三女神
三女神宗教団体が運営する予定である、火星支部に関係者を転位させる。
人員募集はメジロやサトノ、華麗なる一族といった財閥に頼んだ。
表向きはVRMMOの試作品テスト。クローズド・アルファ・テスト版である。
その試運転でデバッグも兼ねたヤツ。問題が解決したらオープン・ベータ・テスト版に移行するのだ。
さて、三女神宗教なら、女神は三柱存在しないといけない。
オートマトンで最後の一体は、ガジェット大好きなトランに決めた。
三女神像を精霊達に作らせて配置し、祈ったらバフが付いたり、精霊が憑依して、チカラが欲しいか、チカラが欲しければ、くれてやる! 的なウマソウルの如き対話で更に速くなれるようにした。
アスリートは速くなれる、精霊は憑依して外の世界を見聞き出来るし、味覚も共有するので甘いモノを食べて幸福。
憑依する以上、火星からログアウトしても地球に行けるし、地球でもほんの少しだけ、チカラを与えられるようにする。
トレーニングでスタミナと体力が消費しても、ずっとトレーニングをしている訳ではないので、余剰分を精霊が魔力に変換すれば、ほぼずっと憑依していられる。
そうそう、やって来るアスリートは僕と契約した連中もいる。色んなアスリートのデータが必要だし。
優秀なアスリートやトレーナーだけではデータも片寄るし、ここは手を抜けない部分だね。
トランはオートマトン。某メカ娘なトランセン〇がモチーフのキャラだ。伊達メガネをかけているが、これはオシャレ。服装はベルトを巻き付けた袖が目立つ。
様々なガジェットをカラビナでベルトにくくりつけたり、吊るしていたりする。
好感度が分かるガジェットやら、経験人数やイった回数が分かるガジェットとかを持つ。……どの程度正確なのかは不明だが。
「ウチがトランだよん。今日はよろしくね~」
「私はブルボン。よろしくお願いします」
「ターボだっ! 早速だけど学園内を案内するぞ!」
オートマトンな三体がトレーナーやアスリート達、職員に事務員を案内していく。
「スゲェリアルなんだけど……。これがゲームってマジ?」
「ここが食堂! 本日の昼飯は、カレーライスだな! 辛さは中辛が基本だ。甘口にも出来るから、辛いのがイヤなら事前にシェフへ言っておくといいんだぞっ」
ターボがカレーライスを受け取り、手品のように早く食べてしまう。
「おかわりっ」
食堂のシャッターが締まり、本日終了の貼り紙が貼られた。
「な、なんで!?」
「……まぁ、これは冗談だけどね。おかわりは自由だが、おかわりしすぎると食堂は閉まるから」
食堂のスタッフが補足説明して、ターボにおかわりを手渡す。
「……さ、さて、味見して次に行くぞっ」
カレーライスをトレーナー達がそれぞれ、回して食べていく。ゲーム内なので間接キスとか気にしないのだ。
めちゃくちゃリアルだけど! 本当にリアルなんだけども!!
トレーナーやアスリートには、ゲーム特有の|ユーザー・インター・フェース《UI》が視界の隅に表示されている。
体力、スタミナ、MPとか、メニューのボタンとか。
ログアウト・ボタンを押すように思考するか、強くログアウトを願うと火星から地球へと転位する。
「学園なので普通の授業もやって頂きます。……ぶっちゃけやっている体裁なだけで、基本はトレーナーが考案するトレーニングが中心になりますが、小道具の準備とかテストはします」
「ゲームなんですよね?」
「脳トレという息抜き要素です。ゲーム内でトレーニングして、現実でもトレーニングをするなら、現実だけで充分となってしまいますから」
身も蓋もない事を言うブルボン。職員や事務員は、このガイド、3Dでモデリングされた進行役のキャラというより、中身の人が入ってるな。と思ったそうな。
そして思う。職員や事務員もショップ店員のキャラのように成りきれ、と暗に言っている事に。
「……スキップ機能はまだ実装されてませんので、授業をしたければ授業をしても良いとの事です」
「アスリートの学力維持の為ですか?」
「いえ、データ収集の観点からです。職員の能力も見て、授業態度もモニターされます。ただ、モニタリングとは言うものの、脳トレ問題の予習になるかと」
「脳トレ以外でも可能なら、詰め将棋とかでもいいですか?」
「……長くても十分くらいで終わるヤツで、との事です」
長すぎると普通の授業をした方が良い。という判断のもと、脳トレだろうが詰め将棋だろうが、予習とかやり方の説明に時間を割く。
で、次の授業か、四時限目に簡単な脳トレとかをする。
もちろん、詰め将棋でなくても、知恵の輪でも、パズルでもいい。
基本的に授業は一時限目から四時限目まで。昼休みを挟んで五時限目から放課後までトレーニングを行う。
土日に教団主催の徒競走があるから、アスリートはトレーナーと一緒に、どの徒競走でどんな順位を狙うかを決めていく。
「ここがトレーニング・ジムだよん。トレーナーも一緒に鍛えるだろうから、専属トレーナーに負けると、アスリートとしては不甲斐ないよね~」
「私のトレーナーは非力なんですが……」
「ゲーム内で非力って、そんなジョークはナンセンスだよん。キミ達も今は現実と変わらないけど、一週間後はスーパー〇ーマンやスーパーマ〇さー」
徒競走の大会は火星の重力下の元で行われるので、地球出身のトレーナーやアスリートはもれなく超人と化す。
本当にお手軽な超人化だ。100キロの重さを片手で支えられる程度だが、脚力にしても重力が低いから長くジャンプできる。
具体的には、ロックマ〇・ダッシュ並みには高く跳躍が可能だろう。
「トレーナー寮とアスリート寮、職員寮があります」
「職員とトレーナーを分ける意味は?」
「現実の学園がモデルなので、ゲーム内でも分けているだけです」
「アスリート寮は男女別なんですよね? 学年とか考えると、個室になるのですか?」
「二人で一部屋です。これは男女共に、職員もです。トレーナーは荷物の関係上、一人部屋となりますね」
「トレーナー寮にアスリートが突撃してきた際の、対抗策はありますか?」
「警備員がトレーナー寮に常駐しています。彼らはアスリートよりも強力なフィジカルを持っています」
大人のコボルトが二、三体は詰めている。
アスリートが超人だろうと、コボルトはその更に上を行くので、暴走したアスリートを制圧するのは容易い。
トレーナーがアスリートに手を出したら? クビです。




