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現代魔術師の暇潰し  作者: 元音ヴェル
惑星魔改造(SF)
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将軍の敗北

 泥将軍は手強い。コボルトの掘る穴を伝って、湿気が降りてくる。

 いくらでも掘れるが、いくらでも壁が崩れてくる。

 鉄パイプを通して坑道全体を(ねっ)し、換気しつつ湿気を押し出す。ドライヤーのドライで、湿気を吹き飛ばすように。


 将軍は粘り強い。天候であり、季節でもあるから当然だ。

 冬、泥、雨、夏と将軍は入れ替わる。

 夏将軍は天気に阻まれた。

 冬将軍は彩華がワンパンで何度も散った。

 泥将軍は、ブルボンがもたらした魔道具の前に乾いた。

 残るは雨将軍。火星の梅雨前線や台風。


 天気や彩華ならどうにでも出来るが、これはコボルトの試練。

 大工、建築士、採掘師、鍛冶師、養鶏、農夫、防衛班、偵察班、薬師、狩人、採集班、子供達も含めた全員が力を合わせて乗り越える必要がある。


 オムリン達火星タコは、半ば庇護下に入っている。地球から連れて来られた上に、時間加速で進化を強制されたのだ。

 知恵も知能も無かったのに、進化して文化を築いた。魔道具によって陸上にも遠征出来る。

 だが、基本的には海で過ごす海洋生物。季節や天候の影響はあるが、陸上よりはマシな場合が多い。

 海が凍りついても、海底火山が噴火しても、オムリン達は潮の流れに乗って素早く離脱出来る。

 まぁ、凍結から逃げ切れるかどうかは運も絡むが、絶食が続いても、殻にこもって冬眠し、春まで乗り切れる。


 オムリンと違い、ゴブリンやコボルトは異世界のモンスター。勝手に進化したり、異常個体や突然変異の個体が生まれたりする。

 または本人達の努力次第で、職種に応じたステータス・ボーナスも発生する。

 鍛冶師なら火耐性が付いたり、大工なら加工や建築速度が上がる。


 ゴブリン・リーダーは、ホブ・ゴブリン相当の職種と指揮ボーナスがあった。

 ハイゴブリンという、ゴブリンの上位種が生まれる事もあった。

 冬将軍に始末されたので、今は普通のゴブリンのみだが。

 ゴブリン・ジェネラルも生まれたが、よりによって天気の農場を襲った為、ブルボンとオムリン達のサンドバッグにされてしまう。

 再生能力持ちだが、欠損部位まで再生はしない。手足をもがれて、鎖で巻き上げて鉄柱に吊るされている。

 ジェネラルともなると、魔力さえあれば生きられるので、単為生殖で増えて、赤子に自分を食べさせての成長を促す事も出来るが、ブルボンがそれを許す訳もない。

 孕んだまま内部で成長させるケースもあるので、定期的に胃腸や子宮まで届く攻撃をする必要があった。


 今回、ジェネラルの生け捕りにより、分かった事がある。

 子宮を取り除いても、性転換すると前立腺ができ、前立腺や膀胱を取っても、再び性転換したら元通りになったのだ。おそらく、魔力や周りの肉を集めているのだろう。

 また、魔石も肝臓や腎臓に予備のモノが作られる。摘出しても性転換すれば、臓器ごと魔石が作られた。

 周辺の魔力や魔素量が減るので、無限には取れないが、天気やコボルト達の余剰体力や魔力があるうちは、大気の魔力や魔素は補充される様子。

 いざというときは、吊り上げたジェネラルの足元に焚き火とか、電熱を発するコイルやら鉄板でもおいて、炙り続ければ赤子も成長しないだろう。ケガを治す親、親から養分をもらって成長する赤子、同人ゲームとかだと妊娠は病気の一種ともされている。

 言葉は悪いが、早い話が寄生虫だ。寄生虫を殺すには養分を与えないようにすることが重要。毒だと耐性をつけるので、赤子までじっくり火を通すような仕掛けがいる。

 赤子を殺しても母体を殺さない程度の手加減とかもいるか。

 電極を腹に突き刺して、水車による発電の電熱で焼き続ける方が楽か?

 赤子のうちは魔石も発生しない。成体のゴブリンだけだ。

 最悪の場合はジェネラルを始末して、別のゴブリンを、ゴブリン・チャンピオンとか、ゴブリン・キングとかを生け捕りにすればいい。


 魔力が足りない時は、ブルボンに埋め込んだダンジョン・コアで、ゴブリンの死体を魔素や魔力に変換すればいい。

 純粋なエネルギーに置き換えると、人間やゴブリンでもかなりのエネルギーになる。

 生きた人間がエネルギーに変換されれば天文学的数値となり、光に変換して闇に撃ち込めば、最古最強のアウターだって打ち払えるのだから。

 死んでるとはいえど、ゴブリンも相当なエネルギーになるだろう。

 ちなみに、魔素や魔力はモンスターに取り込まれながら魔石に置き換わり、使うと中身が無くなるだけ。魔石は魔力が空っぽになると透明度が高い石ころになる。地球でいうとその辺の砂利にまじっている白い石程度の価値だ。

 ただ、魔石の生産量が限界を迎えると、ゴブリンは魔石を持たず、大気と海、陸上から魔力や魔素がなくなってしまう。つまり、ただのテラフォーミングされた火星だ。

 いや、それが普通な惑星のあり方と突っ込まれたら、サイエンス・ファンタジーががががが……。

 それでもゴブリンは増える。魔法や魔道具は使えないし、付与された武器もただの武器となる。結界も消える。ブルボンも魔石の魔力がなくなれば、ただのメカ娘なマネキンだ。


 ダンジョン・コアを使って、地形を変化させるにはまだ魔石が足りない。

 天気の収納魔法には多種多様な魔石があるが、中身を補充する方法は無い。

 使いきった魔石は建材や盛り土の一部にされたり、粉にしてガラスと混ぜる事もある。魔石の粉は魔力の伝導率が良いので、魔法陣にも用いられている。


 コボルトは魔石を炉にくべて火力を上げたり、錬金術師の触媒に使うこともあるし、加工して付与の核に用いる事もある。

 ゴブリンの魔石は一日当たりの七割がブルボンに渡り、クズ鉄やジャガイモの種芋、豆類の種、さつまいも各品種が配給される手筈となった。

 日々、農場は拡大され、ゴブリンの被害も出るが農地も確保出来る。掘って埋めるのを忘れても、死体に種芋を突っ込んでおけばしばらくして発芽してくれる。

 ……黙っていればどんな栽培方法なのかは分からないんですよ。景観の都合で埋めるに過ぎないのです。

 更に鶏や鳩、カラスを飼い、アリや蜂の巣もテリトリー内にはある。


 雑草は定着して、生い茂った部分とまだ荒野な部分とで分かれている。

 農場では邪魔な存在だが、貴重な資源でもある。枯れ草は薪にもベッドの藁代わりにもなるし、鶏のエサにもなる。

 鶏糞とかコボルトの糞とかも農地に混ぜ込む。発酵やら腐敗やらさせた方がいいのだが、肥溜めはゴブリンに襲われやすいから作れない。

 連中は自分の糞すら喰う悪食。逃げ若では貴族の糞尿は、良いものを食べているから、肥料としても重宝されているし、農家にとって黄金のようなモノだったとか。


 それからきているか分からないけど、糞を黄金と言うこともあるらしい。

 デリ〇ルのオプションとかにもある。食べる人もいる。

 介護職からすれば便失禁は面倒なものだ。トイレで全身総替えは特に。入浴介助が次の番な利用者は、風呂場で流せるから楽ではある。


「ぎゃー! 水没するー!?」


「雨の量がエグいって!」


「ブルボンだずげでぇ!!」


 コボルト達の試練だったが、異常気象に備えるだけの準備は出来ていない。

 というか、一年未満でやっと冬将軍と泥将軍を乗りきれただけだ。

 しかも火星という未知の惑星。ムチャ振りにも程がある。

 なので天気と彩華は、ブルボンを派遣した。


「土嚢を積みましょう。土魔法でもいいですが、入口を囲うのにたった一体だけでは、効率が悪いですね」


(卵の殻はうまいけど、羽毛ってそんなに美味しくないんだな)


 オムリンを鶏の番に任せて、ブルボンの指揮の下、コボルトが土嚢を積み上げる。

 米を入れる袋を再利用しているので、ビニールとかは使わない。

 火星に配慮して、持ち込んだ粗大ゴミから出る、石油製品や化学繊維は極力回収するようにしている。

 住みかが水没したものの、何とか乗りきれた。




「まだ自立させるには早かったね」


「そもそも、植生が整ってない状況での、サバイバルが厳しすぎるから」


「地球の砂漠でのサバイバルと、火星でのマジの一からサバイバルは、比べるのがそもそもムチャだったかー」

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