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トゥミ村②

村人のオバサンが言う通りに村を抜けた健人。本当に抜けてすぐの所が一部崖になっておりそこからパドレス城跡が見えた。城跡とわかるのは崩壊した城の残骸が其処に残っているからだ。


「アレが...。もう少し近くでみたいな。結構大きそうだし」


崖を躊躇なく飛び降りる。前方向に勢いよく飛び出した健人はそのまま城跡までの距離をみるみる縮めた。


ガサガサガサ


空から木を掻き分け着地する。何事も無く平然と前を進んで行くのは場所を把握しているからだ。後は空中から見た城跡方向へ進んでいくだけ。


「ここの森...。なんか暑い?」


環境に適応しやすい健人の肉体は気温程度では暑い寒いと感じる事は殆どない。しかし、湿気が支配するこの空間はジメジメと肌を汗ばませる。



「うぉ〜!!!これがっ!パドレス城跡!」


大きく聳え立っていたであろう事が容易に想像できる土台と其れに繋がる長い階段。少し焦げた匂いがし崩壊した城の一部が黒く変色している事から焼け落ちたのだと推察できる。


近くで観察する為階段を登り入口があったであろう場所まで移動する。大きな城壁は見る影も無く無惨に崩れており城門は存在しない。


「ここにパドレス城ってのが...。何だか変に暑いんだよな〜。熱気を感じるというか」


気が付けば辺りは霧に覆われており先程から感じていた暑さも段々と強く感じるようになる。森というよりジャングルに近い印象だ。しかし、健人の感じている暑さとは「熱さ」であり気温では無い。確かに森の中は湿気が凄く温度は高いだろう。だが今健人の感じている「熱気」とは、湿気や気温では無く文字通りの熱気だった。


「な、なにこれ?陽炎?」


城の周りを歩いていると空気が揺らいでいるのを視認する。奥の景色がゆらゆらと歪んで見え正に陽炎の如く、それに加え確かな熱を感じる。


「いや、アッツ!!!ビックリしたっ!え、なになに?」


健人は今一度、自身の身体で確認する。その熱さの正体を。


「え?炎?どいうこと?何かが燃えてる?」


パドレス城。嘗て栄えた大国パドレスを象徴とする巨城は厄災に見舞われ炎に包まれ焼け落ちてしまった。国は崩壊し地理的な意味でも今はこの城跡しか残っていない。その城跡は今現在も見えぬ炎に包まれ焼かれ続けている。既に灰すら残っていない筈がそれでも燃え盛る炎の理由は怨念か執念か、それとも大国に生きた人々の思いか...。


「見えない炎?って事なのか?....。うわぁ!!え?」


顎に手を当てて状況を整理しようと思考を巡らせた矢先、不可視の炎を突然視界に捉えた。


「え?さっきまで見えてなかったのに...。しかも、やっぱり実際に触れれる訳ではないのか?」


この炎は熱を伝える事は出来るが実際に燃え移る訳ではない。しかし、当たり続けていれば焦げるし焼けるので存在していないという訳ではない。


健人の肉体では本来、魔力を認知・感知する事はできない。が、健人の身体には魔力が全くない故に逸脱された五感と鋼の肉体が備わっている。これらは世界の理と常識を覆し魔法の世界に健人という歪みを生み出した。完全に魔力から脱却された肉体は「見えない物」すら認識できる。そう、健人の肉体は魔力が完全に無い事で逆にこの世界に適応、順応してしまったのだ。


「そういえば、俺にはアミットとかミティの魔力を見分ける事が出来たな。それに、魔力が全く無い筈なのに魔力を感じたり見たりする事はできる。う〜ん...。やっぱり、俺の体の問題だよな、」


実際に健人が気付いてる自身の変化はほとんど無い。もちろん、身体能力に関しては前の世界で碌な運動もしていなかった為にいち早く違和感に気付けた。しかし、徐々に異世界に順応していく五感やその他の感性に関してはその了見ではない。


「まぁ、体調が悪い訳じゃないし...。!!!」


突然、頭に衝撃が走る。痛みではなく瞬間的に何かが伝わってきたそんな感覚だった。


「あっちの方で...。なんか、嫌な感じ、気持ち悪い」


パドレス城跡を後にし急いで違和感の元へ。五感全てが超強化されている為に第六感が働く。健人は迷う事無くただ一直線に走り抜ける。


「場所はちょっとだけ離れているな。よし!」



パドレス城跡から少し離れ森の中を駆け巡った。獣や血の匂いが濃くなって来た事を皮切りに段々と足を休め周りを探索しながら奥へ奥へと進む。


「うわぁ〜〜。すっごい匂い、なんやこれ」


この世界に現れる魔物や魔獣、通称モンスターと呼ばれる生物達は死骸が残らない。だからこそ今漂っている血生臭さは健人の嫌な予感を促進させる。


「あの穴から匂いが漏れてるな...。う...う゛ぇ゛〜〜。やば吐きそう...」


洞窟を見つける。明らかに怪しい雰囲気とそこから覗く闇が匂いの元凶だと知らしめる。


「.......。微かに何かの鳴き声がするな。」


洞窟の入口付近まで近付くと微かに音が聞こえた。常人では聞き取れるはずの無いその音を生物鳴き声だと確信する。


「よし、いってみるか」


静かに覚悟を決め洞窟の中へと足を進める健人。そこは鬼が出るか蛇が出るか、それとも魔の巣窟か...。僅かに滴る水泡が不安を増長させていくがその足は止まることを知らない。


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