鉄壁スカート
転校先でも天気と彩華は一緒に登校している。
天気の住む場所もきちんと確保されている間取りで、天気の部屋があるのだが、まだ彩華の部屋で一緒に寝ている。
天気が転校する事に、天気の両親を彩華の両親が説得した。元気ならそれでいい放任教育なので、学費や生活費を払って、天気は新しい久野家で生活している。
転校手続きは天気の母親がした。天気は手間をかけさせるな、と怒られた。
「お義母さん、お義父さんと呼んでいいからネ」
「呼べるように頑張ります……」
「もっとフランクにしていいよー。保育園から面倒を見てるんだから。……主にママーが」
「おじ……お義父さんも運転とかしてくれてますよ」
「ありがとー。息子ヨ」
制服を一新した、といっても改造メイド風だが、彩華が二人分のランドセルを持ってくる。
「行きましょう」
「そうだね。行ってきます」
「イってらー。あぁ、私も仕事に行ってきます」
「お父さん、行ってらっしゃい。戸締りしてから私も出ます。鍵のありかは前と一緒ですからね」
「わかりましタ。ピザ食う亀のフィギュアの下の鉢植えネ」
新しい家は庭付き一戸建て。粘土工作で作ったソレっぽいフィギュアが、案山子のように花壇や鉢植えに突き刺さっている。
本物ではないので、盗難に合う可能性は低い。もし盗られたり、壊れたりしても、もう一度自作すればいいし。
彩華のお義父さんは、プラスチックや樹脂で造られたフィギュアと、粘土細工の人形を区別するのが面倒なので、まとめてフィギュアと呼んでいるにすぎない。
新しい小学校にも慣れた頃、彩華がハーフである事をからかう男子児童が現れる。
単一民族国家にとって、ハーフや外国人の子は物珍しい。
同じ日本人でも色黒だと目立つ。
西欧の白人からすれば、平たい顔族が鬱陶しい。なんて愚痴もある。
さらに、小学校低学年だと、スカートめくりをする男子児童も出てくる。
一年生や二年生に多い。流石に三年生以降はしなくなる。リアルで犯罪だし、小学生といえど、児童がやった犯罪行為の責任は、保護者たる親が負う。
親が責任を負う事を拒否すれば、最終的には少年院送りにもなる。
ちなみに少年院は、二十四時間学習する施設なので、学習する事以外は禁止されている。
具体的には自慰行為がある。見つかったら反省文と監視付きの反省部屋送りらしい。か〇え先生がようつべでそんな配信をしていた。
「どうしてそんなに、パンツが見たいのかな?」
「彩華は赤毛で色白、女子からも人気だからだよ」
「美少女だから、パンツも気合い入ってると思うのか」
「黙ってればね。……待って、イスはヤバいって!」
「振り下ろされたくなかったら、四つん、ヨツンヴァインになりなさい」
「わ、わかったよ」
「ヒソヒソ。また夫婦漫才してる」
「ヒソヒソ。世羅君がまた尻に敷かれてるわ」
「ヒソヒソ。彩華ちゃんの家に下宿してるから、逆らえないって本当なのね」
「ヒソヒソ。たぶん、家でも自由はないわよ。アレでは」
四つん這いになった天気の背中に、横座りする彩華。
周りから目立ちまくりであるが、絡む勇者はいない。
少し前はスカートをめくる男子もいたが、彩華のスカートは鉄壁でめくれなかった。
ガードが硬いのではなく、文字通りの鉄壁。風でなびくし、彩華自身や天気が触るとなびくが、何故か他の男子が触ると硬くなり、布地が重くて持ち上がらない。
天気が触ったら動くし、他の女子が触れても動く。
箒の柄を使っても動かないが、彩華が柄に跨がるとかは普通に出来る。
ちなみに、パンツの色とかを天気は知っている。夏場の風呂上がりでは短パンすら履かないで、リビングや部屋で過ごす事が多い。
いわゆる半裸族だ。裸族はスッポンポンなので、来客があると毛布にくるまって震えて嵐が去るのを待つが、半裸族はちゃんと服を着る。少なくとも彩華は着る派だ。逆に脱ぐ派もいるとか。
天気は服を着ている事が多いものの、夏は暑いので、海パンや小学校の水着で過ごす事もある。どこの浦安かな?
「黙ってなくても私は美少女よ」
「自分で言ったらダメだと思うなぁ。……腕を踵で蹴らないで!」
「このダメ犬! メイドに口答えするなんて、シツケなきゃ飼い主を噛むだけでなく、よその人も噛みつくんでしょ」
「定規で尻を叩かないで。なんか変になるから」
「ヒソヒソ。調教してるわ」
「ヒソヒソ。私達は何を見せられてるのかしら?」
「ヒソヒソ。メイドじゃなくて女王様よ、アレ」
「ヒソヒソ。定規がムチ変わりよ」
関わったらヤバそう。という女子グループと、男子を手のひらで転がす事に共感する女子が数名。また、男子グループの一部は羨ましそうな目で、天気を見ている。
超エキサイティングな昼休み時間だった。
チャイムが鳴ると、彩華は天気から降りて、掃除道具を片手に影分身し、学校中へ散らばる。
掃除時間となったので、解放された天気もトイレ掃除に向かう。
「あの、なんで男子トイレにもいるの?」
「メイドだから」
「そ、そっか」
「ご主人様の仕事、ないから」
天気は別の場所を掃除しに向かうも、そこにも彩華がいた。
「アンタらの仕事ねーから」
「お、おう」
「彩華、ゴミ袋持つよ」
「触らないで、メイドたるもの重いゴミくらい持てるわ。邪魔よご主人様、どきなさい」
「ヒソヒソ。かかあ天下よ」
「ヒソヒソ。メイド天下よ。亭主元気で留守がいいのよ」
天気は軽くため息を吐き、教室に帰る。
放課後、天気は彩華を肩車して下校する。
グラウンドを横切る途中で、サッカーボールが転がって来たので、練習場所に蹴り返す。
「あの子、女の子を肩車しながら、正確に蹴り返したぞ」
「お前、出来るか?」
「出来る訳ねーだろ! 女の子傾いてすらいなかったし」
今度はソフトボールが、彩華に当たりそうなコースだったので、ジャンプしてランドセルで受ける。バウンドしたのを彩華が投げ返す。
「レーザー送球……」
「腕だけで、しかもソフトボールで……」
硬式が野球ボール、軟式がソフトボール。硬式より大きい。ピッチャーが投げる時、変化球としてはチェンジ・アップが多い。頑張ればスライダーも投げられるが、デカいし縫い目もほとんど形だけなので、握力を消耗するから続かない。
中身に鉄球が入ってるモノもあるので、当たると結構痛い。
硬式のデッド・ボールを頭部にくらうと、最悪死ぬのはマンガで有名だ。
「横切るのは、早いけど面倒な時があるよね」
「タブレットは無事?」
「防御魔法掛けてたから、大丈夫だよ」
学校支給の安いタブレットがあるのだが、コロナ禍や第五類への移行で、たまにしか使わない。
定期的にクラス全部のタブレットを回収して、教師や事務員が中身をチェックして、電話帳とメール、レイン以外をアンインストールしているらしい。
つまり、ゲームアプリは消されるのだ。タブレットを配る際に、親が契約書にサインしているので、児童に拒否権はない。
「そう言えば、部活入らないの?」
「実親が金を出すと思う?」
「ウチのお父さんが出してくれるわよ。息子とキャッチボールしたいらしいし」
「そこまで甘えるのは、流石に……」
「天気のカッコいいとこ見てみたいなぁ」
「うー。……彩華が部活するなら」
「そう? なら、部活動の見学をしましょう」
「お義母さんも説得しなきゃね」
ま、見学とか体験入部程度なら、金は掛からないからいいか。と、天気は思った。
ちなみに田舎だと、同調圧力で部活は強制参加する。嫌でも途中退部は出来ない。それまでの道具代や部活代が勿体ないからと、親は言うし。
今は知らないが、田舎の小学校ではソフトボールに女子も男子に混じって参加していたし、大会にも出ていた。
あと、放課後に女子の家へ遊びに行ったら、自分の家だからか突然スカートを脱いで、下はパンツのみで男子の前に座る。そのままポテチを食べたりしていた。
小学四年生の頃で、初めて遊びにいった女子の家だった事。ビビって早めに帰った作者はヘタレと言われても仕方ないが、学校では同じクラスだっただけで、それまで家へ遊びに行く事もなかった相手だ。自宅でくつろぐのは当然だが、もう少し恥じらいとかを気にして欲しかった。




