妹なる人
自転車を押して帰宅すると、庭に知らない女子がお義母さんと話していた。
「お帰りなさい。あら、そちらは?」
「はじめまして。私、世良シズルと申します」
事情やら経緯やらを説明し、分厚い封筒を手渡すシズル。
「御厚意はありがたいけど、天気君のお母さんから貰ってるから。これは受け取れないわ。シズルちゃんのお母さんにも、そう伝えてくださるかしら?」
「分かりました。母にも伝えておきます」
「……さて、こっちの女の子を紹介しましょうか」
「お義父さんの従弟の娘の、デグレチャフ・リノです。リノと呼んで下さい。お姉ちゃん、お義兄ちゃん」
淡い水色の瞳に栗毛のスクイレル・テール。赤色の洋服にスカート、サンダル。天気達より少し小さい背丈の少女が、挨拶してお辞儀する。
はえーよ、妹の登場。こっちは彩華の血縁か。
なんだか、この調子だと、兄とか弟とかも出てきそうだなぁ。どっちの血縁か知らんけど。
「戦争で伯父である、リノちゃんのお父さんが亡くなって、親戚をたらい回しにされそうになっていたんだけど、お父さんが引き取ったの。小学三年生で、貴方達の後輩になるわ。同じ学校に通うし、天気君の部屋に、住んでもらう事になるから」
「……あの、私も下宿する事って出来ますか?」
分厚い封筒を再び差し出すシズル。
「えっと、リノちゃんと同じ部屋になるけど、いいかしら?」
「わ、私は構いません。おば様の家ですので」
ソッコーで札束ビンタを決めたぞ、この姉。
「ちょっと母に電話してきますね」
「……しっかし、まぁ、腹違いの姉とはね。お父さんにメールしなくちゃ。やったね、家族が増えるよ! 事情も書いて送信ー」
「お義母さん、荷物をどかしてきますね」
「て、手伝います。お義兄ちゃん!」
自室へ向かうと彩華が既に天気の私物を、彩華の部屋に持っていっており、影分身がリノとシズルの私物を運んでいた。
「妹とご主人様の仕事、ないから。リビングでお茶しましょう」
「アッハイ」
「ふ、増えてる。ニンジャは居たんだっ」
……そう言えば、シズル姉さんは影分身を認識したままだったな。妹もか。
認識阻害魔法も、血縁や因果が近いと不発に終わる事もある。フィクションがノンフィクションとして切り替わる為、影響力を受けないのだ。
「二人とも、これ見える?」
六角形の障壁を繋げて、大きなバリアとして展開する天気。
「ゾル〇ラーク防ぎそう……」
「弟君は魔法使いなんだ!」
彩華も忍術を披露してみる。
「牛忍と猿忍を組み合わせると、レールガンが撃てる!」
天気の障壁に、電磁力で加速させたメダルをぶつける彩華。
弾いたメダルは収納魔法で、威力ごと収納した。
「メダルは別途必要になるみたいね」
「ニンジャスゴーい!」
やはり認識阻害魔法が効いていない。第三者からすれば、ただ雑談しているだけに見えているし、話し声も雑談のセリフになる。
しかも魔法や忍術が終われば、何かスゴかった程度の認識となるものだが、しっかりと覚えているようだ。
(この義姉と妹は使える! 天気のハーレム要員にしよう!)
(姉の戦闘力は申し分ない。義妹の運動能力次第で、部活の助っ人に加えよう)
お互いにコキ使う事では共通認識だが、用途は違う。
彩華は母を含めたハーレム要員として、義姉と妹の性格や肉体的成長を、矯正したり誘導したりして天気好みにする。
天気は暇潰しの部活の助っ人に使える。特に姉はスケープゴーストとして、天気の代わりに目立たせる事もあるだろう。
(……マフィアとヤクザだけでなく、半グレも締める必要があるわね)
「リノちゃんは明日から、転校生として編入するから」
「お義兄ちゃん、お義姉ちゃん、彩華姉さん。よろしくお願いします」
「学校で困った事があったら、色々と頼ってね」
昼食はファミレスで食べ、夕食の買い出しにお義母さんと彩華の影分身が向かう。
引っ越し祝いと、単純に人数が増えた事による材料の補充だ。
天気達四人は町の案内を軽くして、通学ルートや小学生の集まる公園とかを巡る。
ちなみに、リノが日本語が達者なのは、ボーカロイドの曲をよく聞き、意味を調べたりしたからだとか。
「マンガとかアニメに出てくる料理も、日本だと食べれるのが良い」
「あー、寿司とか海外だと、オリジナルからかけ離れた改造になってるからか」
「カレーと同じで、インドのカレーと日本のカレーは違うものだし。ドイツのハムの種類をドイツ人に語らせて、違いが分からないと言ったら、日本の寿司も全部似た魚だってツッコミされるし」
ハムの種類と魚の種類という違いはあるが、名前を伏せて出したら、見た目は何かの肉、白身か赤身で、あるいは何の魚かは、食べるまで分からないので。
夕食は焼肉と鍋モノを食べ、シメは雑炊となる。
天気と彩華が一緒に風呂に入る事に驚くシズルとリノだったが、お義母さんに次は二人一緒に入ってと言われて、やや困惑する。
「節水、節電、風呂の順番待ちの短縮とかもあるから。よろしく」
「わ、分かりました」
シズルとリノは裸の付き合いをして、天気が入った風呂の残り湯に、ドキドキしながら入った。
「お父さん、肩身が狭くなるだろうけど、我慢してね?」
「思春期は難しいから仕方ないネー」
今年の冬合宿は二人にも参加してもらい、サバイバル技術の基本を教えこむ事になる。




