オーストラリア大陸改造
天気と彩華は五年生になった。相変わらず、肩車やおんぶしての登下校をしている。
砂漠の一部を緑化させたり、オーストラリア大陸の内陸部に、雨を定期的に降らせたりもした。
「ちょっとヤバいかな……」
「オーストラリアの内陸部は、マジでやり過ぎだと思うわよ」
オーストラリア大陸は、大陸の最東部に大分水嶺山脈があり、太平洋から水分を含んだ空気は、ここで大量の雨を降らして水分を失う。そのため西には乾いた風を吹き降ろす事となり、大陸中央部はさらに乾燥している。この結果、砂漠気候が約三割、ステップ気候も含めた乾燥地帯は五割を超える。
この最東部にある山脈が、雲や風の流れを変えてしまうので、内陸部に雨が降りにくい地形となっている。
なので、山脈の山頂を十メートルずつ削っていき、風が流れるようにした。
ある山脈はV字に切り出し、ある部分は山頂をキレイに切断して、内陸部の方へ落とす。
結果、麓が大惨事となった。山頂だった部分と山脈に挟まれて、物流が滞ったのだ。
数日経っても解消されないので、天気は山頂だった岩を粉砕して、荒野に向けて台風や竜巻を魔法で発生させ、何もかもを吹き飛ばした。
未曾有の災害にシドニーはパニックとなり、群衆が暴徒化する。
更に一部の民衆は水溜まりのような入り口の、地底湖に落ちて行方不明となった。
何で地元の人間が、複雑な水路の入り口を把握してないんだよ。
道路が未舗装でも看板とか、アプリで危険箇所の把握とか手立てはあるだろうに。
等と天気は頭を抱える。日本人がその辺りを徹底している部分もあるが、海外の国ではハザード・マップとか無いのだ。
日本の常識は世界の非常識。
で、オーストラリアの内陸部に、雨風が流れるとどうなるのか。
内陸部の荒野が豪雨で削られ、砂漠と荒野の土砂がまじった部分が出来上がる。
そこを開墾するべく地下の水路を繋げていくと、地底湖の水が無くなり、空洞化が進む。
内陸部の地盤沈下が起きて、海抜よりも下の土地となる部分が出てくる。
沿岸部と低くなった内陸部を繋げると、海水が流れ込み、一部が海水で水没したりもする。
塩害と土地の水没、気候変動による植生や動物の分布が変化するだろう。
つまり、エアーズロックが潮風や雨風で更に風化し、その保存へ税金が使われる事にも成りかねない。
天気は事実がバレたら、オーストラリア方面から指名手配されてもおかしくない事を、お手軽にやらかしたのだ。
でもそれはそれとして、農業を勝手に進めて、内陸部の七割を緑化し、食糧生産を爆上げさせる。
元々が荒野なので、芋類や豆類が主な収穫物となる。
砂漠は雨季に鉄砲水が多い。乾いた砂漠の砂は、表面部分の砂しか水を吸収せず、奥深くには浸透しない。
だから雨が降ると鉄砲水が起きやすいのだ。
天気は砂漠の川底の砂を掘り返し、水深をかなり深くした。川底の砂を川幅の砂と一緒に圧縮して、コンクリートで舗装したように作り替えていく。
砂漠方面の土地が海抜よりも下がった。圧縮すれば、砂漠から川へと砂が流れる。また圧縮していく。
その繰り返しが毎日続き、砂漠の砂の半分が圧縮されて、岩に近い砂の塊が川沿いに積み上げられる。
それは誰が成したのか分からないモノだった。気が付いたら既にあり、砂漠の砂が減っている状況に、地質学者達は頭を抱えるしかない。
「減った砂は、余所の砂漠の砂で補充する」
「それは色々と大丈夫なの?」
「ウイルスとかは、たぶん大丈夫でしょ。砂の粒子が違うとかは、後でバレるかな」
「どこの砂漠からとってくるの?」
「黄砂がひどいから、中国」
ついでに、中国の砂漠地帯は押し固めて、流砂の空間も無くす。
中国は態度も面子もデカいから、好きなだけイジっても問題にはならない。
ある意味で好き勝手し放題だ。インド軍を挑発しても、中国の私軍に擦り付けられる。
ベトナムとかに近い人工島を、シケによる風と波でぶっ壊してもいい。
おらっ、台風のお代わりだ!
こういう時は、一党独裁でありがたいよね。
何度も殴れるサンドバッグ。どこでも麻雀したり、港を租借したり、一帯一路で新時代のシルクロード?
第二次世界大戦に参加してないのに、国連の常任理事国とかふざけてる。
在中日本人を襲った犯人を英雄扱い、核兵器パクってやろうかな。
隣の韓国と北朝鮮も世界地図から消してやろう。
干渉地帯として残してあるに過ぎないのだ。冷戦時代の名残。
正直、あってもなくても大差ない。
金一族と青瓦台に勤める連中は、中国製のミサイルでも撃ち込んで始末しよう。
「ご主人様、やりたい放題ね」
「……彩華は止めないの?」
「海の水を全部抜くのに比べたら、中国と朝鮮半島の犠牲は、コラテラル・ダメージでしょ」
「……ナニか欲しいモノってある?」
「あら、ご機嫌取りですか? ……特に無いわね」
「お、怒ってる?」
「…………」
彩華は集めた情報がムダになったり、これからの国際情勢が、予想よりも狂ってしまう事を懸念したりは、別にしていない。
情報や秘密が、闇から闇に葬られただけの事。割りとありふれたモノだ。
「……怒ってはいないわ。ただ、ご主人様が私を誘ってくれなかった事がね」
「あっ……の、のけ者にしたんじゃないんだ」
彩華がふてくされてる。ちょっとツンツンしておられる。
取り扱いに注意しないと、これはケンカの火種になるヤツや!
(ヤ、ヤバい。下手するとマジ殴りモノか!?)
(おぉ。焦ってる焦ってる。オロオロしてるご主人様、ちょっとかわいいかも)
彩華は天気を手のひらで転がす、この瞬間がとても愉悦であった。
「1600掛ける2は3200」
「はうっ!?」
「ウソつき」
「……コヒュー……コヒュー……!」
耳元でのささやきに、天気の呼吸が乱れる。
「ご主人様~。彩華、欲しいモノがあったよ」
「な、ナニかな?」
彩華の猫なで声に、天気は背筋が震える。
恐怖ではなく、快感で。
あざとかわいい嫁のおねだり、男なら奮い立ってでも、叶えてやるしかない。
普段から後ろに控えて、天気を立てるようなムーヴをするだけに、滅多にないおねだりの破壊力が際立つ。
「オヤツを半分頂戴?」
「僕のを全部あげますぅぅぅ!!」
「もっと下さいぃぃぃ!」
「おしまいっ、おしまいでーす! 待って、押し倒すのは止めて!?」
「遺伝子の相性がいいと、いい匂いがするんです」
「ゲノム寮長に繋げないで?!」
「ご主人様、彩華の匂いはキライ?」
「僕、犬なんだよね。保育園の頃から。クンカクンカすりゅ。彩華の匂いしゅき!」
「おっとそうだった。ご主人様、いや、主様!」
天気は小さい犬に化け、彩華の匂いを嗅ぐ。
あ~、彩華マッマの匂い至福~。
まったく、小学生は最高だぜっ! 元ネタの名前は忘れたけど。




