登校
保育園を卒業後、天気は彩華と一緒の小学校に通う。
ハチャメチャだったが、保育園の園児達とは別の学校なので、変な噂とかも無い。
入学式はおとなしくしていたが、数日経つと猫かぶりを止めた彩華は、ほぼ同棲している天気と共に登校する。
今回は自分のランドセルを背負い、彩華のランドセルを持ち、彩華を肩車して登校している。
ジャ、ジャンケンに負けたのだ。パーでビンタ、チョキで手刀、グーはマジ殴り。
彩華はマジ殴りで、天気はビンタしたが吹っ飛んだ。
(コイツ、僕の事がキライなのかも知れない)
(もっと強くしてもいいのに……)
なんでジャジャンケンなのか、ハンターとかワンパンとか、グラップラーとかのアニメやマンガをようつべで見たから。
単純に影響を受けただけ。彩華と天気だから問題ないのだが、普通に器物破損や傷害罪で捕まるレベルだ。
「うわ、天気大丈夫?」
「ぐふっ……。げ、元気いっぱいだぜ……」
子鹿の如く足が震えるも、やせ我慢で立ち上がりつつ、回復魔法で打撲を治す。
「引き分け、かな?」
「ま、負けでいいよ。うん」
彩華の頬にもビンタの痕があったが、自分で治している。ニンジャズルい。上目遣いは卑怯。メイド服な改造制服はあざとい。
天気は負けておく。彩華が負けを認める前に、身体が悲鳴を上げるので。次もマジ殴りは勘弁してほしい。
そうして勝ちをゆずったので、肩車とかをしているのだ。
何で登校時なのか、下校時にやらないのか。それは彩華が天気は自分のモノ、というアピールの為だ。ジャイ〇ンかな?
「彩華のは天気のモノ、天気のは彩華のモノ」
「変則的ジャイ〇ンだね」
当然目立つ。が、誰も話し掛けて来ない。関わりたくないのだろう。しゃーない。
「ヒソヒソ。あれがかかあ天下よ」
「ヒソヒソ。尻に敷かれてるわ」
「ヒソヒソ。いや、お嬢様と執事なんじゃ」
「ヒソヒソ。マフィアかも、彩華ちゃんのお父さん外人だったし」
ちょっと違ったようだ。天気達は聞こえているも、聞こえないフリをする。
「彩華、太ももで首をキメないで?」
「あ、ごめん。無意識のうちに三角締めしてたわ」
無音殺人術かな。殺意高い、この娘怖いヨ。
なるべく逆らわない方がいいカモ。
「あと、ランドセルに乗らないでくれ。後ろにひっくり返りそうになるから」
「ちょうど良い場所にあるから、つい」
スカートなので、ほぼ生足による三角締め。幼馴染じゃなかったら、前屈みになるところだったし、長男だから耐えれた。義理の弟だったら耐えれなかった。
……すまん、やっぱ辛ぇわ。
「さぁ、ご主人様。走って、予定より遅れがちだよ」
「前のめりになると、今度はそのまま倒れそうだから止めて!」
外でもご主人様呼びは本当に勘弁して欲しいところだが、囁くのもそれはそれで止めてー。
「ヒソヒソ。あれがアッシーってヤツよ」
「ヒソヒソ。さりげなく脚を撫でてる。対価は既に払ってるみたい」
バチクソ風評被害! 脚フェチじゃねーし!
「……もっと触ってもいいのよ?」
「三角締めを解くのに触っただけだから。分かってて言ってるよね!?」
登校したが、下駄箱でもたつき、予定より少し遅れた。
「おはよう」
「おっはー」
「おはよー」
「ヒソヒソ。久野夫婦が来たわ」
「ヒソヒソ。今日は肩車してたみたい。昨日は米俵のように担いでたわ」
「ヒソヒソ。明日はお姫様抱っこかしら」
彩華を米俵のように担いだのは、ちょっとヤバかった。体育の先生がすっ飛んで来たので、彩華を降ろしたら、何故か天気が米俵のように担がれていた。
余計に騒がれたが、彩華は、呼び掛けにはいはい言いながら体育の先生を連れて、下駄箱まで輸送をこなした。
体育の先生は男の人だったが、ちょっと涙目であったとか。
「お姫様抱っこは、ランドセルをどうするかで揉めるよね」
「やっぱ両肘に引っかけて、私を持つのが早いって」
「えー、絶対肩がいいよ。肘だと肩掛けが邪魔じゃん」
不毛、あまりにも不毛な言い争いだ。
同級生は甘ったるい空気から逃れるべく、何人かの男子は廊下まで下がる。
女子はヒソヒソ話を止めて、天気達の会話を固唾を飲んで聞いている。
するのか、お姫様抱っこ。その状態で登校と下校のルートを通るのか。
「というか、両腕が塞がるから、僕はどうやってドアを開ければいいの?」
「ん? 私が開ければいいじゃん」
「転けたら?」
「大丈夫、あなたは転けないわ。私が守るもの」
「そのネタは、もっと死線をくぐったりしないと、意味合いが弱いと思う」
天気の腕を掴むと、柔術の気中りで床に転がして、有無を言わさず床ドンする彩華。
「こんな感じで転がせるから、転けたとしても、空中で転がして一回転するわ」
「でもそれ、彩華は転けてない?」
「位置を入れ替えてる訳じゃないから、着地した天気がキャッチすればいいのよ」
それはそれで難易度高いなぁ。




