オートマトン
火星に戻ってすぐ、ダンジョン(仮)を封印した。
ガチガチに固めた攻性結界、魔力吸収力場と増幅力場による魔力飽和状態を発生させる領域、つまり酔うので正常な判断と精密な操作が出来なくなる。
核兵器にリンクさせてあるので、攻性結界に触れたら爆発する。
普通の核とロシアが後生大事にしているツァーリ・ボンバ、放射能だけを撒き散らす中性子爆弾。
全部をセットしているので、あの青髪エルフでも手を焼くだろう。
だいたい、偽の真空とかいう、サイバー・ナ〇トの防御を使ったら、ほぼ攻撃が通用しないんだが……。
なので、核で火星を汚染する。ダンジョンだろうと、異世界への転位門だろうと、放射性物質はファンタジーもオカルトも選ばない。
「これで……どうにか、一息つけるね」
「ライフ・ストリームで防御結界も張った。チャクラによる感知網も構築したわ」
「この世界線のダンジョンなら、暇潰しが出来たんだけどね~。持ってるダンジョン・コアを設置するしかないか」
ここにあったダンジョン(仮)はおそらく、火星から金星や地球へと転位するゲート的なモノだ。読めなかったのは妖精のイタズラによる認識阻害。精霊なら多少は読めるが、妖精はフィーリングで、書いてある文字を読み解くしかない。
それが正解なのかは妖精のみぞ知る。そんな術式だ。精霊でも分からないモノだし。
「金星のがバックアップの瓶詰め妖精。だったら地球には何があると思う?」
「そうだねー、地球で作ったダンジョン風の箱庭とか? あるいは、魔法が効かないヤツの封印?」
水星に青髪が、分体とはいえど封印されていたなら、金星でドンパチして地球に敵をぶっ飛ばし、相討ちで水星に着弾したとかかな?
魔力切れか、甘味切れで分体の瓶詰め妖精がダウンしていて、金星の瓶詰め妖精も動けなくなった。
消滅回避の為に敵の妨害を利用して乗りきり、太陽光の温度差で生じる、水星の岩が焼けては冷める時に出る、僅かな魔力をかき集めていたんじゃないかな。
地球の大気圏突入に失敗して、焼かれながら砕け散った敵の、魔力やらオーラ、気功、チャクラの素体が地球に降り注ぎ、海や大地に混ざっていく。
で、生体濃縮やら食物連鎖の果てにミディクロリアみたいな、フォースの素がミトコンドリアと同一な見た目をして、細々と魔力やチャクラが扱える人間の血統が散らばっては、疫病、飢饉、戦争で淘汰される。
絶望からの自死もあるし、中世には魔女狩りなんてものもあったし?
そんなこんなで魔法使いとかが少ないんだよ。居てもそんなに強くない。井の中の蛙だから。されど大空を知るって続くけど、僕や彩華と比べたらドングリの背比べ。
まぁ、全部妄想やら想像だから、事実は違うでしょ。
仮に魔法が効かない存在でも、あのハイエルフが苦戦するとは、分体ならあり得てもオリジナルならまず無い。
物理攻撃そのものを召喚なりすれば済む。
例え敵の死体が封印されていても、現代には彩華がいるから、たぶん大丈夫。
仮に分体が僕と戦っても、封印を破るのに消耗した状態では、まったくもって話にもならない。
「コアを取り出して、ゴーレム、いや、オートマトンを用意するか。混ぜてしまえばダンジョン・コアであり、オートマトンのコアでもあるね」
「それ、ダンジョンの領域はどうなるの?」
「火星全部、制空権も考えると、衛星まで届く範囲にするよ」
前世で防衛装置として、ダンジョンのような迷路を作る魔導具があったんだよね。
軍事兵器の試作品だったのを、たまたま返り討ちにした部隊が持っていた。たぶん、疑似ダンジョンに、僕と仲間を閉じ込めるつもりだったんだろうけど、それはムリだった。
オートマトンは、ゴーレムとかを作っている国が、物量による数の暴力で押し潰す際に鹵確したモノ。
え、ゴーレム? 鈍足でデカいだけの的なんて、魔法使いからすれば鴨撃ちっすよ。
速くても、範囲攻撃すれば倒せる。そもそも光速で動けるから、音速で迫ろうが避けられるし。
並みの魔法使いでも逃げてしまえば、ゴーレムなんて怖くねーから。
逆に剣士が危険。変なプライドが邪魔して逃げないんだよね。
純粋な戦士はハンマーや盾でタンクをまっとうしつつ立ち回るけど、剣士はアタッカーの領分を履き違えてる連中が多い。
なんで斬る事に固執するのかが分からない。
一部の剣士は、魔法すら斬ってみせたけど、並みの剣士や二流の剣士は自分にも出来るって勘違いしてる。
その間違いを一流の剣士が正すと、矜持の問題となるから正せない。
魔法使いが指摘するとケンカとなるから、後衛は黙っておく。殴られたくないし。
中衛は知らん顔する。前衛のプライドは理解出来るが、口を挟むと肉壁が減る上、後衛の介護に奔走されかねないから。
また、冒険者パーティーとかではリーダーよりヒーラーの発言力が強い。なので、剣士であってもヒーラーには強く出れない。
何、ケガした? その辺の薬草でも食ってろ。それで治る。毒ー? 前衛でしょ。体力には自信あるんだから、耐えて。肉壁が痛みにわめくな。
不仲になると、マジで後ろからチクチク刺される。ヒーラーだから、前衛と中衛の体力とスタミナ、防御力も大体把握してるので、ギリギリになるまで回復しなかったりもする。
戦闘後、元気な前衛が歯向かって来る事を予防しつつ、心を折っていくのだ。
女性ヒーラーは特に性的に襲われやすい。
戦闘後、気分が高揚していたり、命のやり取りをしていたので、強く押せばヤれると下半身で考えてしまう。
後衛仲間である、魔法使いや弓使いには優しい。ヒーラーからすれば囮にもなるし、肉壁にもなるから。なお、肉壁の防御力が低いとヒーラー共々死んでしまう様子。
「コレが、オートマトン」
「何で獣人なの? 奴隷の皮を使ってるとか?」
「区別しやすくしてるんだよ。毛髪とかは抜け毛や散髪のリサイクル、尻尾は鞭にもなるんだって」
イメージとしてはメカなウ〇娘。シュガー博士が作ったヤツに近い。でも、見た目はミ〇ノブル〇ン。
ガ、ガン〇ムや。ダディ、ガン〇ムがおるー。腰部パーツと靴のパーツが無駄にSFしてるー。
完全な自律人型だが、術式を書き込めば遠隔操作も可能。
自己修復するからメンテナンス・フリーでもオッケー、一応は錬金魔法生物に分類され、機械を触っても壊れたりしない。
ただ、握力を同期させておかないと、うっかりオートマトンの握力で握ることになるので、リンゴや卵とかが飛び散る。
このオートマトンは魔石で動くし、大気中の魔素を魔力に変換したりも出来る。ハイブリッド方式なので、ゴブリンを虐殺しても魔石がムダにならない。
「一体だけ?」
「ゴブリンの養殖は、まだ始まったばかりだからね」
ブルボンに搭載できるよう、ダンジョン・コアに合わせたコネクターを追加接続する。胸部装甲内にギリギリ収まったから、盛らずにすんで良かった。
ゴブリンはオスとメスがいるものの、見た目では分からない。これはコボルトも同じ。不細工と毛むくじゃらなので仕方ないが。
ちなみにゴブリンのオスはコボルトのメスを襲う。コボルトのオスはゴブリンがメスだろうと殺す。
彩華に近寄るゴブリンも居るが、始末しておく。
「コレ、増えるの?」
「い、一応、コボルトとゴブリンは、住みかをかなり引き離してあるから……」
「ブルボンも襲われそうじゃない?」
「結界から出たらね。彩華にも言えるけど、結界があるのに出歩くのは、ちょっとどうかと思うよ?」
「ご主人様、マップは自分の足で埋めるべきだと、私は思うの」
「ある程度、雑草とか生えないと面白味がないじゃん」
「それはそうだけど……」
「水辺に生体反応を感知しました」
「ブルボン。お前、喋れるのか」
「なんでご主人様知らないのよ!?」
収納魔法の肥やしだったから。喋ってるの初めて見たんだよね。
ブルボンを伴って、水辺へと向かう。
水辺というか、海辺だね。緩やかな崖になってる。
その崖を登る軟体生物。殻つきのタコというか、ポケ〇ンのオムナ〇トのような生命体がいた。




