火星を占領しよう
ある日、天気は彩華を連れて、火星へと超長距離を転位した。
最初は月の裏側に転位し、超能力の分子通過状態な彩華を連れ、天気の光速移動で向かった。
マッハ88万は伊達ではないが、テレポートよりは遅い。やっぱり空間の短絡化である、ワーム・ホールやテレポートはズルいよ……。
光速が遅いなんて普通はあり得ないんだが?
「ねぇ、ご主人様。火星の大気成分や水はどうするつもり?」
「収納魔法で、前世の世界からの海水を出す。大気もこの空気缶に詰めてあるよ」
「空気缶……圧縮ボンベみたいなヤツ? でも好きに取り出したりは出来ないのか」
「圧縮して密閉しただけの、ただの大気だからね。消火器と同じで、開封すると出しっぱなし。突風が吹くし、気圧の変化で耳が痛くなるよ」
この世には質量保存の法則があるものの、前世の世界は特殊なので適用されない。
ぶっちゃけ、収納魔法を覚えた魔法使いが、異世界に転位したら、それは質量の引き抜きやら強奪に他ならない。
三体問題をテーマにした小説では、質量を別の空間に移し過ぎると、エントロピーの低下が始まり、宇宙が徐々に開いた状態となる。
熱量が拡散して冷える為、宇宙の膨張が収縮に転換し、ビッグバンの巻き戻しとなり、世界どころか宇宙が消滅するらしい。
しかし、質量を足していくと、それはそれでエントロピーの増加となる。
エンゲル係数やらエントロピーやらは、増えすぎても減りすぎてもいけない。
ダンジョン系統の小説は、ダンジョン一つ一つが異世界というモノなので、質量保存の法則を回避出来ている。と思う。
でも、魔石や素材を取っていきすぎると、ダンジョンのコアがモンスターを生まなくなりそうな、気がしなくもない。
魔力を消費してモンスターをリ・ポップさせ、人間から魔力や生命力の余剰分を吸収しているのだろう。
体力が最大値の状態で回復薬を飲んだり、魔力が減っていて、自然回復して最大値まで回復したとして、魔力や体力は自然回復し続けている。
リジェネは継続してこそ意味がある。途中で止めたら、掛けた意味が薄い。
酒やタバコみたいなモノ、途中で止めるくらいなら、最初から飲んだり吸ったりしなければいい。
それに近いのがリジェネであり、余剰分の生命力や魔力となる。
何故、ダンジョンの話をしたのかと言うと、火星にダンジョンのようなモノが、封印されている事が探査魔法で判明したから。
ダンジョン系の小説では、地球に突然出来た謎の仕組みで済まされるヤツ。
よく分からないモノを、手探りで使い、深い階層へと潜る。
魔法や道具をよく分からないなりに使う。未知の生物をぶっ殺して、未知のエネルギーを取り出せるからと、取り出して使う。
割りと気が狂った状況のお話だ。
ゴブリンから魔石が取れるからって、緑色の人型モンスターを狩る。
ドラゴンとか倒せるならぶっ殺しに行く。
ワ〇ルズじゃないんだから、とりあえず狩ってから考えるの止めてよね。
見た事もモーションも、既存の作品で知ってるから、現実に出たモンスターも殺してから、利用する部分を取り出す。
生命倫理に苦悩しない連中が多過ぎだろう。探索者や冒険者はサイコパスの集団なのかな?
ファンタジーの世界でスタンピードなる、モンスターの大群に町が襲われるイベントがあるが、モンスターからすればただの大移動だったりするだけで、たまたま進路上に町があっただけなのだ。
ダンジョンのスタンピードも、似たり寄ったりだろう。
ファンタジーでスタンピードを経験したくないなら、地球のように人間が間引きまくればいい。それでも蝗害は起こるが。
ダンジョンを管理出来ないから、モンスターを間引くのが遅れてスタンピードとなる。これは仕方ない、ダンジョンそのものを減らすしか、スタンピードの予防は出来ないだろうし。
ダンジョンを勝手に潰したら、法律で罰せられる展開もあるな。
まぁ、元々の土地へ既にある利権の上に、更なる利権という金のなる木が生えたら、利権に敏感な連中は確保に走るものだ。
であるなら今回のように、火星の場合はどうなるのか。
火星は、一応誰のものでもない。そもそも現状では来れない。
月軌道からスイング・バイでも、六ヶ月から八ヶ月は掛かったはず。宇宙空間の移動で二・三ヶ月はかなりのロスだ。
地球だって時差があるのだから、予定より遅くなったら、あるいは遠くなったら到着距離がズレて、燃料や食糧、酸素を多く消費する。
「推定だけど、ダンジョンを調べてみよう」
「現地でサンプルを調達するの? 幽霊出たら撤退する?」
火星に住んでいた原住民の墓を暴いたら、幽霊に乗っ取られた死体が襲い掛かってくる洋画がある。
題名は忘れたが、爆弾作りの最中に親指が吹き飛んだり、黒人の悪党が軍の女性士官とシャトルまで逃げ、地球に報告するのがラスト・シーンだった。
裁判で証言しても信じられず、悲劇は繰り返されたようだが。
「見極めないと何とも言えないね。まずは外側から調べていくよ」
「コレ、NASAは把握してるヤツ? 私、知らないんだけど」
「魔術的プロテクト掛かっているから、知らないと思うよ。位置も洞窟の奥だし、衛星写真や望遠鏡の画像では、見えない部分でもあるね」
「どうしてご主人様は見つけられたの? 実はこっそりこの星を開墾してたとか?」
「…………し、してないよ……」
「ウソつき。いや、嘘だっ!」
「ちょわ!! 鉈を構えないで!? ほら、心を読んでもいいから、落ち着いてね?」
彩華は天気の心を読む。表層心理から深層心理まで容赦なく読み込んだ。
彩華! 彩華! 彩華! 彩華ぁぁああはわぁああああああああああああああああああああああん!
あぁああああ……ああ……あっあっー! あぁああああああ! 彩華彩華彩華ぁああううぁわぁああああ!
あぁクンカクンカ! クンカクンカ! スーハースーハー! スーハースーハー! いい匂いだなぁ……くんくん。
んはぁっ! 彩華たんの赤毛の髪をクンカクンカしたいお! クンカクンカ! あぁあ!
間違えた! モフモフしたいお! モフモフ! モフモフ! 髪髪モフモフ! カリカリモフモフ……きゅんきゅんきゅい!
五歳頃の彩華たんかわいかったよぅ! あぁぁああ……あああ……あっあぁああああ! ふぁぁあああんんっ!
親の許可ありの婚約が決まって良かったね彩華たん! あぁあああああ! かわいい! 彩華たん! かわいい! あっああぁああ!
童貞卒業できて嬉し……いやぁああああああ! にゃああああああああん! ぎゃああああああああ!
ぐあああああああああああ! 魔術ないなんて現実じゃない! あ……小説もアニメもよく考えたら……。
彩 華 ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い? にゃあああああああああああああん! うぁああああああああああ!
そんなぁああああああ! いやぁぁぁあああああああああ! はぁああああああん! 〇ルケギニアぁああああ!
この! ちきしょー! やめてやる! 現実なんかやめ……て……え!? 見……てる? 写真の彩華ちゃんが僕を見てる?
写真の彩華ちゃんが僕を見てるぞ! 彩華ちゃんが僕を見てるぞ! AI生成の彩華ちゃんが僕を見てるぞ! AI生成ってなんだ?!
心の彩華ちゃんが僕に話しかけてるぞ! よかった……世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお! 僕には彩華ちゃんがいる! やったよケロちゃん! ひとりでできるもん!
あ、彩華ちゃああああああああああああああん! いやぁあああああああああああああああ!
あっあんああっああんあアぁあ! セ、セイ〇ー! シ〇ナぁああああああ! タ〇サぁあああ!
ううっうぅうう! 僕の想いよ彩華へ届け! 現実の彩華へ届け! 僕は実はメイド萌えなんだっ!
彩華! 彩華! 彩華! 彩華ぁぁああはううわぁああああああああああああああああああああああん!
あぁああああ……ああ……あっあっー! あぁああああああ!!! 彩華彩華彩華ぁぁああはううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ! クンカクンカ! スーハースーハー! スーハースーハー! いい匂いだなぁ……。
彩華はあんまりな情報に卒倒した。
「……まさか、こんな簡単な精神攻撃に引っ掛かるとは」




