彼我の差
天気は魔法で倒した四人を治す。
「もう一度、ヤりますか?」
「……あぁ、次は不意打ちなんて食らわない!」
首領が距離を取ると、再度床ペロする四人。
治すと、立ち上がって構える。
壁に向かって投げ倒す。天井に叩きつけて落下する。
手足がいつの間にか折れているも、意識を刈り取られたら治っていたりする。
「も、もうその辺でいい」
「おや、戦意はありますが?」
「触れられもしない、一方的な戦いは戦闘とは言わないのだよ」
「そうですね。まぁ、僕の実力が分かって頂けたなら幸いです」
高速での戦闘を止め、彩華の横に戻る天気。
全力に近い戦闘ではあったが、本気でも何でもない。手札として見せていい部分を示した程度である。
「容赦無いご主人様もステキです」
「良く言うよ。彩華の方が僕より強いくせに」
「一手二手間違えたら、ご主人様を止められないだけの相性ですよ」
今まで、彩華と本気でケンカした事は無いが、強そうな気配がするので天気も全力を出しずらい。
全力でケンカしていくと、歯止めが効かなくなって本気の殺し合いとなる。
魔術と忍術、どちらが強いかは気になるものの、体術こみだと忍術の方が強いだろう。魔術師や魔法使いは、どうしても肉弾戦では劣る。後衛の宿命であり、斥候よりの前衛たる忍者に分があるのもやむ無しだ。
「……子供に負けるなんて」
「いや、外見に騙されているんだ」
「マフィアの首領が連れて来た時点で、普通じゃないのは分かりきっていた事でしょ」
「なんだか、肩こりも治ってないか?」
「言われてみれば……」
「天気君はもういいだろう。彩華ちゃんと戦ってくれ」
「……分かりました」
首領の呼び掛けに、疑問点を棚上げして、彩華が前に出るのを待つ四人。
「…………来ないのか?」
「後ろです」
真後ろからの声に振り返る四人。
その動作を利用して、四人とも投げる彩華。影分身を使えば余裕である。
が、名護屋川と居澱は受身を取ったので、返す形でもう一度投げる。叩きつける衝撃や反動を利用するだけで、何度でも投げを打てるのが柔術の利点だ。
他の二人は初手で床ペロ、ちょっとしぶとかったが、三回投げられて名護屋川達も床ペロした。
「動かないからって、油断大敵です」
「ぐ……。確かに」
医療忍術で打撲を治して、再度対峙するも、合気道と柔術のみで制圧される四人。
四人はきちんと武装もしているが、彩華相手に警棒や木刀、弓、拳銃は通用しない。
「変わり身が厄介過ぎる」
「拳銃は狙って撃つのに、動きが止まります。弓も同じですね。狙うと当てる場所を教えているに等しいので、忍術と空手を融合させた、陰にして陽の者には通じません」
「空手使ってないでしょう!」
「修羅の〇って知ってます? 空手にもカウンターがちゃんとあるので、変わり身で回避しつつ拳を出して、柔術や合気道で投げを打つんですよ」
空王となる訳ではないから、カウンターを外す事もある。
ただ、天気のような強さを持たない相手なので、全力に近い戦闘は出来ても本気にはなれないだけだ。
銃撃や矢が当たっても変わり身で避ける、木刀や警棒の振り下ろしも避ける。
「炎獄、貫け!」
「導一矢、百式!」
「豪の剣技、破断!」
「竜気、滅卦!」
次は初手から各々の必殺技を出す四人。
名護屋川が蒼い炎を走らせて、彩華を包むのと同時に、長谷部が木刀で打ち据え、天白の矢が途中で枝分かれしたかのように、複数の矢となって降り注ぐ。
最後に居澱の拳が胴体を貫くも、彩華は変わり身の術で全てをかわしてしまう。
「魔力やチャクラが少し使える程度、怖くもなければ予想外でもないわ」
多少とは言えど扱えるのと、全く使えないは違う。
では、魔力の質と量、チャクラの質と量が違うとどうなるのか。
差が大きいと僅かに威力が落ちるだけで、ほとんど通用しない。相手のチャクラや魔力を包めば、それは制御権を掌握したも同然となる。
「逸般人だろうけど、上には上が居るから。過信は良くないですよ」
影分身しながら、空手裏剣で四人の得物を切断し、天井や壁に投げて手刀を首筋に添える。
チャクラやら魔力を籠めるのに時間が掛かると、隙が生まれるので、即座に振り抜くような攻撃が肝要となる。
威力より手数で補う。アサルト・ライフルやマシンガンが多用されるのは、射撃が下手でも数撃ちゃ当たるから。
人間を含めた生物は、頭と心臓にダメージを負うと死ぬ。天気や彩華もそれは同じ。
ただ、簡単には食らってあげないだけである。
次にシズルと、再び武装して回復した四人が戦い、シズルは長谷部と天白を倒したが、名護屋川と居澱に負けた。
「分裂する矢は卑怯だと思うんですけどっ!」
「防いでいたお姉ちゃん・パワーも、大概だよね……」
導の矢による追尾での、マルチ・ロック矢は確かに卑怯だが、ほとんどを剣の振り回しによる空気の壁で防ぎ、落とせなかった矢は間近で掴んで止めてしまう。
この姉、海皇〇の剣士かな?
長谷部には剣で競り合うと見せ掛けて、剣を振り下ろしつつ銃撃。ゴム弾が頭部プロテクターを粉砕してノックダウン。
リベレーターを天白にぶん投げて、次の攻撃に溜めていたからか、反応が遅れてしまい腹に突き刺さった。
予備のリベレーターで居澱と組み合うも、名護屋川が警棒で打ち据えてくるので、意識を切り替えた瞬間を居澱に突かれてしまう。
至近距離からのゴム弾は避けれなかった。
最後にリノと戦い、天白は弓術と狩人の技の違いを思い知らされ、前衛の居澱ごと射抜かれてしまう。
矢にも弾と同様に種類がある。その違いと弓術との違いは大きい。
我〇乱の弓術に近い天白の弓矢は、狩人として貫通速射してくるリノの弓矢とはパワーと威力が違いすぎたのだ。
矢を矢で撃ち落とすばかりか、射抜いて粉砕されては、弓術も何もない。しかも前衛ごとと来た。
長谷部も二、三本矢が当たっているし、名護屋川も回避していく。
鉄を抜く矢は、純粋に火力が高いので、そう易々とは防げない。
矢を掴めるヤツなんてそんなに居ないし。
結局、リノは居澱だけ倒せた。居澱を抜いた矢が天白にも命中したが、戦闘不能には至らなかったので、三対一で近距離戦闘に持ち込まれると、後衛は厳しい。
リノはアーチャーではない。近距離戦用の武器も無く、矢を、弓を振り回して抵抗したがムダだった。
「姉さん、アーチャーって凄かったんだね」
「変わり身を使って、距離を取りなさいよ。うつせみのジツとか、一応教えたじゃない」
「お義兄ちゃん以外の前で脱ぐのは、ちょっと……」
「胸と股にガーゼとか絆創膏を、貼っておけばいいのよ」
「彩華、全裸装備はゲームだけにしなさい」
「そうだよ、メイドちゃん。義妹を露出狂にするのは良くないゾッ」
隠すべき場所を隠しているのに、と不満気な態度を取る彩華。
「彩華、脱ぐのはダメだからね。僕以外に見せたくないし、見られたくないから」
独占欲を感じ、彩華は仕方ないと諦めた。手のひらクルックルッである。




