実況疾走伝説(仮)
学園内にある購買部の売店、生徒会室、職員室、プール、トレーニング・ジム、各寮、グラウンド、赤茶色で険しいダートコースに雑草まみれのターフコース。
「……大体は紹介しましたね。一応パンフレットを渡しておきますので、目的地へ行くのに迷ったら、メニューの地図で現在地を確認して下さい」
「次は学園の近くにある町へ、皆を案内するよん」
「設定上、夏休みに実家へ帰る事もあるからな。家族だったり、トレーナーの持ち家とかだと思ってくれていいんだぞっ」
「はぁ、寮の近くに実家か……」
「トレーナーは現実だと空き巣に入られてそうだなぁ」
三女神像と噴水を通りすぎ、正門をくぐると町並みが街路樹を挟んで見える。
「実家はそれぞれで確認して下さい」
「メジロ家もこじんまりとしているのですか?」
「新築ボロアパート、Wi-Fi完備、近くに銭湯とパチンコ店があるんだっ。メジロ家の財力にモノを言わせたらしい。スゴいなぁ、金持ちって」
「さらにその近くにはサトノの財力で、ゲーセンや映画館もあるよー。デートスポットには困らないんじゃない?」
「反対側には商店街もあります。アスリートのNPCにいる、ネイチャ様とハル様が有名人です。福引きで温泉旅行が当たる事もあります」
「ハルと仲良くなると、商店街の買い物でオマケが貰えるんだっ。コロッケとか、たこ焼きとか」
「……ハルさんはどうやって入学されたんです?」
「学生メンタリスト兼学園の財務を担ってます。つまり、職員であり学生という身分ですね」
まじしゃんず・あ〇でみいという小説でいう、準教師という立場だ。一定の権限があるとかないとか。
地方の財政難をたった一人で立て直した存在だ、面構えが違う。
「ちなみに低確率だけど、ひったくりやスリが出るから、出くわしたら逃げるんだぞ。ウチとの約束だっ」
「えぇ……」
その時、原チャリが職員やトレーナー一行の間を、ゆっくりと走り抜けていく。
「……ああいう原チャリや自転車も通りますので、商店街では注意して下さい」
「ひかれたら、死ぬほど痛いぞ!」
「病院はまだないから、保健室で目覚める事になってるからね」
「車も通りますから、注意して下さい」
そうこう言ってると、ブルボンへと軽トラが猛スピードで突っ込んでくる。
正面衝突して、軽トラのボディに包まれるブルボンだが、オートマトンなので無傷。
ミスリルやアダマンタイトが使われた骨格が、鉄やアルミニウムの合金に負ける訳にはいかないのだ!
「このような事故も起こります。ターボさん、トランさん、処理を頼みます」
「ターボに任せろっ!」
「あらほらさっさ~! ってね」
気絶している運転手をトランが引っ張り出して、ターボがランドメイ〇を呼び寄せ、車輌を抱えて走っていく。
「ひかれたら体力全損です。暗転して保健室で目覚めますが、所持金もゼロになります。お金は商店街でアルバイトしたり、学園のお手伝いをしたりすれば稼げます」
「所持金がゼロで倒れると、どうなりますか?」
「保険で賄いますが、最初だけですね。強盗に刺されたり、車にひかれたりしたらロストします。……一番危険な場所は海岸です」
職員やアスリート達を近くの海岸へと案内し、海の家に詰めているオムリンとその仲間達を紹介する。
「我が名はオムリン。この海の家は職場も兼ねた家だ。この殻を背負ったタコは、海に入る際の護衛になるヤツ等だぞ」
(よろしくー。聞こえてるかどうか知らんけど……)
触腕を振って挨拶するオムリンの仲間。
「タコだ」
「オムナイ〇っぽいタコだな」
「モデルはポケモ〇です。任天〇法務部をかわすべく、リアルなタコになりました」
「やっぱ強いのか、〇天堂法務部……」
海辺にオムリン達を率いて近付くと、ウォーター・カッターが海面を突き破って、ブルボンへと襲い掛かるも、オムリンが鎖を巻き付けた両腕で防ぐ。
その間に火星タコを手に取ったブルボンが、法螺貝の音マネをする。
「ブォオオオ! ブォオオオ! 状況開始します。オムリンは引き続きタンク、タコは遊撃、私は撹乱します。ロックオン、シュート!」
殻にこもったタコを海面へとシュート! 超! エキサイティング!
「ファイナル・カタストロフ!」
ウォーター・カッターや二枚貝の突撃を捌きつつ、オムリンが片方の鎖を振り回して仲間に巻き付けると、モーニング・スターのように振り回す。
「ふはは! まさに攻防一体!」
「震脚、震脚。……海割り!」
ブルボンが気功を溜め、オートマトンの脚力と気功を合わせた蹴りを放つと、海が数秒ほど割れた。浅い海底が見えるし、二枚貝の集団が分断されたのが分かる。
「極小版、摩訶鉢特〇!」
「えぇ……?!」
ブルボンが氷結魔法で海を中まで凍り付かせると、海が割れたままになった。
いや、その技、そういう使い方じゃないんですけど? 等と思ったトレーナーがいたものの、ツッコミはない。
「状況中断。即時退却します。オムリン達は殿を頼みます」
「任せてくれ! いくぞ、みんな!」
(ヒャッハー!)
オムリンと火星タコが暴れる最中、ブルボンはトレーナー達を率いて海の家へと戻る。
「こんな感じで、大変危険です。シャコパンチを食らえば車が大破、ウォーター・カッターを食らえば真っ二つ。ウォーター・ジェットによる二枚貝の突撃は、頭部がスイカのように破裂します」
「タコ達は大丈夫なんですか?」
「殻と触腕を使って対処します。触腕がケガしたり、自切してもまた生えるので、たこ焼きの具材にもなってます」
護衛の手足を喰うのか。と、皆がドン引きする。
「釣りをして、魚を釣り上げると反撃してきますので、護衛は必須です。ちなみに、釣りで最初の一匹は護衛の駄賃となりますが、二匹目以降は高額で買い取りされます。あんな魚や貝なので、寿司や刺身は高級料理となっています」
「坊主だったり、途中で力尽きた場合は?」
「護衛が勝手に仕止めて食べます。力尽きたら保健室へ直行しますね」
「……護衛に取ってきてもらうのは?」
「全部食べられます。釣り以外でも自分の駄賃は稼ぎますので、追加料金や延長料金は発生しません」
「タコとの意志疎通はどうするのですか?」
「タブレット端末による筆談となります。こちらの声は理解するので、タコにタブレット端末を渡せば、返事が返ってきます」
「ゲームなんですよね?」
「おや、ハンター語とアイ〇ー語がお分かりになられるのですか? 素晴らしい特技です。翻訳や通訳のアルバイトを手配しておきましょう」
「いえ、出来ません……」
「そうですか、残念でございます」
帰ってきたオムリン達へ、タブレット端末を召喚して手渡す。
「小型化と防水加工、撥水性もあります。殻に入る大きさです」
「おぉ、タブレットか。通話とかは?」
「メール機能だけです。充電はマイクロ・ウェーブによる非接触タイプですね。海辺にいれば勝手に充電します」
「なるほど~」(くノ一の影分身にもメールが送れる?)
(可能ですが、メールの文章だけですね)「カメラ機能とかも排除してます」
「自撮りはムリだってさー」
(モジモジ君ごっこは無駄かー)
(顔文字は分かるが、ギャル文字はちょっと……)
(読みにくいよねー。どうやって作ったのかもわからん)
「ちなみに護衛のタコを町に連れていく場合は、たらいが必要です。海洋生物なので、エラ呼吸が出来なくなると、海の家に転送されてしまいます」
「それは職質とかされませんか?」
「ゲームですから、警察もタコの強さを知ってます」




