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初めてのクエスト②

健人たちは今、ラルパンより少し北側に進んだ場所にある森林地帯へと足を踏み入れていた。鳥の声が空気を伝い、涼しげな自然が身体に染み、陽は少し傾き夕暮れに差し掛かろうとしている。


「あ!ケント!見て見て!アレだよ!!」


アミットが進む足を止めて前方を指差す。


「お゛ぉ゛ぉ〜〜〜!!!!!スゲェ゛〜!!!!!」


森の出口、眩い光の先に広がるのは未知の光景。未だ嘗て見た事も聞いた事も無い異様な形をした建造物、その正体は


「これがダンジョン!!!アトラスの大迷宮(ダンジョン)かぁ゛!!!」


遺跡にも見えるその佇まいは苔が広がり青々しくなっている。しかし、それは自然の中で一際目立つ存在感を放っていた。


チュンチュン


ピィーーピョンピョン


「でもよかったのかケント?初めてのクエストがダンジョン調査で」


森を抜け遺跡風ダンジョンの入口へ向かい歩いていく最中ミティーネが声を掛ける。今回の依頼内容はラルパンの近くにあるダンジョンの探索で報酬は持ち帰った収穫内容によりけり、何も無くても特にペナルティ等は無い初心者向けのクエストだ。


「うん!ダンジョンっての気になってたし、探索って逆に言えば奥深くに潜っても問題ない訳だろ?それなら都合いいじゃん!」


「ダンジョンなんて、あんまり来る事無いから楽しみ!!いっぱい探索しちゃおう!」


アミットは両腕に嵌めた籠手を当て鳴らし気合いを入れる。入口が近付き音が響いたと思えば底が見えない暗闇が広がり強い風が吹き抜けた。


ビュービューーー!!!


「うわぁ!!」


三人で固まり腕を掴み合い離れないように努める。が、それも虚しく三人はそのまま闇に飲み込まれて行くのだった。そこに残ったのは反響で響く叫び声の余韻だけ...



「ふ、ふたりとも大丈夫??」


「な、なんとか...」


「あ、あぁ、私も平気だ」


ダンジョンの入口から底の見えない穴へと吸い込まれた三人。健人を下敷きに重なり合うアミットとミティーネ、落下時間を考慮しても到底無傷で済む筈は無かったが目に付く所に傷が見当たらないのは間違いなく下敷きとなった健人のお陰であった。


「あ、ごめんケント!すぐ退くよ!」


健人を下敷きにしている事に気付いた二人は直ぐに立ち上がり土埃を払い身なりを整える。それと同時に立ち上がる健人は自分の身体を隅々まで確認し怪我の有無をたしかめた。


「痛いのは痛いんだけど...怪我もしてないっぽいし俺も大丈夫かな...」


周囲に生物の気配は感じられず今はただ静かだ。しかし、周辺の景色には何処か違和感があった。


「ここって何層なんだろね...。松明が掛けられてるから人は来てる筈何だけど...」


「松明?.......。それだ!」


「ど、どうしたケント!」


「松明だよ!俺の違和感の正体はこれだったんだ!」


「い、いわかん?」


健人が感じた違和感とは「明かり」だった。底が見えない穴に吸い込まれるよう落ち、気が付けば地面に伏していた健人達。しかし周りは明るく安全で、周囲にはモンスターの気配すら一切感じ無い。


「だってこんな所に松明あるなんておかしくない?それともここが始まりなのかな?このダンジョンの...」


「たしかに。それに私達二人もアトラスの大迷宮(ダンジョン)に来るのは初めてだけど...穴に吸い込まれるなんて聞いた事ないよ?」


「あぁ。少なくとも私達二人は一年以上ラルパンで活動しているが、本来のアトラスの大迷宮(ダンジョン)の進み方はさっき居た入口から中に入っていき、下に向けて潜っていく筈だ。穴に吸い込まれるなんて聞いた覚えはないな。」


「って事はここがスタート地点じゃない訳か...。まぁ何はともあれ、一旦進んで見るしかないか。」


「そうだね!考えても今は何も出来ないし!」


「ああ、取り敢えず先に進んでみよう」


上を見上げると先の見えない闇、落ちてきた穴がある。周囲は壁に囲まれており均等に並ぶ松明が空間を照らす。


「道は一本......か...」


目の前に広がる道を三人で横並びに歩いていく。周囲を見渡せど他に道はなく、只均等に松明がおかれ同じ風景が続いていく。


「一体どこまで行くんだろうねぇ〜」


「たしかに、ケントの言う通りこの松明はおかしいな、明らかに均等に置かれている。人というより元々そいう物、ダンジョンの一部の様に感じる。」


「なんか気持ち悪いんだよ、嫌な予感がするっていうか。」


「あ!何か見えてきたよ!」


健人の嫌な予感は見事に的中する。見えてきたのは禍々しく蠢く異質な大扉。見上げる程の高さがあり天井まで届く勢いだ。


「おいおい、絶対ヤバいだろこれは...」


「見るからに怪しいよねぇ〜」


近付いて分かる存在感と迫力。唯の扉に過ぎないが果てしないプレッシャーを感じる、健人は冷や汗を額から垂らした。


「ミティ?大丈夫?」


「...........」


「ミティ?」


扉を一点に見詰め押黙るミティーネ。アミットの声が聞こえていないのか呼び掛けには一切答えずその目を離さない。


「ミティーネ!!」


アミットが辛抱たまらず肩を強く揺さぶり、漸く気が付く。


「ど、どうしたアミット」


「どうしたはコッチの台詞だよ!ずっと呼んでたのにミティが無視するから!ねぇ!ケント!」


「うん。ミティ大丈夫?ずっと扉を見てたけど」


「だ、大丈夫だ!た、ただ 何故かこの扉を見ていたら安心するんだ。何故だか...分からないけど...」


シュ


「うわぁ!ビックリした!!」


「な、何それケント!何処から出したの?」


突如右手に現れた魔槍は紫色に発光し点滅している。槍の刃先を扉へと向けゆっくりと近付け小突く。


カチィーーーン


鐘の様な高い音が響き渡る。反響した音が軈て共鳴するように音を増幅させていき扉は徐々に消滅していく。


「ケント、何を...。お前は一体」


「凄いよ!ケント!何したの!」


「この槍ついでに俺の話もするよ、ここなら誰にも聞かれなさそうだし二人を信用してさ!」


開かれたその扉は宝の山か、将又 鬼蛇が蔓延る魔の巣窟か。闇に広がるその空間に足を踏み入れた瞬間、健人はとある場所を思い出す。


「こ、ここって....」


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