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現代魔術師の暇潰し  作者: 元音ヴェル
スポーツマン・シップ(笑)
33/141

彼我の差

 天気は魔法で倒した四人を治す。


「もう一度、ヤりますか?」


「……あぁ、次は不意打ちなんて食らわない!」


 首領が距離を取ると、再度床ペロする四人。

 治すと、立ち上がって構える。

 壁に向かって投げ倒す。天井に叩きつけて落下する。

 手足がいつの間にか折れているも、意識を刈り取られたら治っていたりする。


「も、もうその辺でいい」


「おや、戦意はありますが?」


「触れられもしない、一方的な戦いは戦闘とは言わないのだよ」


「そうですね。まぁ、僕の実力が分かって頂けたなら幸いです」


 高速での戦闘を()め、彩華の横に戻る天気。

 全力に近い戦闘ではあったが、本気でも何でもない。手札として見せていい部分を示した程度である。


「容赦無いご主人様もステキです」


「良く言うよ。彩華の方が僕より強いくせに」


「一手二手間違えたら、ご主人様を()められないだけの相性ですよ」


 今まで、彩華と本気でケンカした事は無いが、強そうな気配がするので天気も全力を出しずらい。

 全力でケンカしていくと、歯止めが効かなくなって本気の殺し合いとなる。

 魔術と忍術、どちらが強いかは気になるものの、体術こみだと忍術の方が強いだろう。魔術師や魔法使いは、どうしても肉弾戦では劣る。後衛の宿命であり、斥候よりの前衛たる忍者に()があるのもやむ無しだ。


「……子供に負けるなんて」


「いや、外見に騙されているんだ」


「マフィアの首領が連れて来た時点で、普通じゃないのは分かりきっていた事でしょ」


「なんだか、肩こりも治ってないか?」


「言われてみれば……」


「天気君はもういいだろう。彩華ちゃんと戦ってくれ」


「……分かりました」


 首領の呼び掛けに、疑問点を棚上げして、彩華が前に出るのを待つ四人。


「…………来ないのか?」


「後ろです」


 真後ろからの声に振り返る四人。

 その動作を利用して、四人とも投げる彩華。影分身を使えば余裕である。

 が、名護屋川と居澱は受身を取ったので、返す形でもう一度投げる。叩きつける衝撃や反動を利用するだけで、何度でも投げを打てるのが柔術の利点だ。

 他の二人は初手で床ペロ、ちょっとしぶとかったが、三回投げられて名護屋川達も床ペロした。


「動かないからって、油断大敵です」


「ぐ……。確かに」


 医療忍術で打撲を治して、再度対峙するも、合気道と柔術のみで制圧される四人。

 四人はきちんと武装もしているが、彩華相手に警棒や木刀、弓、拳銃は通用しない。


「変わり身が厄介過ぎる」


「拳銃は狙って撃つのに、動きが止まります。弓も同じですね。狙うと当てる場所を教えているに等しいので、忍術と空手を融合させた、陰にして陽の者には通じません」


「空手使ってないでしょう!」


「修羅の〇って知ってます? 空手にもカウンターがちゃんとあるので、変わり身で回避しつつ(突き)を出して、柔術や合気道で投げを打つんですよ」


 空王となる訳ではないから、カウンターを外す事もある。

 ただ、天気のような強さを持たない相手なので、全力に近い戦闘は出来ても本気にはなれないだけだ。

 銃撃や矢が当たっても変わり身で避ける、木刀や警棒の振り下ろしも避ける。


「炎獄、貫け!」


(しるべ)一矢、百式!」


(ごう)の剣技、破断!」


「竜気、滅卦(めっか)!」


 次は初手から各々の必殺技を出す四人。

 名護屋川が蒼い炎を走らせて、彩華を包むのと同時に、長谷部が木刀で打ち据え、天白の矢が途中で枝分かれしたかのように、複数の矢となって降り注ぐ。

 最後に居澱の拳が胴体を貫くも、彩華は変わり身の術で全てをかわしてしまう。


「魔力やチャクラが少し使える程度、怖くもなければ予想外でもないわ」


 多少とは言えど扱えるのと、全く使えないは違う。

 では、魔力の質と量、チャクラの質と量が違うとどうなるのか。

 差が大きいと僅かに威力が落ちるだけで、ほとんど通用しない。相手のチャクラや魔力を包めば、それは制御権を掌握したも同然となる。


逸般人(いっぱんじん)だろうけど、上には上が居るから。過信は良くないですよ」


 影分身しながら、空手裏剣で四人の得物を切断し、天井や壁に投げて手刀を首筋に添える。

 チャクラやら魔力を籠めるのに時間が掛かると、隙が生まれるので、即座に振り抜くような攻撃が肝要となる。

 威力より手数で補う。アサルト・ライフルやマシンガンが多用されるのは、射撃が下手でも数撃ちゃ当たるから。

 人間を含めた生物は、頭と心臓にダメージを負うと死ぬ。天気や彩華もそれは同じ。

 ただ、簡単には食らってあげないだけである。


 次にシズルと、再び武装して回復した四人が戦い、シズルは長谷部と天白を倒したが、名護屋川と居澱に負けた。


「分裂する矢は卑怯だと思うんですけどっ!」


「防いでいたお姉ちゃん・パワーも、大概だよね……」


 導の矢による追尾での、マルチ・ロック矢は確かに卑怯だが、ほとんどを剣の振り回しによる空気の壁で防ぎ、落とせなかった矢は間近で掴んで止めてしまう。

 この姉、海皇〇の剣士かな?

 長谷部には剣で競り合うと見せ掛けて、剣を振り下ろしつつ銃撃。ゴム弾が頭部プロテクターを粉砕してノックダウン。

 リベレーターを天白にぶん投げて、次の攻撃に溜めていたからか、反応が遅れてしまい腹に突き刺さった。

 予備のリベレーターで居澱と組み合うも、名護屋川が警棒で打ち据えてくるので、意識を切り替えた瞬間を居澱に突かれてしまう。

 至近距離からのゴム弾は避けれなかった。


 最後にリノと戦い、天白は弓術と狩人の技の違いを思い知らされ、前衛の居澱ごと射抜かれてしまう。

 矢にも弾と同様に種類がある。その違いと弓術との違いは大きい。

 我〇乱の弓術に近い天白の弓矢は、狩人として貫通速射してくるリノの弓矢とはパワーと威力が違いすぎたのだ。

 矢を矢で撃ち落とすばかりか、射抜いて粉砕されては、弓術も何もない。しかも前衛ごとと来た。

 長谷部も二、三本矢が当たっているし、名護屋川も回避していく。

 鉄を抜く矢は、純粋に火力が高いので、そう易々とは防げない。

 矢を掴めるヤツなんてそんなに居ないし。


 結局、リノは居澱だけ倒せた。居澱を抜いた矢が天白にも命中したが、戦闘不能には至らなかったので、三対一で近距離戦闘に持ち込まれると、後衛は厳しい。

 リノはアーチャーではない。近距離戦用の武器も無く、矢を、弓を振り回して抵抗したがムダだった。


「姉さん、アーチャーって凄かったんだね」


「変わり身を使って、距離を取りなさいよ。うつせみのジツとか、一応教えたじゃない」


「お義兄ちゃん以外の前で脱ぐのは、ちょっと……」


「胸と股にガーゼとか絆創膏を、貼っておけばいいのよ」


「彩華、全裸装備はゲームだけにしなさい」


「そうだよ、メイドちゃん。義妹を露出狂にするのは良くないゾッ」


 隠すべき場所を隠しているのに、と不満気な態度を取る彩華。


「彩華、脱ぐのはダメだからね。僕以外に見せたくないし、見られたくないから」


 独占欲を感じ、彩華は仕方ないと諦めた。手のひらクルックルッである。

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