口移し
四年生のある日。自転車に乗って天気と彩華は、コンビニに寄っていた。
対象商品を買うと、クリアファイルを貰えるキャンペーンをしているので、チョコ菓子をいくつか買うのだ。
「保冷バッグに入る?」
「クリアファイルは入らないわね。送っといてよ。チョコは公園で一つ食べましょう」
自転車二台で公園まで移動する。
二人乗りしたり、肩車したりして乗ったりはしない。
警察官の相手はあまりしたくないから。
試しに肩車して自転車に乗ったら、パトカーに追い掛けられたので、アクロバティックに塀や屋根上をつたって逃げるも、先回りされていた。
一端は止まるも、警察官が近づいてきたら壁を走って逃げる。
再び追い掛けられたので、警察署に向かう。
しつこい警察官は、彩華が集めた弱味を公開して、社会的に始末してくれるわ!
警察署の駐車場で大立回りしつつ、彩華は取り押さえようと近づく警察官の顔を見ては、その警察官の弱味を盛大にさらしていく。
浮気の証拠写真、経費の横領書類、またはそれに近い経費計上の書類を手裏剣として折って飛ばす。
さらに拳銃管理の甘さとして、厳重に保管されているはずの弾薬もばらまき、血税で作られた弾が駐車場に散らばっては、警察官が右往左往する。
刑事の人が突っ込んで来るも、天気の動きに合わせて彩華が投げ飛ばす。
盾を構えても盾ごと彩華の拳が抜く。空手の技の中にはボーリング玉を砕くモノもあるので、盾くらいなら貫通は容易い。まぁ、持っている人が衝撃に負けて、手首が折れるのでそれは魔法で癒す。
マンガのように、山となって積み上げられる警察官達。それを見て野次馬は写真や動画を撮る。
「う、動くな!」
「お、銃を抜いたぞ」
「警告無しの射撃は犯罪だよ~? 一発でクビだ!」
「ヒソヒソ。子供相手に銃を向けるなんてサイテー」
彩華や野次馬が煽ると、拳銃を抜いた警察官は青筋を浮かべて震え出す。
「そもそも、二人乗りで自転車に乗ってる子供相手に、何の脅威があるのかな?」
「第三者の視点で不審者なら分かるけど、軽犯罪、もしくは交通法違反程度で、拳銃を取り出すんだ」
基本的に警察官は相手の脅威度に合わせて、警棒を振るうなり、柔道の投げ技を出すなりする。
無手の相手に拳銃を抜く事は、それだけでアウトだ。簡単に揉み消せるような時代でも無い。
ちなみに、射殺権というモノが、戦後の警察官に与えられていた暗黒の時代もあったとか。問答無用で撃ち殺せる、治安維持の為なら殺してもいい。正義の名の下に堂々と殺人が許される、サイファー・〇ールの人間が言いそうなセリフだが、これが国家のやり方だ。
国家とは、ヤ〇ザよりヤバい存在。国家の手足として公営のヤ〇ザが法の番人となる。
「撃ってみろよ」
「観衆の面前で、警察官が発砲。子供相手に正義の金看板で威圧的態度。撃てるものなら撃ってみなさい!」
射撃音が鳴り響く。
彩華の胸部にクリーン・ヒット。しかし、次の瞬間には消えて、代わりに丸太が撃ち抜かれていた。
「明日の朝刊に載ったぞ! テメェー!!」
警察官の股間を蹴り、一発ダウンさせる。玉はかろうじて無事だ。手加減くらいできる。
「ヒソヒソ、撃ったぞ」
「ヒソヒソ、子供相手に大人気ない」
「ヒソヒソ、ただでさえ二人の子供相手に、大人数で向かった挙げ句。発砲までするなんて、警察の質も落ちたものだわ」
「ヒソヒソ、警告なしで子供に当てる射撃、避けてなかったら死んでるな」
「ヒソヒソ、横柄な態度をとる、権力を笠にきる、すぐに銃を取り出す、そんな警察官はクビにするべきだ」
次第に観衆は、警察署へと向かうように動き出す。
天気達は暴れるのに満足して、警察署を後にしたが、パトカーに追い掛けられる。
「そこの二人乗り、止まりなさーい!」
「あの警察官、開き直ったのかな?」
「……あとで家にダンプ突っ込ませるわ」
地上げ屋が土砂満載のダンプを家に突っ込ませるのは、交通事故に済ませられるから。
後ろから家へとバックするだけで、三トン以上のモノが三十キロの速度で当たると、コンクリの塀やビルの角すら抉れていく。
また、死傷者が出ないように家を空けている時を狙うし、ターゲットの近くで工事しているとか、ルート的に近道だから通ったとかの言い訳も用意しておくので、警察側も強くは出れない。
交通事故による物損となるので、保険で家の修繕は出来るが、家財までは保障されない事もある。
だからダンプが使われるのだ。
パトカーが増えるも、所詮は自動車。狭い路地に逃げてしまえば振り切れる。
「ウッソ、片輪走行して来た!」
「公共車をルパ〇のように走らせるな!? 警察のムチャな追跡が事故の元なんだよ!」
「報道とかでは追跡や逮捕は適切だったとか言うんでしょ。スマホで撮ってるから、後でたれ込んでやるわ!」
室外機や家の壁に接触しつつ、パトカーが路地を通る。
天気は三角飛びの要領で壁を蹴り、反対の壁を走らせて、パトカーの真後ろへと着地した。
「あばよ、とっつぁん!」
「ま、待ちなさーい。本官は二十代です!」
「……いや、小学生からすれば、オッサンに代わりないわね」
バックして来たので、少しドン引きしつつ離れていく。
「無敵の人って、警察官にもいるんだね 」
「正義と法の名の下に、不祥事は揉み消せると思ってるんでしょ」
国家を相手に勝つ必要は無い。小学生という身分を利用すれば、大人は自滅するものだ。
子供相手に大人気ない大人の多い事。しかも警察官、世論がその態度を許すはずがない。
後日、警察署の警察官は半分近くが減俸三ヶ月、パトカーの警察官は停職一ヶ月となったらしい。
やっぱ公営のヤ〇ザは汚ない、子供相手に撃った警察官は暴発とかで処理されてるし。更に炎上してるけど、エーックスの書き込みは無視してるようだ。
彩華は本物ヤクザにお願いして、二回ほどダンプを警察署へと突っ込ませた。
見返りは脱獄の手引き、刑務所の四方の塀を爆破しておく。
また、拳銃で彩華を撃った警察官と一番の上司である署長は、処分が甘いとキレた天気が、転位魔法で南極に棄てておいた。
毎日二万人くらいの行方不明者が出るので、二人増えた程度は誤差だし、行方不明となった理由も調べれば、良心の呵責に堪えられずとかなんとかになる。心にも無い事でも、言ってしまえば言った者勝ちとなる。
公園で自転車を止め、ベンチでチョコを食べていると、クレープ屋の自動車が止まり、移動販売がはじまった。
「……クレープ買う?」
「チョコソースのクレープにチョコをぶちこむのね。一個を分けましょう」
彩華が買ってきて、天気に差し出す。
「先に食べて、どうぞ」
「ご主人様が先よ」
「え、そう? では一口」
クレープを食べて、チョコを口に放り込む。
「うまい」
彩華もクレープをかじる。天気が食べた部分を、間接キスみたく食べ、チョコを更に食べて咀嚼し、天気の後頭部に手を回して口移しで流し入れる。
「むぐぐっ! まっ、待って!」
油断した天気の口内に舌を入れる彩華。
(メッチャ動くじゃん。サクランボのへたを結んでたりしたのは、こーゆー時の為だったのかっ!)
彩華は、舌でサクランボのへたを結べる。という特技のような、くノ一の嗜みのようなモノがある。
「……次は私に食べさせて?」
「ひゃ、ひゃい……」
舌が、というか口内を蹂躙されて、口が回らない天気。しかし、彩華が求めているのでクレープとチョコを含み、彩華が雛鳥のように開ける口へ押し込む。
(天気が必死に舌を動かしてくれてる。……口内を開発されちゃうっ!)
彩華は天気に何をされても感じるように、チョロい感性を持っている。わりと無敵なメイド。
そんなゲロ甘なイチャイチャ空間を醸し出す、かも……いや、ゲロ甘な中性子爆弾の爆破現場たる公園のベンチに、突撃してくる人が、勇者がいた。
「あー! 探しましたよ! 弟君! あと弟君のメイドちゃん!」




