イチゴ風味の塩
「イチゴの風味がする塩を作るね」
「イチゴ!? 塩作り!? 突然どうしたの、ご主人様?」
「ようつべで、金の虎に挑んだ塩作り職人のを見ていたんだ。出来そうだから、魔法でやってみる事にしたんだよ」
イチゴ風味の塩は、現実に存在する、まさに職人芸というか、塩に人生を注いだ人しか出来ないヤツだ。
マネーの寅達も全員ノックアウト。牛肉風味の塩とか、その塩を掛ければ牛丼になるけど、実際には塩分多めの白ご飯となるのだ。はえー、すっごい。
収納から出したプールほどの水と、砕いた岩塩を撹拌させて溶かし、溶け残ったままのを魔術で空中に広げていき、塩水の反物を展開する。
別の収納魔法から取り出した、イチゴを数粒放り投げ、溶け残った塩の粒が回転してイチゴを削り、対消滅したように消えていく。
で、何度もイチゴを投入しては溶け残った塩をぶつけていく。
全ての塩が溶けきると、赤い反物がたなびいていた。それを回転させつつ巻き上げ、一まとめにした後、濃度を均一にして再び広げていき、少しずつ蒸発させていった。
一気に蒸発させてもイチゴの色が付いた塩にしかならないので、無風を維持する為に結界を張る。
「キレイですねー」
「二日から四日は掛かるね。あの動画の通りにするんなら、もっと設備とか日光とかもいる。そんな場所はないけどね」
「ご主人様流石です」
「はいはい、さすごしゅさすごしゅ」
そうそう、光学魔法で赤い反物が、見えないようにしておく事も忘れない。
四日後、実食!
「あっま! あ、塩の味もする。変なの~」
「スイーツ(笑)ってね」
「量産するの?」
「全く同じモノは不可能だね。次、同じように作っても風味が違うよ。現物は更に精製しても小樽二つ分で全てかな」
雑味がある部分、ゴミが入った塩、それらを含めると量はかさまし出来る。
「不定期の生産となるし、空気中に展開する都合上、ゴミもまじりやすい。花粉とか虫とか」
「精製が雑だと、赤いだけの塩か、脱色してただの塩になっちゃうと?」
「そんな感じだね」
「ゲームのようにスキップしたり、特定の材料で精製すれば勝手に出来るとかは?」
「このイチゴ風味の塩には出来ないよ。魔法もそこまでファジーに寛容じゃないんだ」
「魔法はイメージが重要。血潮は鉄のように、固く、冷たく、そして粘り強く。その鉄血が、自らの心臓を鼓動させ、身体を燃え上がらせる」
「まるで剣の鍛錬のように、鍛え上げられたその身体は、鋼鉄の如く揺るがない。また、一度動き出せば止まらない、止まるんじゃねぇぞ」
「タカシも頑張ってるし!」
「……ヒットマンいないよね?」
「お義姉ちゃんは襲って来ないはずだけど……」
「コホンッ! イメージでは作れない。作れてもオリジナルには大きく劣る。薄利多売な塩と同列に扱うと、職人が作る価値は意味をなさないからね」
別に岩塩でなくても作れる。というか、普通は海水を蒸発させていく過程で、果物や野菜、肉を浸けて、混ぜては寝かせ、高温多湿な屋内作業に付きっきりとなる。
手作業なので、職人の指は変形していたりもする。
天気は魔法や魔術で作る。簡単なようで繊細なコントロールを求められる。
0,1度の温度差で風味や塩の精製が狂う。
雑に作れば中途半端な塩を量産して、オリジナルの品位を貶めてしまう。
農作業と開墾に従事した前世の経験で、互い違いな魔法のコントロールを、マルチ・タスクで処理。
農作業しながら戦闘するので、前世では速攻によって終わらせてきた。
現世では超能力や影分身を覚えたので、多少は戦闘に集中も出来る。相手がいれば。
彩華とはケンカもするが、ガチの殴り合いは避けたい。男が女に手を上げるのは、ただのゲスだし。
そういうプレイなら付き合うけど、本気では叩かない。報復が怖いのもあるが、怒らせたらなんかヤバそうだし。
普段から穏和な人ほど、キレたらヤバいのと一緒だ。
それか、既に尻に敷かれてるのかもしれない。寝てる時に耳元でささやき、催眠を掛けられている可能性は否定出来ない。
「……この塩を、ベルや首領にプレゼントする」
「あぁ、所場代代わりに? ベルには、上流階級やら上級国民に向けたヤツ?」
「いつの時代も専用やらワン・オフ、一点物は好まれるからね」
貴族とか、珍しいモノ好きが多い。
中世ナーロッパな貴族とかの小説でも、よくパーティーで自慢したりしてるイメージだし。
ちなみに、前世では国によって違った。三男はパーティーにも出れない。御披露目が目的なパーティーも無いよ。少なくとも自分が育った国では、長男と次男に人権があり、三男以下は自力でどうにかするしかなかった。
追放されたけどね! 後悔も反省もしてないけどさ!




