極秘ファイル
ブルボンの法螺貝(?)を聞いて、道中のコボルト達が戦闘体勢に入る。
「狼人間? いや、獣の姿をした人間?」
「彼らはコボルトというモンスターです。私はオートあマトンのブルボン。ウマの獣人を模して造られた錬金魔法生物です」
NASAの職員の声が聞こえた訳ではないが、ブルボンはコボルト達を簡単に紹介する。
「異世界のモンスターと言った方が早いでしょうか。あぁ、オムリン達火星タコは違います。マスターが輸入したタコやイカが進化した存在です。念話という、思念伝達で会話をするので、常人では会話ができません。超能力者なる存在だったら、テレパシーとやらで会話が可能と聞いております」
「そんなムチャな……」
「右手をご覧下さい。あの緑色のモンスターはゴブリンです。ちょっと遠いでしょうか? まぁ、死体でも持ってきましょう。ブォオオオ! ブォオオオ!」
「戦闘開始! ぶっ殺せ!」
「メェエエエ! モフモフ・タックル!」
羊のコボルトが、側頭部の丸まった角でベッド・スライディングしつつ、ゴブリンをひく。
(タックルじゃねえ、頭突きやん!)
パンチといいながらキックするレベルの、ギャグ攻撃にツッコミを入れるオムリン。
「止めピッ!」
ウサギのコボルトがラビット・フットで仕留めると、五秒後に爆散した。ミッション・インポッシ〇ルのイ〇サンもニッコリ。
ゴブリンが跡形もなくなってしまい、ウサギのコボルトは、しまった! という表情をする。
「…………さて、こちらにゴブリン・ジェネラルのサンドバッグがあります」
スルーして歩き続け、ゴブリン・ジェネラルが吊り下げられた、鉄柱へと案内するブルボン。
ウサギ? チケゾーが羊のコボルトとともに正座させて、説教している。濁音まみれなので怖くないが、とてもうるさい。フンギャロー!
「この面を見かけたら、サイクロプスは逃げて下さい。コボルトかオムリンの仲間を捜して、擦り付けてでも離れて下さい」
「え。モンスター・プレイヤー・キラーとか、トレインありなの?!」
ネトゲしている職員が呟く。
「戦っても数の暴力で負けます」
ゴブリンの生態を説明し、魔石を見せる。解体ショーに職員はダウン。
狩りゲーに慣れている職員も青い顔をしている。
「マスターと、マスターの奥様の影分身が近くにいます。……ついでにオムリン達の生態と、コボルトの生態も説明致しますね」
ある程度簡単な説明が終わると、擬人化魔法薬を手渡す。
(不思議な薬飲まされて~。はいっ!)「我がオムリン。人間モードだ!」
「オムリンのお嬢様、バスローブでございます」
「ありがとう、くノ一の影分身」
水色の肌な裸体を素早くバスローブで包み、リュックサックを背負うオムリン。
影分身はメイド・ムーヴが出来て満足げのようだ。仮面を着けているが、オムリンと天気の影分身は雰囲気で分かる。
天気の影分身と彩華の影分身は、光学迷彩で姿を隠していることが多い。が、メイド・ムーヴをしたり、農作業や土木作業をする際には、キツネのお面をして現れる。
ついでなので、オムリンの擬人化を紹介していく。
「アレが現在の拠点です」
その後、プレハブ小屋に外付けの調理場、貯水槽、薪置き場等が見えてくる。
「劣化していない。磁力が弱いから紫外線とかが強烈なはず……」
「充分な大気と海を形成する水分があれば、大気圧が安定してオゾン層ができます。大気圧の影響で気温も上昇しますが、地下の氷は陸地に吸水されて地下水となります」
海もなかった頃の火星は、夜になるとマイナス100度、日中でも0度が平均値となる。そこへ大気と海を足した結果、マイナス70度と20度が平均値となった。
普通なら植物が枯れるのだが、異世界の大気や海には魔力や魔素が含まれているので、それを取り込んだ植物は環境に適応し始めることがある。
最初のジャガイモは不作だったが、埋める種芋に植物魔法をかけて成長を促し、種芋を増やしていくと土地と魔力に馴染んだのか、一ヶ月での収穫が可能となった。
魔力の消費や魔素の吸収が多く、大気と海の魔素量や魔力量が減るかと思ったが、生物が多ければ多いほど、余剰の体力とかも多くなる。
ゴブリンなんて増えても死んでもいい、都合のいい害獣もいるし。
磁力線が地球より弱くて紫外線とかが多く降り注ぐも、これも大気に魔素や魔力を含んでいるからか、うまく反射したりしているようだ。
「近づいたら始末されます。サイクロプスがスクラップに、または人工衛星が破壊されたくなければ、不用意に近づかないことです」
「……わ、わかった」
「あぁ、天候ならこの辺りは晴れが三日間続き、一日だけ雨が降るというサイクルです。農場以外は夏は暑く、冬は海すら凍ります」
「えぇ……。天候まで操れるのかよ」
「ナニ言ってる。魔術師の影分身もくノ一の影分身も、冬将軍をワンパンするんだぞ」
「冬将軍……? 寒冷前線とかを殴る? ハハッ、ナイス・ジョーク!」
「ブルボン、サイクロプスが壊れた」
「どちらかと言うと、サイクロプスの中の人達ですね」
NASAの指令室を中の人呼ばわりするブルボン。
そんなこと言ってるけどオートマトンじゃなくて、サイボーグとかバイオロイドだったりしない? 自律モードだと結構人間味あるよ君。
(お、こんな時間か。ブルボン、コボルトの子供達が来るよ。上映会の準備をしよう)
「了解しました、マスター。これより、オペレーション・友達を準備します。オムリン、子供達を席へ案内して下さい」
「今日はナニ見るんだ?」
「スレイヤー〇です。一期を最後まで見せます」
軽食の準備と配膳は彩華が終わらせている。
「サイクロプスも見ていって下さい。日本語でいいでしょうか? 英語翻訳もできますよ」
日本語、英語、コボルト語、オムリン達への思念伝達。やることが、やることが多い。でもブルボンはやり遂げる。オートマトンは伊達じゃない!
SAN値直葬されたNASAは、火星の実態をXファ〇ルに指定した。
我々のマーズ2号は、いまだ宇宙空間を移動中である。ナニもアクシデントはなかった。いいね?
オムリン達火星タコはファンタジーな存在めいているが、正当? いや、強制的進化なので世界の認識も誤魔化せれない。
コボルトとゴブリンも半分はファンタジー、もう半分は現実的な存在なので、記録にも残る。
ブルボンは記録から消える。世界の認識改変によって、とある格付け番組のように、映らなくなる処置を施されてしまうのだ。
コボルトやゴブリンもそっくりさんなイメージとして記録には残る。漠然としているのは半分はファンタジーなのでその補正だ。




