コミュニケーション
しばらく経つと雑草が芽吹く。コボルトの子供達が外を駆ける。
ゴブリンも現れ、火星タコもブルボンと共にやってくる。
「これより、武力介入を行います。民間コボルトを守りつつ、敵性ゴブリンを始末しましょう。……ブォオオオ! ブォオオオ!」
(えー、よろしく?)
(お前の分まで戦っておくよ)
(任せろ。今の陸ならチノ=リもある!)
(泥濘に足をとられるタコなんて、いる訳がないのだ! ヒャッハー!)
ブルボンの法螺貝を合図に、火星タコ三体がゴブリンの偵察部隊へと近付く。
「な、なんだこいつら!」
「わからんが、殺せ!」
「鈍いぞ、囲めばすぐ終わるな」
ゴブリン達は一体の火星タコを取り囲む。殻にこもるタコを殴ると、泥るんでいたから吹っ飛ぶタコと、その場に足を滑らせてしまうゴブリンとに別れた。
近くのゴブリンを火星タコが掴んで、更にそのタコの殻を別のタコが掴み、無理やり転がしていき、最後には殻を地面に滑らせながら、タコはゴブリンとともに引き離されていく。
吹っ飛んだタコ、離れた場所でゴブリンとタイマンをするタコ。
オムリンを含めた三対二でゴブリンは劣勢となる。いや、ブルボンが吹っ飛んだタコを回収に動いたので、実質四対二か。
タイマンはタコの勝ち。海洋生物を無礼るなよゴブリン風情が……!
「相手に向かってシュート!」
「ぐわば!?」
超! エキサイティング! してブルボンのシュート! を受けたゴブリンはミンチになった。
(こんな感じかな? シュート!)
「ぎゃあっ?!」
殻にこもったタコを、殻を下にして滑らせるように転がしたオムリン。
少し軌道がズレたものの、タコは触腕を出してゴブリンを捕まえて減速しつつ、そのまま足をもぐ。
(だいぶ痩せてないか? 冬のせいかな?)
(食べ物なさそうだからなぁ)
「ミッション・コンプリート。お疲れ様でした。これより魔法の訓練を行います」
わめくゴブリンをシメて、オムリン達は足と殻を使って地面に窪みを作る。そこへバケツを置くブルボン。
(体内の魔力はわからないな)
(ゴブリンの魔石はある。これから引っ張り出すんだよな?)
「そうです。まず、魔石を置きます。地面に円を描き、魔法陣の基本ワードを円に沿って書き、六芒星を加えます。その外側にループする円を付け加えると、魔道具の基礎の魔法陣となります」
(……難しいな)
(触腕で六芒星を書くのはムリじゃないか? 投げて直線を書くか?)
(円はどうする。触腕を繋いで回るか?)
「やってみましようか。大きな魔法陣となっても、私が補佐すれば機能しますから」
試行錯誤の末、どうにか形となった魔法陣が出来た。
「これは水魔法による、海水を少し生み出す魔法陣です」
バケツに海水が溜まる。それをオムリン達が代わる代わる確かめていく。
(酸素は少ないんだな。泡立てるか)
(それやると減るぞ。この量の海水でゴブリンの魔石一つなんだが?)
(狩るか。一狩り行こうぜ!)
「今日はダメです。分布を把握して、効率的に狩りましょう。乱獲だろうと、計画的に行う必要がありますから」
(それもそうだな)
オムリン達は次に魔法陣の小型化を練習する。
バケツにはちょっと入らないので、たらいに刻み、火星タコの殻に載せて運搬し、交代でたらいに入ってエラ呼吸しつつ、ゴブリンを狩るための遠征手段の確立を目指すのだ。
もっと進化していけば、二足歩行したタコやイカに成る可能性もある。スプ〇トゥーンのように。
タコとイカの戦争こそ無いが、オムリン達が陸上も闊歩出来れば、それは立派な火星人だ。
魔法の訓練、というか魔道具の訓練? も一区切り着いたので、コボルトを観察するオムリン。
子供達はオムリン達を興味深く見ている。
「あれって食えるのかな?」
「でも、ゴブリンより強いよ」
「オートマトンもいるから、捕まえられない……」
捕食者の気配がするので、オムリン達は殻にこもった。
(……なんか、食べられそうなんだが?)
(ナニ言っているかはわからんが、エサとして見られているのは分かる)
(あ、足だけなら自切してもいいが……)
「対話を試みましょう」
ブルボンがコボルトの子供達に近付くと、子供達は距離を取る。
宇宙ブルボンとなってしばしフリーズするブルボン。
「やっべ! 殻ごと投げてくるんじゃね?!」
「待て、背中を向けたら避けるのが難しい!」
「…………?」(宇宙ブルボン)
(ブルボン、なんか恐がられてないか?)
(恐怖の気配がするぞ)
思考し、ブルボンはバックパックから、魔法的なホログラムを空中投影する魔道具を取り出す。
「コミュニケーションの一つに、歌と踊り、アニメーションがあります」
(言語の問題は?)
「コボルトの使う言語は字幕として出せます。オムリン達には翻訳と通訳を同時に行いますので、映像作品も分かるかと」
(アナザーガンダ〇のエイジは冬に見たぞ)
「今回はゴブリン・スレ〇ヤーというアニメです」
天気の空間短絡魔術、つまり転位系魔術により、地球のWi-Fiにも繋がる。ようつべだって、ニコニ〇だって見れるし、翻訳も口述筆記もブルボンなら出来る。
こうして臨時上映が始まった。
アニメとかを見るにあたり、オムリン達は人数分のたらいがいる。海水を入れたら重くなるので、オンロード仕様のタイヤにした台車もいるか。
天気と彩華の影分身が、台車にたらいを載せて現れ、海水を注水していく。
ポケモ〇はこういう時融通が効くものの、海洋生物には厳しい。人間だって宇宙で呼吸できないから、仕方ないっちゃ仕方ないが。
テリトリー内での上映だったので、大人のコボルトも見に来た。
なんならゴブリンも来たが、影分身が囮となってそちらへと向かう。
コイツを一体でも中国に解き放ったら、すぐに殺されるか、秘匿されて爆発的に増えそう。
だって、中国だぜ?
ゴブリンを捕まえて実験するなんて平然とするし、ゴブリンが増えて管理出来なくなったら、他国のせいにする。
コロナウイルスだってアメリカのせいにしたし。WHOは抱き込んでるし。
ブルボンの視覚情報を見ながら、天気は家や学校で指示を出している。
(……ヤるか)
(ご主人様、フリーズ!)
(むぅ、彩華か。まだナニもしてないよ?)
(ゴブリンの輸入はダメ! 絶対!)
(対処法ならちゃんとあるさ。ゴブリンだけを火星に転位させる、傍迷惑な魔法がね)
(止めて、同人雑誌のようになる未来しかないから。中国人にナニか怨みでもあるの? ゴブリン以外ではダメ?)
(環境汚染が酷いんだよね)
(ブーメランが後頭部に刺さってますよ?)
「マ? 取ってくれない?」
「ご主人様。膝枕しますから、太ももに頭を乗せて下さい」
「何度か思うんだけど、膝枕っていうのに太ももを使うの、何かモヤっとしない?」
「日本語ってそういうものですー。腰掛けるとか、お尻を使うのに腰をさしてるし」
翻訳をブルボンに任せて、天気はしばし彩華とイチャイチャする事にした。
日本は平和だが、火星は煉獄である。
サバイバルしながらジャガイモ栽培と、ゴブリンの死体を土に埋める作業をコボルトが行う。
ゴブリンがほどよく腐ったら、そこへジャガイモを植えると、数日で収穫が出来る事が判明したので、農作業をヤらせる事にしたのだ。
対価は鶏の雌鳥数羽と、鳥インフルエンザで廃棄が決定された卵の山。
「早く地下へ運べ!」
「ゴブリン発見! 迎撃班出撃!」
「おい、子供達は?!」
「オートマトンとタコ達と、またナニかしら見ている」
「そうか……なら、いいのか……?」
「まぁ、人間の影分身もいるっぽいから」
「だったら安心だな」
影分身とはいえど、ゴブリンは人間を優先的に襲う。そういう習性なのだ。
ネコが猫じゃらしに飛びつくようなモノ。
「鶏はどうする。地下の浅い場所に囲うか?」
「網目の板で蓋をしておこう。ゴブリンに取られたらムカつくし」
異種族の人間やモンスターなら、ゴブリンは種付けしてゴブリンを孕ませたり、相手の子種でゴブリンを孕んだりするが、動物相手だとただのエサとしか見ない。




