにしか手をつけて無かった筈が既に皿の中は空になっており見事に完食している。準備は万端と言わんばかりに張り切っており体調も少し良くなったようだ。
ガッガッガッガッガッ
一気に皿の中の料理をかけこむ健人。食器がぶつかり合う音が何度か鳴り粒粕を残さぬ様綺麗に完食する。
ゴトッ
「よし!早速準備して出発しよう!!」
ご馳走様の合図に合掌しオカミさんにお礼を言うと身支度を整えて宿を後にするのだった。
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〜パドレス城跡〜
「ここがパドレス城跡...。確かに熱気を感じるね!凄く熱い!」
再びパドレス城跡へと訪れた健人。今回はアミットにとミティーネを加えて三人での観光改めて探索。
「それに少し息苦しいな...。これで本当に観光地として成立しているのか?碌に整備もされてないみたいだが...」
顔色一つ変わらない健人と違い唯でさえ暑苦しい森の中で炎の熱気に晒されるアミットとミティーネは体中から汗を垂れ流し丸で砂漠に居る見たいだ。
「多分皆遠くから見るんじゃない?崖の上から見えるし」
他愛も無い話をしながら城の土台を登る。階段を登りきり暑さが限界を達しているアミットとミティーネを見て長居は出来ないと考える。
「ハァハァ ダメかも、息が」
苦しそうな二人を見て担いで移動しようか考えた一瞬、槍が出現している事に気が付く。手に吸い付く様に握られそのまま刃先を前に少し突き出す。
キィーーン
高音と共に涼し気な風が吹き込む。炎は収まり周囲の空気が潤っていくのが肌で感じとれる。アミットとミティーネの二人も楽になったのか汗が引いていくのがわかる。
「急に涼しくなってきた!何したの?」
「いや、槍を突き出したんだそしたら...!!!!!」
アミットの質問に答えながら前を向く。そこには存在する筈のない巨城が鎮座していた。燃え盛っていた炎の代わりに国旗を振りはためかせ堂々たるその姿はまさに一国の王城に相応しい。
「な、なんだこれ...」
驚愕し立ち尽くし見上げる。オルメニア城とは全く別の王城の風格。健人は何か感じた事のあるしかもつい最近訪れた事のある場所に似ていると直感的に感じていた。
「ケント!何が起こったんだ!これは一体...」
歩み寄るアミットとミティーネに対して体の調子を窺いつつ状況を改めて整理する。突如として目の前に現れた巨城、その正体とは...




