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現代魔術師の暇潰し  作者: 元音ヴェル
スポーツマン・シップ(笑)
24/141

口移し

 四年生のある日。自転車に乗って天気と彩華は、コンビニに寄っていた。

 対象商品を買うと、クリアファイルを貰えるキャンペーンをしているので、チョコ菓子をいくつか買うのだ。


「保冷バッグに入る?」


「クリアファイルは入らないわね。送っといてよ。チョコは公園で一つ食べましょう」


 自転車二台で公園まで移動する。

 二人乗りしたり、肩車したりして乗ったりはしない。

 警察官の相手はあまりしたくないから。



 試しに肩車して自転車に乗ったら、パトカーに追い掛けられたので、アクロバティックに塀や屋根上をつたって逃げるも、先回りされていた。

 一端は止まるも、警察官が近づいてきたら壁を走って逃げる。

 再び追い掛けられたので、警察署に向かう。

 しつこい警察官は、彩華が集めた弱味を公開して、社会的に始末してくれるわ!


 警察署の駐車場で大立回りしつつ、彩華は取り押さえようと近づく警察官の顔を見ては、その警察官の弱味を盛大にさらしていく。

 浮気の証拠写真、経費の横領書類、またはそれに近い経費計上の書類を手裏剣として折って飛ばす。

 さらに拳銃管理の甘さとして、厳重に保管されているはずの弾薬もばらまき、血税で作られた弾が駐車場に散らばっては、警察官が右往左往する。

 刑事の人が突っ込んで来るも、天気の動きに合わせて彩華が投げ飛ばす。

 盾を構えても盾ごと彩華の拳が抜く。空手の技の中にはボーリング玉を砕くモノもあるので、盾くらいなら貫通は容易い。まぁ、持っている人が衝撃に負けて、手首が折れるのでそれは魔法で癒す。

 マンガのように、山となって積み上げられる警察官達。それを見て野次馬は写真や動画を撮る。


「う、動くな!」


「お、銃を抜いたぞ」


「警告無しの射撃は犯罪だよ~? 一発でクビだ!」


「ヒソヒソ。子供相手に銃を向けるなんてサイテー」


 彩華や野次馬が煽ると、拳銃を抜いた警察官は青筋を浮かべて震え出す。


「そもそも、二人乗りで自転車に乗ってる子供相手に、何の脅威があるのかな?」


「第三者の視点で不審者なら分かるけど、軽犯罪、もしくは交通法違反程度で、拳銃を取り出すんだ」


 基本的に警察官は相手の脅威度に合わせて、警棒を振るうなり、柔道の投げ技を出すなりする。

 無手の相手に拳銃を抜く事は、それだけでアウトだ。簡単に揉み消せるような時代でも無い。

 ちなみに、射殺権というモノが、戦後の警察官に与えられていた暗黒の時代もあったとか。問答無用で撃ち殺せる、治安維持の為なら殺してもいい。正義の名の下に堂々と殺人が許される、サイファー・〇ールの人間が言いそうなセリフだが、これが国家のやり方だ。

 国家とは、ヤ〇ザよりヤバい存在。国家の手足として公営のヤ〇ザが法の番人となる。


「撃ってみろよ」


「観衆の面前で、警察官が発砲。子供相手に正義の金看板で威圧的態度。撃てるものなら撃ってみなさい!」


 射撃音が鳴り響く。


 彩華の胸部にクリーン・ヒット。しかし、次の瞬間には消えて、代わりに丸太が撃ち抜かれていた。


「明日の朝刊に載ったぞ! テメェー!!」


 警察官の股間を蹴り、一発ダウンさせる。玉はかろうじて無事だ。手加減くらいできる。


「ヒソヒソ、撃ったぞ」


「ヒソヒソ、子供相手に大人気(おとなげ)ない」


「ヒソヒソ、ただでさえ二人の子供相手に、大人数で向かった挙げ句。発砲までするなんて、警察の質も落ちたものだわ」


「ヒソヒソ、警告なしで子供に当てる射撃、避けてなかったら死んでるな」


「ヒソヒソ、横柄な態度をとる、権力を笠にきる、すぐに銃を取り出す、そんな警察官はクビにするべきだ」


 次第に観衆は、警察署へと向かうように動き出す。

 天気達は暴れるのに満足して、警察署を後にしたが、パトカーに追い掛けられる。


「そこの二人乗り、止まりなさーい!」


「あの警察官、開き直ったのかな?」


「……あとで家にダンプ突っ込ませるわ」


 地上げ屋が土砂満載のダンプを家に突っ込ませるのは、交通事故に済ませられるから。

 後ろから家へとバックするだけで、三トン以上のモノが三十キロの速度で当たると、コンクリの塀やビルの角すら抉れていく。

 また、死傷者が出ないように家を空けている時を狙うし、ターゲットの近くで工事しているとか、ルート的に近道だから通ったとかの言い訳も用意しておくので、警察側も強くは出れない。

 交通事故による物損となるので、保険で家の修繕は出来るが、家財までは保障されない事もある。

 だからダンプが使われるのだ。


 パトカーが増えるも、所詮は自動車。狭い路地に逃げてしまえば振り切れる。


「ウッソ、片輪走行して来た!」


「公共車をルパ〇のように走らせるな!? 警察のムチャな追跡が事故の元なんだよ!」


「報道とかでは追跡や逮捕は適切だったとか言うんでしょ。スマホで撮ってるから、後でたれ込んでやるわ!」


 室外機や家の壁に接触しつつ、パトカーが路地を通る。

 天気は三角飛びの要領で壁を蹴り、反対の壁を走らせて、パトカーの真後ろへと着地した。


「あばよ、とっつぁん!」


「ま、待ちなさーい。本官は二十代です!」


「……いや、小学生からすれば、オッサンに代わりないわね」


 バックして来たので、少しドン引きしつつ離れていく。


「無敵の人って、警察官にもいるんだね 」


「正義と法の名の下に、不祥事は揉み消せると思ってるんでしょ」


 国家を相手に勝つ必要は無い。小学生という身分を利用すれば、大人は自滅するものだ。

 子供相手に大人気ない大人の多い事。しかも警察官、世論がその態度を許すはずがない。


 後日、警察署の警察官は半分近くが減俸三ヶ月、パトカーの警察官は停職一ヶ月となったらしい。

 やっぱ公営のヤ〇ザは汚ない、子供相手に撃った警察官は暴発とかで処理されてるし。更に炎上してるけど、エーックスの書き込みは無視してるようだ。

 彩華は本物ヤクザにお願いして、二回ほどダンプを警察署へと突っ込ませた。

 見返りは脱獄の手引き、刑務所の四方の塀を爆破しておく。

 また、拳銃で彩華を撃った警察官と一番の上司である署長は、処分が甘いとキレた天気が、転位魔法で南極に棄てておいた。

 毎日二万人くらいの行方不明者が出るので、二人増えた程度は誤差だし、行方不明となった理由も調べれば、良心の呵責に堪えられずとかなんとかになる。心にも無い事でも、言ってしまえば言った者勝ちとなる。



 公園で自転車を止め、ベンチでチョコを食べていると、クレープ屋の自動車が止まり、移動販売がはじまった。


「……クレープ買う?」


「チョコソースのクレープにチョコをぶちこむのね。一個を分けましょう」


 彩華が買ってきて、天気に差し出す。


「先に食べて、どうぞ」


「ご主人様が先よ」


「え、そう? では一口」


 クレープを食べて、チョコを口に放り込む。


「うまい」


 彩華もクレープをかじる。天気が食べた部分を、間接キスみたく食べ、チョコを更に食べて咀嚼(そしゃく)し、天気の後頭部に手を回して口移しで流し入れる。


「むぐぐっ! まっ、待って!」


 油断した天気の口内に舌を入れる彩華。


(メッチャ動くじゃん。サクランボのへたを結んでたりしたのは、こーゆー時の為だったのかっ!)


 彩華は、舌でサクランボのへたを結べる。という特技のような、くノ一の嗜みのようなモノがある。


「……次は私に食べさせて?」


「ひゃ、ひゃい……」


 舌が、というか口内を蹂躙されて、口が回らない天気。しかし、彩華が求めているのでクレープとチョコを含み、彩華が雛鳥のように開ける口へ押し込む。


(天気が必死に舌を動かしてくれてる。……口内を開発されちゃうっ!)


 彩華は天気に何をされても感じるように、チョロい感性を持っている。わりと無敵なメイド。

 そんなゲロ甘なイチャイチャ空間を醸し出す、かも……いや、ゲロ甘な中性子爆弾の爆破現場たる公園のベンチに、突撃してくる人が、勇者がいた。


「あー! 探しましたよ! 弟君! あと弟君のメイドちゃん!」

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