初めてのクエスト③
そこは健人にとって見覚えのある空間だった。薄暗く洞窟の様な遺跡の様な、しかし奥の方に見える黒い甲冑とその手に持たれている大きな黒々とした神々しくも歪な大剣を目に確信する。
「ここって、ゲイボルグの...」
先程、歩いていた通路とは雰囲気が全く異なり別の空間に入ったのではと錯覚する。光は無く、眩しさに慣れた目は闇に負け周りは見えにくい。だが、その黒い甲冑と大剣だけは浮き出て見える。
カツッカツッカツッ
徐ろに甲冑の方へと足を進めるミティーネ。意識が朦朧としている訳では無いが引き寄せらる様にして歩みを進めた。
「ミティ!!」
アミットの心配を他所にミティーネは甲冑に持たれている大剣に手を伸ばす。
パシッ
手に取った瞬間、鎧は消え空間ごと音を立てながら霧散していく。健人は自分の様に手が離れなくなったり気絶したりするのではと危惧していたが何も起こらなかった。
「こいつだ。こいつが私をここに...」
「ミティ大丈夫??それに、その剣は」
パリンッ!!!
「え?」
何かが割れる音が聞こえる。それは、今いる空間が完全に崩壊した事を意味した。何も無い白い空間へと侵食していき軈て辺り一面が純白へと染まる。
「おいおい、何が起こって....」
ガゴンッ
三人がひとかたまりに集まった直後その純白は反転、漆黒へと姿を変える。その後空間ごと捻れたり歪んだり伸びたり縮んだりを繰り返し一つの形へと整い最終的に全く別の空間に強制移動させられた。
「なぁ、何が起こったんだ?」
唖然とする健人が二人に問うが双方同じ反応をしめす。
「わ、わかんない」「わからん」
目を見合わせながら失笑する一同。周囲を見渡すと黒い甲冑と大剣があった空間に似ているが此方の方が遺跡に近いと感じる。
そして
「また扉かぁ〜〜」
壁だど思い振り返ると大きな扉があり健人は一度それを無視した。そして周囲を確認した後改めて認識したのだ。
「さっき見た扉より全然何も感じないね!普通のドア!って感じがするよ!」
「そうだな、私も何も思わんな。ちょっと大きいがさっきのに比べるとなぁ〜」
二人の言う通り先程感じたプレッシャーも無ければ禍々しさも感じない。ただ、この先に何かが居るという確信は健人にはあった。鋭くなった五感は生物の気配を的確に感じ取り敵意や殺意にも敏感に反応できる。扉の奥に居るのは確かな敵意を持っている生物だと五感が告げているのだ。
「でも、この先に何かが居る...。脅威は感じないけど」
「取り敢えず開けてみようよ!!」
アミットが軽く押すと徐々に扉が開かれていく。
「おいアミット!」
ミティーネの静止は一歩遅く扉は勢いそのまま完全に開かれた。
「こうなったら行くしかないよな?」
「さっすがケント!ほら、行こ!」
「ちょ、ちょっと!」
ボッ
ボッ
ボッ
扉を潜り中に入った途端炎が灯り空間に光がもたらされる。静かに円を描く様に灯された明かりは軈てソレを照らしはじめる。
「な、なにあれ?」
部屋の中央に座する巨鎧。膝をつき剣を立てそれに縋るようにしがみついている。
ギ.ギギギ...ガシャ..ガシャン
「う、動いたぞ!」
ゆっくり静かに動き始めた巨鎧は、立ち上がる事によりその大きさを知らしめた。巨大な岩石にも似た印象から一変、その全長は十メートルに及ぶ。
「ケント!!ここ、ボス部屋かも!アレ多分ボスだよきっと!」
「ボス部屋?」
「そう!階層毎にそこを守護するモンスターだよ!倒せば先に進めるけど倒せないとこの部屋からは出れないんだよ。」
「ほうほう。それってつまり...」
「倒すか倒されるかだな」
ゴゴッ..ゴゴ..ガッシャン
会話も途中に巨鎧が動きをみせる。その大きな図体に見合った大剣を片手に持ち大きく横払いをし構える、正に戦闘態勢である。
「....来る」
健人の声と共に走り出した巨鎧はその大きさからでは想像もつかない程速く走る。
「は、はやい!!」
驚くアミットといち早く前に出るミティーネ。
「させん!!」
ガッギィィィン!!!
「!!!!!!」
大きく振り下ろされた大剣を悠々と弾き返すミティーネ。勢いがついてた為にその場で仰け反る巨鎧の隙をアミットは見逃さない。
「いっくよぉ〜ん!!そりゃ!!」
ガギャン!!!
思い切り殴り飛ばす。しかし、ダメージはあまりなく少し鎧が凹んだ程度。そこへ直ぐさま走り込み追い打ちを掛けるミティーネの手には先程手にした禍々しい剣が握られていた。
「いっっけぇぇ〜〜!!!ってちょ、ええ!」
体勢を立て直し再び大剣でアミットに攻撃を仕掛ける巨鎧の腕を狙い縦に振り下ろそうとした瞬間、ミティーネの剣が巨大化した。
「ちょ、ちょっと...。いや、うん??」
気の抜けた声でそのまま振り下ろす。剣は見事に巨鎧に命中、豆腐を切るかのように胴体を軽く真っ二つにしてみせた。
ドッガァーン!!!
その衝撃は凄まじく部屋全体にヒビが入る。地面や壁は割れ天井は崩れてきそうだ。
「こ、これは」
「ミティ!!大丈夫!?それにさっきのは...」
慌てて駆け寄るアミット。気が付けば剣は元の大きさに戻っておりミティーネは不思議と眺める事しかできなかった。
「私にもわからん。ただ、魔力を込めたら大きくなったんだ。しかも重さは感じなかった。」
「あんな大きかったのに重さを感じ無かったの?一体なんなんだろ...その剣」
考えても謎は深まるばかり。二人の連携がスムーズ過ぎて加勢する暇も無かった健人は巨鎧の討伐痕を確認していた。それは気になる物を見つけたからだ。
キランキラン
「ん?これは...」
手に取ったのは淡く光り輝く宝石の様な結晶だった。




