魔法薬
天気は彩華を介抱するべく、熱光学魔法で周辺を隠蔽する。
収納魔法からプレハブ小屋を出して、影分身に組み立てさせ、水のタンクや薪を付近に置く。
本来なら持ち込み厳禁、地球の雑菌や雑草を火星に持ち込むのは、色々とアウトな行為だ。注意してても付着しているので、気付いた時には外来種は繁殖している事がままある。
しかし、今現在は惑星地球化計画のほんの第一歩に過ぎない。
どのみち火星全域を熱光学魔術で、今まで通りの無人に見せ掛け、隠蔽をガチガチに固めるのだ。
どうせ誰も来ない。来れても、来る道中でトラブルに見舞われるから、満身創痍となるだろう。テラ〇ォーマーとかツヴァ〇とかのマンガで予想出来るし。
異世界から持ち込んだ空気缶を開封して、これまた異世界産の氷や海水を適当に置いたり、流していく。
質量保存の法則? 仮定というか、推定というか、ダンジョンがあるからまだ大丈夫でしょ。たぶん。
ナニかしら警告してくる存在がいれば、その時に対応するだけだし。
「……ご主人様」
ウレタン・ベッドから彩華が目覚める。
「気が付いたかな。気分はどう?」
「ほぼ正常に呼吸が出来るのは、異常なんですかねぇ?」
脳波を変えずに覚醒してそう。ヒイ〇ニウムの骨だったりしないよね?
「空気缶を開けたり、海水を撒いたりしたんだよね。熱光学魔法も使ったから、隠蔽もバッチリ」
「……な~に~?! ヤっちまったなぁ!?」
「そうだね。もう引き返せないよ。ここでスローライフして、二人で暮らそうね」
「しょ、将来的には、そうしましょうか……」
暗に火星という惑星一つが、丸まる愛の巣と言われて、流石の彩華もドン引きしてしまう。
「ご主人様、子供は何人欲しいですか?」
違った、アダムとイヴな状況に発情している。
「毎年最低でも一人、多くて五人は産んで欲しいかな。あ、十五年は出産を続けてもらうから」
「えぇ……」
ゼロが無いのは、ゼロを含む場合よりも怖いんですけど!? と、ドン引きする彩華。
「彩華なら初産でも五人はいけそうだよね? やっぱり毎年五人ずつ産んでくれない?」
「あの、リノちゃんやシズルお義姉ちゃんは……」
「想像妊娠でもさせておこう」
「すっげぇチクショウ発言ですよ!?」
毎年五つ子は、彩華的には可能だ。でも、可能だからってやりたくはない。
家事や炊事は影分身に任せるとしても、育児とか、教育費とかの諸々がネックでもある。
「海外には孤児がいるじゃん? スラムとか戦争難民とかでもいいけど」
「……火星に拉致するつもりですか」
「ついでに三女神の宗教団体も、一部を移住させて、農場と畜産をやらせる。トレーナー契約している連中も移住させよう」
「あの、ご主人様。現代人は石器時代の生活なんて出来ないですよ?」
「収納魔法の空間内に、ゴブリンとかいるんだよね。研究サンプルとして解き放つ事も出来るよ。現代兵器であるヤクザの銃とかも持ってくれば、自衛も出来るね。地球と変わらない状態にすれば、二十世紀頃の科学技術が使えるから、各産業の運用は出来るはず」
「ひ、人手は?」
「影分身と拐ってきた連中かな」
「ちょっと影分身、便利に使い倒しすぎじゃない?」
影分身は消えると、本体に経験値が還元される。つまり、数多ある労働の経験値が、本体にフィードバックされる事で、より合理的、効率的に働けるのだ。
しかも社会主義や共産主義を、一人で体現出来る。
労働力が自分だけなら、労働の対価も総取り。少ない報酬を他人と分け合うから、争いが生まれるのだ。
現代の地球は資本主義が優位。それは格差が無くなっても、国家が統一されても、他人と比べる以上絶対だ。
ならば、社会主義を基盤に据えて、食糧生産や各種産業を薄く広くしていく。
資本主義のやり口はレースに組み込み、実力を存分に示させればいい。
だが、脱法麻薬、テメーはダメだ。ラブ・アンド・ピースは火星にはいらない。
「火星を地球化すれば、五年で生活基盤も整えられるよ。最初の二、三年さえ乗り切れば、あとは波に乗れるって」
「……ダンジョン(仮)の調査は並行でするの?」
「うん。既に始めてる。術式と文字の解読からだから、しばらくは何も進展はしないけどね」
「解読が出来ない場合は?」
「封印を強固にする。物理的にも魔法的にも、僕ですら解除に手間取るヤツを、複数仕掛けるから」
「……ちなみに、解読に成功したとして、ダンジョンの中も調べるの?」
「解読結果次第だね。ヤバそうなら封印する。パンドラの箱も玉手箱も、開けなければ無害だし?」
「火星を大規模に農場やら畜産に使うのはいいけど、消費とかどうするつもり? モンスターにでも食わせるの?」
「獣人になる魔法薬を量産する。で、三女神宗教の連中に服用させ、調査兵団の部隊として使う。外敵のモンスターを蹴散らし、未踏領域を、マップ埋めと開墾、建築、レース場を作らせる」
「壮大な計画だけど、私達が死んだら終わりじゃない?」
「え、たった百年で死ぬようなタマだとでも? 僕も彩華も見た目だけで人間はやめてるって。だって、魔法と忍術が使えるんだよ? 転生して前世の記憶もある、魔法も忍術も前世からのを使うんだから、ただのミュータントやらアベン〇ャーな存在とも違うはずだし」
「ちょっと待って、反論を考えるから……」
「未知のダンジョン(仮)もあるし、たぶん、宇宙人もいると思う。ひょっとしたら神様だっているかもね。いや、宇宙〇獣とかベ〇タな存在が先かな?」
「人類詰むじゃん。キュ〇ベーのような存在がまだマシだわ」
「……TSな魔法薬もある。彩華が男になってもいいし、僕が女になっても、男の娘になってもいいよ?」
「お父さんをお母さんにも出来るわね。日本人の性癖はヤベーぜっ!」
「契約している男の子を女の子にも出来る。ソイツ等を獣人にすれば、シンデレ〇・グレイなレースも出来る」
「その逆も可能だから、男手が足りない場所に派遣も出来る。女が足りないなら女手を増やして、子供を生ませてから男に戻す。なんて事も出来るわね」
「獣人になる魔法薬、TS魔法薬、若返りの魔法薬もあるから、全国の老人ホームから老人を拐って、若返りの魔法薬で十代まで若返らせて、この惑星でまた働かせる事も出来るよ」
「鬼、悪魔、暴君!」
「人的資源の有効活用だね」
戦後初期の世代をまだ働かせる、外道と言われても仕方ない。
「肉体が若返るなら、寿命ってどうなるの?」
「落ち着いて聞いてね。九十代ならよくて百二十歳までしか、生きられないんだ。若返りの魔法薬は一律で、人間の限界の寿命までとなるね」
「つまり、個人差はあるけど、認知症もガンも骨の変形やリウマチも大体は治る。でも、その人の寿命は延びないから、百歳で死ぬ人もいれば、百二十歳以上生きる人も出てくると?」
「寿命までは若返らないんだよね。若返る人が九十歳で、寿命が九一歳しかないなんて事もある」
「やっぱりご主人様は悪魔なんじゃ……」
「なら、彩華は天使だね」
「ふむ、照れ隠しでマジ殴りしてもいい?」
「ごめんなさい! 頭をグーで殴られると、死んじゃうから!」




