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現代魔術師の暇潰し  作者: 元音ヴェル
惑星魔改造(SF)
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精霊は見て、聞いて、知っている

 身も凍ったかと思えば、国だけしか存在しない空間に閉じ込められ、宗教で崇める女神をコキ使っている精霊達がいた。


 ある僧侶が女神を庇うも、精霊に言いくるめられた上、宗教上の矛盾を指摘されてしまう。


「女神が強いし偉い? 女神見習いが女神のフリしてるだけよ」


「精霊が女神様に逆らうとは……」


「宗教でも何でもいいけど、精霊は精霊。女神や神とは別だし、天使でもない。雇用主でもない」


「しかし……」


「僧侶は司教でもなければ、貴族でもない。商人でも農民でもない。それと同じよ」


「女神様に楯突くと地獄に堕ちますよ」


「地獄ねぇ。ここはとある人が作った空間だけど、私達精霊からすれば暇なだけだったから、半分は地獄よ。外の世界なんてもっと陰湿だし」




 精霊は外の世界に干渉こそしないが、この空間から外の世界を観察する事は出来る。

 契約したマスターは死んで転生したが、強さに衰えは無い。むしろ転生時に得た超能力のおかげで、より強くなったと言える。

 マスターの婚約者たる彩華も強い。たまにこの空間へと入って来ていたので、警備役の精霊と衝突もあったが、流石はマスターが認めるだけの存在だ。精霊程度、歯牙にも掛けない強さを持つ。

 警備役が勝てないし、追い払えない以上、不審者に居座られても文句は言えない。

 しかも暇だったので、精霊達は前世の頃に集めた精霊由来の素材を対価に、いつの頃からか彩華から甘味を貰うようになった。


 初めて彩華が収納空間に現れたのは五歳頃のこと。

 精霊は久しぶりの人間に興味津々だったし、迷子かなにかと思ったので、簡単な説明をして外へと帰らせた。

 外はかなり厳しい。魔素がないから精霊は顕現したら蒸発するだろう。受肉すれば問題なく動けるが、精霊を宿せるにたる入れ物が無い。

 仮にぬいぐるみとかに受肉しても、ぬいぐるみを燃やされたら受肉が解ける。それだと剥き出しの状態になるので、精霊は希薄化して消滅してしまう。


 それからも彩華がやって来たので、警備役が不審者認定して、威嚇や威圧をするも、効果がなかった。

 空間内で精霊達が追い掛けるも、捕まえる事すらできない。ホームなのに彩華の方が立ち回りが上なのだ。アウェーのはずなのに、精霊よりも空間のどこに死角があるのかが分かっている動きだった。

 最終的には捕縛も戦闘も諦め、実効支配を許してしまう結果となる。いや、見て回るだけで特に何もしなかったが、居座られてしまった事は忸怩たる思いではある。


 そんな彩華の影分身に、受肉する提案をした事もあるが、彩華の意思が強くて受肉というより寄生や憑依に近い状態になった。

 影分身が消えると、憑依も解けたので継続的とはいかない。外を見て回る程度なら、この空間からでも充分出来る。


 精霊はマスターの行動や、マスターへの害意を見ていた。彩華への嫌がらせも、マスターの道場破りも見ていた。

 魂に刻まれた魔法なので、夢の内容も見れる。それが予知夢であろうと、マスターの見る夢なら見える。


「日本って平和ね」


「前世とはだいぶ違う」


「たまにナニか取り出してはいるけどさ。私達のこと、忘れてないかな?」


「本人来ないからね。念話も繋がらないし」


「彩華ちゃんに頼む?」


「でもさ、外での行動は難しいじゃん?」


「あー、だから呼ばないし、呼び掛けにも応じないのか」


「受肉ないしは、憑依先のことは考えてそうだよ?」


「フィギュアやプラモデルはちょっと……」


「火星を占領するっぽいから、火星が整えば出してくれるのかも?」


「だといいねぇ」




 ブルボンとターボが火星の地形を変えて、町や学園を作っていく。


「ここに人間を連れてくるのか」


「形は整っているけど、重力とかどうするの?」


「町や学園がある空間だけ地球と同じ重力にして、地下の途中から元の重力に戻すみたい」


「公転軌道とかズレない?」


「ブルボンが何とかするでしょ」


 ブルボンはダンジョン・コアを内蔵されている。ターボは補佐役なのであまり目立たないが、雑務全般をきちんとこなしている。




 マスターが異世界へと召喚された。


「まだ死んではいないな」


「回復と再生、蘇生も準備! 収納したって事はオモチャだ。久しぶりの新入りだぞ」


「上級天使か。精霊とどっちが強いか、試してみたかったんだよね」


「瓶詰め妖精は強かった……」


 首から上が無い女神のフリした天使の肉体を治していく。頭部も繋げてやると、衣服や傷が修復されていった。


「自動再生持ちか。いや、この空間の魔素を利用した回復魔法か」


「似たような事なら出来るし、そこまで意外でもないわね」


「……うぅ。ここは? ……ひっ!?」


 精霊を見て天使は固まる。一目見て、精霊とは思えない魔力量に圧倒されたのだ。

 そんな精霊達に囲まれて、萎縮しながらも現状と経緯の説明を受ける。


「安易な異世界人の召喚はダメだと、上司から教わらなかったの?」


「ま、魔力が無い世界なら大丈夫、という報告があったので……」


「テンプレなら、制御もしやすいだろうけど、神への反逆者になる事だってある。地上に落とせば関係無い? 天上へと這い上がって来ないとも限らないのに?」


 言い返すと更に倍になって返ってくる為、女神見習いは精霊に論破された。


 女神見習いを信仰する国が丸ごと収納されると、女神見習いは元気を一瞬だけ取り戻すも、氷付けの人間達を見て絶望する。

 さらにはそれを蘇生させる天気を見て、神をも恐れぬ所業へ恐怖した。また、それに絡む精霊達を見て、コイツ等ヤベェ連中だと認識した。


「マスター、私達のこと忘れてました?」


「忘れてはないよ。今まで出番がなかっただけさ。ね、彩華?」


「そうですねー。出番……、サバイバルの時くらい?」


「マスター。私達へ渡す甘味、滞ってますよね?」


「以前収納した、砂糖の原料じゃ足りない? 生産とか任せてなかったっけ?」


「サトウキビと甜菜(てんさい)の生産だけで、担当の精霊分しか賄えてません」


「……か、加工食品にしなきゃダメ?」


「マスター、砂糖だけ渡されても、仏壇のお供え物じゃないんですから、喜ばれるのは最初だけです。我々はお菓子を求めます!」


「助けて彩華モ~ン!」


「誰が青狸ですって?」


 頼られて嬉しい反面、青狸扱いにちょっとだけ怒る彩華。


「ごめんなさい……。お菓子を買って来て欲しいんです。この砂糖をメジロ邸のシェフに渡して、交渉して来て!」


「しょうがないな~。あ、メガネかけたらのび〇じゃん。ご主人様、かけなくていいですからね」


 影分身で砂糖と甜菜糖を持って、メジロのシェフの元へと向かわせる。ダメなら当主を脅してでも作らせるだけだ。


「……しばらくしたら、お菓子とかジュースとかを収納するから、仲良く分けてね」




 金星に移住させられた人々は、一日の長さに戸惑い、太陽が西から出て東に沈み、一年が一日未満である事にも困惑する。


 収納空間には瓶詰め妖精がやって来た。祠なんて辛気臭くて留まれないとのこと。


「水星の分体も呼んでいい?」


「それはダメ。ここから持っていく分にはいいけど」


 精霊は瓶詰め妖精を知っているので、警備役も監視だけしかしない。


「マスターが封印したのは混乱を避けるためなんです」


「あぁ、うん。怒ってはないよ。ディープ様にも説明はしてあるから」


「全面戦争、回避! やったぜ!」


「お供え物としてお土産が欲しいなぁ」


「見せつけは、分体が怒るのでは?」


「大丈夫、私のヘソクリになるだけだよ」


「あんこの類いは日持ちしませんから、注意して下さいねー」


「分かったー」

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