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現代魔術師の暇潰し  作者: 元音ヴェル
スポーツマン・シップ(笑)
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カチコミ

 ある日、天気と彩華とリノは、シズルのバイトを手伝う事になった。


「デリンジャーを渡しておくぞっ」


「銃刀法違反……」


「私、妹専用の、コンパウンド・ボウがあるので」


「トカレフいる~?」


「ふむ、弟君だけでいいみたいだね。トカレフって、コピー品じゃん。ジャムったり、ライフル弾撃ったら爆発するんだぞっ」


 シズルのチョップをかわしつつ手首を掴み、左右に投げを打つ彩華。

 しかし、シズルは受身を取って、腕をひねりつつ月面宙返りして、ふりほどいて距離を取った。


「むぅ。ツッコミにガチの反応はダメだと思うんだけど?」


「身内にも警戒して何が悪いと言うのです。姉だからって言っても、まだ付き合いは短いんですけど~?」


「脱衣麻雀した仲でしょうに」


「ぐぅ……」


 シズルの指摘に、ぐうの()が出る彩華。

 リノはロシアからもって来た、コンパウンド・ボウを構える。


「義兄さんは何を使うんです?」


 天気はカトラリーのナイフを出す。中古品のヤツで、ステーキすらまともに切れない。


「ナイフらしいナイフは、職質で見つかると

 捕まるからね。カトラリーなら、マイ箸とかと言いきれるから」


 切れ味補正を付与魔法で底上げし、衣服ごと手足を削り切れる。


(ま、本当は速度による、高速戦闘が土俵なんだけどね)


 天気は戦闘が苦手だ。達人(アデプト)(・クラス)と戦えば、弱点を突かれて負ける。

 この世界に敵たる者は居ない。格闘家の師範代は(みち)(なか)ばで怖くない。所詮は高弟から選出されただけの、技術継承に重点をおいた実力しか、持ち合わせていない程度。守破離(しゅはり)のうち、離に至らない者は、どれだけ強くとも心が弱い。

 心が弱ければ、精神論に寄った奥義書や秘伝を読み解く事は難しい。


「マフィア達のヤクと、現金が入ったアタッシュケースを取る。邪魔するヤツのタマもとって追手は撒く。現地解散後、ヤクは学校の黒板裏に、金は私の家に隠す。異論は受け付けない。じゃ、行くぞっ!」


 カチコミに行くシズル。出入りとも言うが、カタギには関係ない。

 シズルのみ現場に乗り込み、リベレーターを撃ってマフィアの構成員を一人、ヘッド・ショットで仕止める。

 プレス加工された単発式の、手動で排莢と装填をするモノ。ライフリング無しの申し訳程度の銃身。つまりクソ。

 銃と弾のパッケージ価格は2ドルちょっと。十発の拳銃弾がグリップに入っているが、全弾は撃てない。有効射程はだいたい三メートル程度。最大射程は十五メートルあるらしい。


 シズルが持つリベレーターの、薬室辺りから上に片刃の剣が生えており、シズルは縮地からの無拍子で切りつけたり、突きを繰り出す。

 相手の拳銃を見なくても、銃身を剣の腹で叩いて反らし、反動で勢いをつけて反対側に振るい、他の銃身を短い銃身で反らしつつ切りつける。

 打ち据えた構成員達が発砲した弾丸が、明後日の方向へ向かう。運のない構成員が被弾し、更に痛みから発砲して、あらぬ方向へと弾が飛ぶ。


「な、何者だ、お前!」


「悪の組織だっ!!」


 誰何(すいか)啖呵(たんか)で答えつつ、なおも切った張ったの丁々発止。


「ナメんな、クソアマッ!」


「おかわりもあるぞっ!」


 二丁目のリベレーターをいつの間にか取り出してブッ放す。元々装填済みのをいくつか持っているのだろう。危ないなぁ。


「セイクリッド・ビヨンド!」


 回りにいる敵の膝や頭を踏みつけつつ、飛び上がって改造リベレーターを一つ投げつけ、お姉ちゃん・パワーでグリップ内の拳銃弾が暴発し、周囲に破片と銃弾が散らばる。


 逃げ出す構成員もいたが、リノが曲射で真上から頭部、鎖骨の内側、肩、足の爪先を狙って射抜く。


「良く狙って、風と敵の動きを読みつつ、修正、修正……コロナ・レイン!」


 マグネシウムとリンが主な主要配合となる鏃、それが空気抵抗で先端部が僅かに欠けて後部に擦れ、摩擦によって火矢となり降り注ぐ。


「おー。派手だなぁ」


「妹も強い。国境沿いで狩人をしながら、平凡な日々を過ごしていたのは伊達じゃないようね」


 リアル狩人は動物なら何でも狩る。ナニを成して来たのか、ナニをするのかは見ていれば察せるものだ。

 見ていてね、狩人が何をするのかを!


 天気はドスを振り回すマフィアをあしらい、腕や指を切り落とす。彩華は手榴弾を見ても冷静に、投げてきた方向へと蹴り返す。

 アタッシュケースとヤクを影分身が回収し、シズルとリノに合図を送って、現場から離脱する。

 合流地点に四人が揃うと、天気は月の裏側に降り注ぐ流星群を収納から出し、取引現場に使われた倉庫と周辺の倉庫も巻き込み、クレーターが出来るまで、威力を維持したまま何度も隕石が落ちた端から上空へと転位させていく。

 月の重力に捕まる隕石は小さいので、捕まらなかったとしても、地球の大気圏に突入した際は摩擦熱で熔け砕ける。

 その小さい隕石がある事自体がフィクションとなるので、警察の鑑識や科捜研は論理的矛盾に悩む。




「シズル義姉さんは、何でトカレフよりクソを使ってるの? リベレーターなんて弾が出るだけの鉄屑じゃない」


「撃って弾が出るなら、銃はそれで良いんだぞっ。メイドちゃん」


 うーん。暴論で極論だけど、一流の殺し屋とかならそれが正しい。二流は武器を選ぶけど、手放す時は手放せる。三流は自慢気に語り、装飾にも拘るからなぁ。

 山猫(オセロット)が蛇にダメ出しされたのも、同じような理由だし。


「リノちゃん。火矢は禁止で、証拠として残りやすいし」


「むう。ロシアではすぐに消えるし、家屋が燃えると暖をとりにくる人もいるんですけど……」


「ここは日本だから、鉄板やコンクリートが多い。鉄すら抜く仕込みの矢を使った方が良いよ」


 天気は収納魔法から、フィンガー・グローブと仕込み矢、それ専用の矢筒を出して、リノに手渡す。


「弟君。お姉ちゃんにも何かない?」


 ちょっと考え、フィンガー・グローブと、握り部分が横に出っ張ったメリケンサックを、シズルに手渡す。


「ありがとう弟君♪」


「剣じゃなくていいんだ……」


「改造リベレーター、いっぱい持ってそうだからね。無くなるまではお預けかな」


「お姉ちゃん頑張るから、誕生日プレゼントに取っておいてねっ」


 シレッと剣をねだるシズル。おそらく、刃物なら包丁でもマフィアを殺れる事だろう。

 あと、天気が誕生日を忘れていても気にしないで、誕生日おめでとう、の声だけでも満足しそうではある。

 赤の他人のまま過ごす選択もあったのに、腹違いの姉としてカミングアウトするあたり、サイコサスペンスな狂人と呼べる存在だろう。

 いや、下手すると赤の他人でもお姉ちゃんだよって押し掛けて来そうではある。この姉、強くね?!

 リノも引き取られなかったら赤の他人として、親戚や施設をたらい回しにされていただろう。

 酷い施設になると、借金を押し付けられて放逐される。内臓を売っていくか、身体を売っていくかの違いで返済していく、そんな未来もあったかもしれない。


(六十四億円の借金が、紐付けされていても驚かない……)


(ワイの賭け金か、欲しければ、くれてやる!! この世の賭け事の負債をソコに置いて来た。探せ! 世はまさにギャンブル時代ってね!)


 今も戦争している国は、勝っても負けても悲惨な事となる。

 貧困層や戦傷兵は特に。モノ乞いになっても、冬将軍が死を押し付けるのだから。


(シズル姉さんも、ヒットマンとして弱かったら借金させられてそう。あるいは高額な生命保険に加入してそう)


 南米と一口にいっても、麻薬栽培、カルテル、密売、と色々なネガティブがある。

 ヒットマンとしての功績は母親に行くだろうから、単純にシリアルキラーとして処分されてもおかしくない。

 問題は組織が思った以上に、姉の戦闘力が高い事だろう。

 日本に居る点も加味すると、手出しが更に難しい。しかも下宿先が久野家。

 パンピーと思って手出しすれば、彩華によって情報が握り潰されるし、天気によって罠を防がれる。

 今のところ、組織の報復とかが無いので、そこだけが救いだ。

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