ズブい
「大自然の摂理だか、偉人だか、知らないけどさ。……何だって?」
「ゴメンなさい。……お義兄ちゃん、ちょっといいですか?」
「ん?」
「何で催眠かけたのにトレーニングなんですか。もっと私利私欲の為に使って下さいよ」
「…………ま、まぁ、そう言われるとそうなんだけども、なんだ冷静なツッコミを入れてくるじゃん? でも僕はある意味で私利私欲の為に、リノを泳げるようにしているんだよ? ほら早く行って」
リノのダイレクト・アタックが天気のライフを削る。散々私利私欲に使っているので、彩華もダメージを負う。
現世で一番の精神的ダメージかもしれない。
「イヤです」
(むぅ……イヤらしい命令なら聞くんだよね)
「僕専用の奴隷になれ」
「……そういう関係は、もう少し大人になってからなら、お金稼いでないし。あ、そうそう。イヤらしいといっても、そういうのじゃないんですよ。ちゃんと手順を踏んで、姉のような、いや、姉より劣ってもいいので、雰囲気のあるプロポーズからお願いします」
「……危なっ! 妹を手に掛ける一秒前だったわ」
「分かりました、リノは奴隷になります!」
殺される恐怖から奴隷への選択を選ぶリノ。しっかりしろ! ズブいのが取り柄っぽい感じなんだから!
「プールに浸かって」
「そういうプレイはちょっと……」
なんでさ、着衣プレイとかあるじゃん! 着たままシャワー浴びたりとかも! あ、着替え? 取り寄せれるから大丈夫だよ。
「強靭すぎる精神力。これが妹・パワー? ……やっぱりこれ効いてないから、ちゃんと催眠出来てない?」
「イヤな事以外だったら、何でもやります。たださっきも言ったように、もっとやる気が出る命令をして下さい」
「催眠掛けられているクセに、偉そうな物言いしやがって……」
「催眠は所詮催眠なので、心の底からイヤな事は強制できないんです」
(これ、やっぱり掛かってないヤツ!)
「お義兄ちゃんの命令なら何でも聞きます」
「バカにされてる……」
「言う事聞きたくなるような事なら、何でも言う事聞きます」
「……逆にさ、何だったら出来る?」
「お好み焼きとか、たこ焼きとか、クレープとかを作れます。でも片付けは苦手です」
「ぐうたら未満、料理は普通にやれるか」
「でもでも、作ったんだから、片付けは代わりにして欲しいです」
「図々しい、厚かましい、やっぱりズブいのでは? 精神的に図太いだけか?」
「お義兄ちゃん。ベッドの上でだったら言う事聞きますよ? いくらでも泳ぎますよ?」
「…………もしかして、催眠を使ってトレーニングを、させようとする方が間違っている?」
「はい、催眠はリビドーに訴えかけるような事に使って下さい」
「惜しいなぁ。人助けに活かせると思ったんだけどなぁ」
「いいえ、活かせますよ。水泳以外なら」
「どうして水泳だけはダメなの?」
「ちょっとそういう催眠は、かかりにくいんですよねー」
リノって無敵かな?
「やめよう、諦めようか……」
「お義兄ちゃん諦めたら、そこで試合終了なんですよ?」
「安〇先生、プールでトレーニングをして下さい」
「なんで先生が……絶対にイヤですね」
「いくら言ってもリノは、絶対にプールに入らないじゃんか! だからもういい! ダイエット・トレーニングに切り替えるからね!」
いくら成長期とは言えど、食べ過ぎたら太り気味になる。ハンターの食生活は特に肉が主食なので、カロリー的にヤバい。
狩猟ゲーの食事なんて、立て続けに肉を食べるんだから、ハンターは痛風とか糖尿病とかで、短命かもしれない。
ちなみに、ウマぴょい一回、ベッドの上での全身運動を、仮に一時間したと仮定するとしよう。消費カロリーはジョギング三十分の消費カロリーとほぼ同等となるらしい。
素直に走っていれば、二倍は早く痩せれるかも?
「三回目、三人で催眠!」
シズル、天気、彩華がリノを囲み、三方向から空き缶を鳴らす。カカカン! カカカン! カカカン!
「はい、ダイエットします」
「どうだ……? 明日からとか言い出さないかな?」
「今日からダイエットします!」
「本当に? ……水泳以外に使えるなら、催眠も活かせるみたいだね……。使い道はまだあるか」
しかし、リノはカバンを取りに戻り、カバンから携帯食糧を取り出して食べ始めた。
「ダイエットは!?」
「ダイエットします。ただ私のダイエットはチートデイから始まるので、今日は好きに食べて運動はしない日です」
「図太い義妹だなぁ」
「言っときますけど、狩人は食べれる時と食べれない時の差が激しいんですよ。獲物も選ばないと先細りしたり、国から捕まったりしますし」
中世の話かな?
「現実ではリポップしないからね」
「故に、むやみやたらと歩くより、愛の巣に引き込もって、他の動物を刺激しない方が良いのです。だからエロいトレーニングで痩せさせて下さい。武装も手元にあるから、寝床を襲撃されても直ぐに戦闘が出来ます」
「普通に運動した方が効率的なんだよね。だからさ、ちょっとだけ。足の先っぽを入れるだけでいいからさ……」
「はい。お義兄ちゃんの先っぽを入れます」
「違うんだよなぁ」
シズルと彩華もため息をつく。




