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オルメニア皇国⑥

明くる日の朝。陽は程よい高さに上り暖かい空気が街中を包み込む。是非にと皇様から朝食に誘われていたので従者が健人を起こしに部屋へと訪れる。


コンコンコン


「ケント様、失礼致します。そろそろ朝食に...」


カーテンを開け窓から差し込む光に目を瞑りながら着替えをしている健人は絵にはならないが従者の目には良い感じに映っていた。


「こ、これは大変失礼致しました。まさかお着替え中とは」


「あ、全然大丈夫ですよ!偶々早く起きれただけなんで...起こしに来て下さってありがとうございます」


「いえ、そんな。。それでは、失礼いたし...」


「あ、ちょっと!」


「はい、何か御用でも?」


「じ、実は...」



着替えを済ませて朝食を摂る。場所がまた不確かだった為、従者の人に案内してもらった。皇様は先に着席して健人を待っていたので慌てて謝った。


「王様、先に食べて貰っても良かったのに」


「まぁ儂がケント殿と食べたいと無理に誘ったからのぉ〜。これもある種のマナーじゃよ」


笑いながら楽しそうに食事をする王様。王族の食事だからかこの世界の文化なのかは分からないが長い机に広い部屋、護衛や従者達に見守られながら食事をするのだが皇様との距離も幾分か離れていて話しにくい。


「あ、あの王様。もし無礼じゃ無ければ、もう少しそちらに寄ってもよろしいでしょうか?」


「ほう、儂は全然構わないが...」


「折角の美味しい食事を王様と一緒出来るのに少し距離が寂しく感じてしまって...」


「それもそうじゃな!!ケント殿なら問題ないじゃろうて

良いぞ良いぞ!こちらへ来て食べよう!」


こうして、華やかで楽しい朝食を食べ終わる。皇様も大満足だったようで次の日も是非一緒にと食事に誘われた健人は勿論二つ返事で了承した。



時間とはその日の感情や状況次第で早くも遅くもなる。これは個人の捉え方による物なのかそれとも...。この日の健人の時間は非常に早かった。気が付けば時計はセリルとの約束の時間を差していた。


「この格好変じゃないよな?まぁ、みんな似合ってるとは言ってくれたけど」


健人は今馬車の中に居た。セリルの試験が午前までという事だったので迎えに行くついで一緒に同乗させてもらったのである。


「ケント様、学園に着きました。」


「あ、はい、分かりました!ありがとうございます!」


馬車が停り静寂が車内を包む。先程まで鳴っていた車輪の音は聞こえなくなってしまえば少し寂しく感じる。しかし、窓には仕切の如くカーテンが閉められているが外からは和気藹々とした生徒達の声が聞こえてくる。


「ーーーーーーーーー」


「ーーーーーーーーー」


「すご、声が段々大きくなってきた。多分人が増えて来たんだろうな」


ガチャ


「それではごきげんよう!」


「セリル様、足元にご注意を」


扉が開いたと思えば声が聞こえてくる。優雅で華やかで貴賓のある挨拶を済まし馬車の中へと入って来る。


「ケント様!お待たせして申し訳ありません!」


「いえいえ、ホントに今来たところですから!」


デートに於いて定番であるこの(くだり)をまさか送迎付きの馬車の中で言う羽目になるとは想像もしていなかった健人は正に本音としてその言葉を口にした。


「試験はどうでしたか?」


「はい!私にかかればお茶のこさいさいです!」


セリルが乗車して暫くすると馬車が動き出す。暖かい風と眩しい光がセリルと共に入り込み外の空気を運んでくる。それは、何処か懐かしく心地よい香りで不思議と安心感を覚え口元が緩む。


「さて!今日は念願の城下町をご案内致します!」スチャッ!


「はい!よろしくお願いしま...ってい、いつの間に!!」


「ふふん!一応、変装しておかないと色々面倒ですので」


自慢げに語るセリルは気が付くと眼鏡を掛けこれで完成と言わんばかりに帽子を深々と被った。すると髪の毛の色が徐々に変わっていき、あっという間に別人になってしまったのだ。


「す、凄いですね。面影は有るにしろ殆ど別人だ...」


「これなら思う存分楽しめます!!さぁ、ケント様も!」


何処からともなく同じ眼鏡と帽子を健人に渡すセリル。


「い、いったい、どこから...」


「細かい事は気にしない!そろそろ着きますよ!ケント様ご準備を!」


「え、あ、はい」


言われるがままに手渡された眼鏡と帽子を装着する。健人の存在は皇族関係者以外には明かされておらず基本的には誰も知らない。が、念の為セリル考案で健人も変装する事になったのだ。



「セリル様到着致しました。城下町です。」


馬車が少しずつ速度を落とし停車する。前方から声が聞こえ扉が音を立てずに静かに開いた途端、僅かに聞こえていただけの喧騒が一気に車内に流れ込んできた。


「さぁケント様!到着しましたよ行きましょう!!先ずは、昼食からどうでしょう?」


「いいですね!!行きましょう!」


中心部より少し離れた所で馬車を降りセリルの侍女と健人を含め五人で城下町を歩く、残り二人は護衛である。到着し馬車を降りた直後にどこからともなく現れた侍女と護衛は正にプロである。


「この近くに城下町で有名なお店が有るみたいなんです!私も一度行ってみたくて、是非そこに!!」


「それは絶対行きましょう!!うわぁ〜お腹空いてきた〜」


メインストリートより少し外れた所に店を構える知る人ぞ知る名店。しかし、先日皇国や世界各国で人気の雑誌にて掲載され国中にその名前が広がり今では長蛇の列が日常な程に人気店になり中々入る事が難しくなっている。


「スッゴイ人の量ですね...思ってた倍は...」


「え、ええ。私もまさかここまでとは...」


その長蛇の列を目の当たりにした健人とセリルは驚愕していた。馬車を降りて店の前まで歩いて行く道中でずっと気になっいた人の群れ。それはお目当ての店の順番待ちだったのだ。


「ま、まさか降りてからずっと続いてる人の列が店の順番待ちなんて...ホントに有名なんですね」


笑い混じりで話す健人にセリルは相槌を打つ。しかし、何やら秘策があるらしい。


「ご安心くださいケント様!その為の皇族です!!」


「え?」


「少々お待ちを!!」


その後、侍女に声を掛け何かを持たせお店に向かわせると 三分もしないうちに店内へと通された。セリル曰く、


「ちょっとだけ(ズル)をしました!」テヘッ


との事らしいが可愛かったので何も気にならなかった健人であった。


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