魔槍の英雄
薄暗い穴道を抜けると広大な自然が広がっていた。光に照らされ風が吹き抜ける草原は歌い、踊るように揺れ動く。
しかし、騙されてはいけない。ここはダンジョンと呼ばれる大迷宮・大遺跡の中である。この中で起こる現象や風景などは全て作られたものであり外界とは全く異なるダンジョン特有のもの。採れる薬草や動物に至るまでダンジョン毎にも全て異なると言われており何かの統一性は無い。
しかし、ダンジョンには「最奥」と呼ばれる最深部が存在する。それは言うなればゴールであり唯一の共通点でもある。その場所に到達する為に人々は腕を磨き鍛錬を積み冒険者となり命を掛ける。
「ーーーーー きんもっちぃぃ!!風が吹いてる!!」
薄い紫がかった短髪が吹き抜ける風で揺れる。晴れやかな笑顔は太陽のように眩しくて、今にも飛んでいきそうだと思う程に華奢な身体をジタバタとさせて燥いでいる。
「おい、あんまり前に行くな前衛は私だぞ。それに、た、たかい、と、ところ、で、あ、あぶないぞ、、、」
藍色の髪の毛は宝石の様にキラキラと輝く。騎士のような格好で少々大き過ぎると思う片手剣を地面に突き刺しそれを頼るように握りしめフルフルと震えている。(高所恐怖症)
「アミット!!ミティが怖がってるだろう?それにお目当てのブツはもう少し何だから、気緩めるなよ〜!」
銀色の様な白髪を靡かせる姉御肌な女性が2人に声を掛ける。だが、注意をしながら当の本人も周りを見渡し少し燥いでいる。
「シャオン、お前も少し燥いでんじゃん!でも、スっっっごいよな!やっぱ大迷宮って!」
-俺の名前は天海 健人!仲間達と共に今日も旅をする冒険者だ!-
「あぁ、アレが噂のパーティーだろう?そんでアイツがリーダーの魔槍の英雄....か。そんな凄いのかね?」
「そうだよな?槍を持ったとこなんか見た事もないし」
「聞いた所によると槍が急に現れるらしいぜ?しかも、形も様々なかtu......」
街に戻ってきた俺達はギルドに向かっていた。その道中に聞こえる様々な声は同業の冒険者達だろう。俺は特に気にする事なく足を前に進める。
「ねぇねぇ!何だかケントの話していない?何の話なんだろう?」
「五月蝿い小蝿どもだな、黙らせるか?」
「まぁまぁ、良いじゃないかちょっとくらい」
「良いじゃん!噂になってるて事は良い意味でも悪い意味でも注目されてるって事だし!」
「まぁ、ケントが言うなら良いんだが」
〜冒険者ギルド〜
「あ、皆さん!もうお戻りになったのですか?」
「おっす、ララ!今回の依頼完了したぞ!」
緑色の翡翠に輝く透き通った髪の毛の女の子ララ。この子も俺たちのパーティの1人だが基本的にはダンジョン探索やギルドの依頼には面倒臭いからと参加しない。そして
「ケント。流石の速さだな。」
「ただいまセイカ!留守番ありがとな!」
「次は私も行くからな...」
「そんなに拗ねんなって.....ジャンケンで負けたんだからしょうがないじゃん」
黒髪の長髪で剣士の様な姿をしたこの女性はセイカ。戦う事と冒険する事が何より好きで大人しく見えるが冷静な戦鬪狂で結構怖い。
依頼の完了報告を終え依頼料を受け取ると出立の準備を始める。この街にきて2週間、近くに大迷宮があると言うので依頼を含めて探索したがそろそろ次の街に行きたい気分だ。
「ケント、もう行くか?」
「え、もう?もう少し休憩したいんだけど...」
「確かに!それに、あのダンジョンもあと少しで到達できそうだし!」
「いや、これ以上「最奥」に到達し過ぎると監視しようとする力が増すから面倒なんだよな...。全く何処から情報仕入れてんだか」
愚痴をこぼしながら準備を終わらせる。と、いってもほぼ手荷物はなくセイカとララの支度を待ちギルドを後にする。
「あ、『魔の集い』の皆さん!先程はありがとうございました!急なお願いだったのに!」
受付嬢のポーラ。この街にきてから冒険者ギルドではいつもポーラが俺達の担当をしてくれていた。
実力はもちろんの事人間性的にも信頼してくれているので直々にギルドの依頼を頼んでくる事もある。今回のダンジョン探索もポーラからの依頼だった。
「いつも助かってますケントさん!」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ!」
「ところで、皆さんお揃いで何処か行かれるのですか??」
「あ、はい!もう街を出ようかと思いまして」
「え、え、?ええ!!ちょ、ちょっと待ってください!もう行かれるのですか!?」
ポーラは雷でも落ちたような表情で驚きその声はギルド中に響き渡った。賑わっていた雰囲気が一気に静かになる。そして間を開けて再び沈黙は破られる。
「驚きすぎだってポーラさん。俺らは世界を旅するのが目的だからギルドの依頼は基本日銭稼ぎ程度にしか考えてないって言ったんじゃん」
「そ、それはそうなのですが、、、」
何故か物凄く残念そうに俯くポーラ。まぁ、確かに次この街を訪れる事は無い可能性は非常に高い。
世界一周が目的なので旅の終わりは果てしない俺だって別れが悲しくない訳じゃないがこの世界の楽しさや好奇心が100倍勝っている。
「ケント!言い方!」
「そうだケント!そんな物言いではモテんぞ!」
後ろから援護射撃と言わんばかりにポーラを擁護する声があがる。しかし、俺はそれにも動じない。
「また、来る時があったら絶対ギルドには寄るからさ!そんな悲しいまないで下さいよ」
「多分、ケントさんは分かってないんですよね...コソコソ」
「あぁ、アイツは本当に鈍感だからな...コソコソ」
「ホントにそう!いつも私たちがどれだけ...コソコソ」
コソコソ話も全て本人まで聞こえているがそんな事はお構い無しにとアミット、ミティ、ポーラの女子談話は花を咲かせる。
「(好意に気付いてない訳じゃ無いんだけどな...でも鈍感って思われてた方が何かと都合いいし...)」
「おい、その辺にしてもう行くぞ」
「セイカの言う通りだよ、ララも準備終わったみたいだし」
シャオンとセイカが場を鎮めてくれる。このやり取りもこれで何回目だろうか。
最初は面白かったが正直のところ少し飽きて来てしまったというのが今の本音である。いや、嬉しいという気持ちも全然あるのだが。
「よし...。行くか!みんな!」
掛け声と共に全員がケントの傍に集まる。
「必ず...。必ずまた来てくださいね!ケントさん!」
「はい、ポーラさん!また!お元気で!いってきます!」
ギルドの扉を勢いよく開け俺たちは次の街に向かう。それは新たな冒険の始まりか、それとも。




