スポーツに触れる魔術師
天気と彩華は、園児同士でやるサッカーに参加する事となった。
休日の市民体育祭だか体育会に参加した、彩華の両親が速かったのが切っ掛けのようだ。
父親は外人のスペックで、同世代のぽっちゃりな親父を置き去りにし、母親は伊賀、甲賀の里でアルバイトしている忍者の中の人なので、同世代の母親より速い。
忍者要素関係無い? ゆるキャラな忍者の着ぐるみを着たままリレーして、アンカーでブッチギリの一位だったが?
絶対忍者の末裔か何かだね。あの速さは。
彩華も反復横飛びすると、残像を作るし、残像が違う動きをする事もある。
試しに天気も、魔法で簡単な分身を作ったが、彩華の残像がタックルすると消えた。
「クンフーが足りない。影分身未満は変わり身にもならないから」
「クンフーって何さ!」
「気功の事よ。チャクラと言っても嘘臭いから、気功に例えてるけどね」
「魔力……魔法とは違うの?」
「ネズミの魔法使いは、ただの魔力頼みのゴリ押しでしょ」
「ピザを食べる亀は?」
「その話しはしないでっ!」
ニンジャではない、忍者なのだ。水遁も火遁も逃げる為のモノ。超能力とは違うと力説する彩華。
ダメだ、これはもうニンジャに染まってやがる。手遅れかも知れない。
「なんで可哀想な目で見るの?!」
「ニンジャなメイドはニッチ過ぎるよ」
「忍者はほぼ農民、メイドも下端は農民、というか庶民。お茶と紅茶くらいの差しかないわよ」
「水戸の黄門や、暴れんボー将軍の忍者はどうなの?」
「あんなに強いんなら、助さんも格さんもいらないじゃない。将軍の方は将軍以外、峰打ちすらしてないし」
「N国アニメは?」
「ハッキリ言おう。ただのギャグだと」
鳴門の方がマシ。あと、陰にして陽の空手と忍を合わせた方は、武器が通用しないように立ち回る。
「そういうけど、魔法モノの方はどうなの? 禁書目録とか」
「魔法ってイメージだけでいいからね。小難しく考えていたら、燃費が悪くなるだけだし」
「魔法先生は?」
「仮契約という手数で攻めるのは、間違ってはいないけど、決定打に欠けるからナシかな」
「腕輪物語とかは?」
「魔法じゃなくて、亜人の活躍重視だからアレ。主人公は人間じゃないし」
「ポッター・バリーは?」
「アブダカ〇ブラよりチェストの方が速い。スナッチでも可」
「薩摩藩! おでん二刀流、桃源十勝!」
「やっぱ日本に落ち着くよね。ニンジャもマッポーも」
「それは忍殺」
言い合いながら、サッカーボールを蹴り合う二人。
超高速のパス回しに、影分身と魔法の分身が別々に受けては蹴っていく。
しかし、傍目からはそうは見えない。
ちょっと早めのパス回しに見えているだけ。
彩華は少しだけ両親の前で、影分身の術を披露するも、良く出来ていると褒めてくれるだけである。
不可解な事に、忍術は人間の記憶には残るが、記録媒体には残らない。術を解くと見ていた事も忘れる。ただ記憶を振り返って、何か見て褒めていた事は覚えているらしい。
科学社会な世界線において、忍術はフィクション。フィクションは思い返して貰えるか、忘れるか、見て貰えないかのどれか。
星の数ほどあるフィクションを全て見て覚えるのは、禁書目録ですら難しい。何故なら読む端から増えていくのだ。終わらない読書とアニメ観賞、しかもクソゲーやクソ映画、挙げ句、ようつべのレビュー投稿、配信もある。
これらを追うのはちょっと……、ニコニコも含めたらムリだろう。真夏淫夢の野獣パイセン動画をどう捌くのだ?
ハッカーですら勘違いした、ニコニコの黒歴史を追い掛けるとか狂信者でもしないだろう。
魔法や魔術も同様でフィクションの産物と片付けられる。
何でやと思ったが、忍者と魔法使いが協力する映画があったなと、天気は思い至る。
ほな、しゃあないか。今度彩華とやってみよう。
「よーし、良い感じ。百点とろうね」
「よその保育園や幼稚園なんて、関係無いもんね!」
魔術でリジェネ各種を施し、二人のみとはいえど、体力とスタミナが大幅に上がる。
球の軌道を予測したり、近づく選手へは、そよ風からの舞い上がった草や砂埃で目潰し。ただし、偶然を装おうので、今日はやや風がある程度に吹かせる。
基本は彩華がアシストして、天気が決めるものの、パス回しをするだけの広さは無いので、カットしてそのままシュートを放つ。
園児同士のサッカーだ。試合のグラウンドは三十から五十メートルあるかないか。
園児は小さい。百メートルも走れない。よしんば、走れたとしても往復はキツい。
高校生や中学生と一緒にするなという話だ。
園児なのに縦横無尽に走れる天気と彩華がオカシイだけである。
ボールをかっさらうとそのままシュートしてゴールを決める。
キーパーは手や体で防ごうとするも、何故か弾いたボールがバウンドしてゴールする。
キャッチしようとしても、回転がその瞬間だけ強くなるみたいな、不可解な現象が起きて取れない。
駄々をこねたキーパーの要望を聞いて、審判員がボールを変えても同じ結果だった。
彩華と天気は暴れまわり、百点とはいかなかったが三十点も点数を取った時点で、相手選手の大半が泣き出した。
勿論、味方もろくにボールへ触れられないので、面白くなくて泣き始める。
そして、未来モンスターな園児の心がへし折れ、未来で活躍するはずだった選手は、ひっそりとサッカーから離れた。
こんなん勝てるか! と憤慨してたのは言うまでもない。
結局、天気と彩華はその試合だけ参加して、次は出なかった。
というより、出るのを止められた。仕方ないね。




