初めてのクエスト⑦
「どいうこと?ケント、ちゃんと教えて!」
ダンジョン踏破の報告を兼ねて訪れた冒険者ギルドにて現在大ピンチに陥っている健人。この場をどう切り抜けるか頭を超回転させる。
「何か事情があるんだろが...。隠していたのは少しショックだな...」
その一言が健人の心を抉る。忘れていた訳ではなく隠していた健人にとって罪悪感や後ろめたさを感じていたからだ。
「わかった...。説明するよ」
こうしてギルドマスターを含めた三人に改めて事の経緯を説明する。オルメニア皇国の何者かによって召喚された事、魔槍を手に入れた事、そして皇国を旅立ったその理由を。
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「なるほどな、魔力を全く感じ無いのはそういう訳か。だが、お前の言う通り素性についてはこの先もできるだけ隠しておいた方がいいだろうな。」
向かい側に座るギルドマスターが腕を組み直し背もたれにもたれ掛かる。
「しかし.....。国滅級の厄災を倒しただと?前代未聞だ、一番の問題はこれだな」
頭を抱えながら深く考えるギルドマスター。一方のアミットとミティーネは話を聞き終えても黙ったまま静かに座っている。
「先ずそもそも、なんなんですか?その厄災とか国滅級って。王様には急に現れる何かって説明されたんですけど」
「そうだな...。皇様の言う通り厄災とは急に現れるんだ。予兆や前兆は無くただ急に現れる。それが自然災害かもしれないしウイルス等の疫病災害なのかもしれないし。今回の皇国での厄災は生き物の形をしていたと聞くがコレも例外なく急に現れる、が今のところ出現する瞬間を見たものは居ない。」
「うーん。なるほど。。」
「次に、その厄災に対する危険度を表したのが等級だ。下から数十人規模の軍隊を滅ぼすレベル隊滅級、大きな村を一つ滅ぼすレベル大滅級、数百人規模の軍隊を滅ぼすレベル軍滅級、都市を一つ滅ぼすレベル都滅級、国を滅ぼすレベル国滅級、自然を滅ぼすレベル然滅級。そして、神話レベル神滅級だ。今回は上から三つ目の国滅級だ、歴史を見ても滅んで無いのは今回が初めてなんじゃないか?」
ギルドマスターから一通り等級の説明を受けた後に何故か謎の追撃に合う健人。しかし、オルメニア皇国を救った事に後悔は全くないし寧ろその方が良かったとさえ思っている健人は既に焦りよりも安堵が勝っていた。
「そんなヤバいレベルのモンスターだったとは...。でも、助ける事ができたなら良かった!」
目を丸くするギルドマスターの顔は正に鳩が豆鉄砲を食らったようだった。
「お前、面白い事言うな!てっきり自分の事ばっか考えてる奴だと思ったぜ」
失礼な事を冗談気味に言うギルドマスターに対して健人は笑い乍返そうとした。しかし、割って入ったのはアミットとミティーネだった。
「そんな事ないよ!!ケントはちゃんと思いやりとかあるもん!山賊から守ってれたし!」
「そうだ!それに身を挺して地面から私達を守ってくれた!優しい男だ!」
再び鳩が豆鉄砲の状態になるギルドマスター。と思えば突然大笑いしはじめた。
「お前らがそんな庇うなんてな!悪い悪い冗談のつもりだったんだ!ケント、気を悪くしたなら謝るよごめんな」
素直に謝罪をし頭を下げるギルドマスター。
「いやいや!全然俺も冗談だと思って返そうとしてたので!でも、ありがとう二人共。それと、色々黙っててごめん一応出会って間もないからさ...。」
改めて二人に謝罪する健人。
「全然っ!気にしてないよ!私達の方こそごめんね!ケントが異世界人だって分かってたのに...その」
「ああ、私もだケント。私達の関係性はまだ出来上がっても無いのにな、何がショックだって話だ。すまなかったケント。」
三人でホンワカした空気を醸し出す。いつもの雰囲気に戻ってきた一同は表情と応接室内を明るく彩る。
「兎も角まぁ、ケントはこの街を出た方がいいだろうな。今回の件は何れバレるしギルドとしてもダンジョン踏破を公開しない訳にはいかないからな。ケントの事は伏せておくにしてもアミットとミティーネで結局バレる。そうなる前に...」
「大事になる前にこの街から出る....か。」
一瞬の沈黙が長く感じる。しかし健人自身も街から出た方が良いと考えていたので否応は無かった。
「どのみち街を出るつもりだったし丁度いいですよ!」
「そうか...。取り敢えずダンジョン踏破の報酬は三人に支払おう!今日は疲れただろう出るのは明日のは朝にしたらいい!ゆっくり休め」
健人の返答に何故か一瞬暗くなったギルドマスター。その表情は健人を思ってかはたまた...
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ギルドを出て宿へと向かう道中、暗くなったラルパンの街を散歩する様ゆっくり歩く。
「報酬金貰いすぎだろ...」
「まさか、一人金貨十万枚とはな。私とアミットは持ち運べないから大金貨一枚にして貰ったが。」
健人はマジックポーチがある為そのまま金貨で貰いアミットとミティーネは大金貨一枚に換金した。
「ねぇ、ケント...。明日街を出るの?」
唐突なアミットの一言。
「そうだな、早朝には出ようかなって思う。ギルドマスターさんにオススメのスポット教えて貰ったし取り敢えずはそこ目指して!」
再び沈黙が場を支配する。妙な空気が流れ健人は何かを察知する。
クイッ
「ねぇケント」
健人の袖を引っ張るアミット。
「今日は帰りたくない...」
そのまま三人は夜の帳へと消える。思い出を深く刻むようにして。




