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現代魔術師の暇潰し  作者: 元音ヴェル
スポーツマン・シップ(笑)
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バクシン! バクシン!!

 夏休みも終盤のある日、天気達はとある市民マラソンに参加してみた。

 結構な数の参加者に、実業ランナー、アスリート選手もいる。

 小さいので、後方からスタートする事となった。


「ブッチギリで行くわよ!」


「肩車する~?」


「しないわ。今日は走るんだからね!」


「そりゃそうだね」


 スタートの合図が聞こえた。

 後方なので、出だしは緩やかとなる。

 二人は小ささを活かして、参加者の隙間を縫うように走っていく。

 気配を消しているので、誰も気付かない。気付いた時には誰もいない。

 先頭集団に追い付き、そのまま駆け抜けごぼう抜きする。


 高校生や大学生が走るマラソンにはペース・メーカーという、先頭より先を走る人がいるのだが、市民マラソンにはいない事もある。

 楽しく走るのが目的のマラソンなので、タイムを気にする参加者より、完走する事を目的とした参加者が多いからだ。


「おっと、小学生でしょうか。先頭集団を抜き去っていきました」


「速いですねぇ。白バイやカメラマンの車が慌ててますが、すぐにバテるでしょう」


「普通は後方で速度を上げて、バテるものですよね」


「たまにある事です。小学生とかなら、なおさら焦ってしまうような、感じになりますからね」


 抜かれた先頭集団も、落ち着いて走っている。

 すぐにバテると誰もが思っていた。


「……えー、ハプニングはありましたが、実力者達は平然としています」


「これが高校生とか、中学生とかなら笑われてますが、小学生相手にムキになる方は、まず居ませんからね」


 カメラマンや白バイもペースを戻そうとする。

 その車体の真横を通る天気達。


「……どうする?」


「いや、小学生はバテるから。こっちを撮ろう」


 中継車内でもざわついたが、車すら抜いていった小学生は無視された。


「……第一チェック・ポイントを先頭集団が通過しま……え?」


「どうされました?」


「す、既に通過した参加者がいるようです! あの小学生二人がまだ走っているとか」


「何を言ってるんです。十キロもあるのに、あんな短距離走の走りが、続く訳ないでしょう」


 ド正論を言う解説役。実況役はタイムを見て、瞬きし、二度見する。


「17分ジャストです……」


「はぁ?」


 天気と彩華は、百メートルを十秒で走れるので、出だしにややもたついたが、一キロなら百秒、十キロは千秒で走っていける。もたついたために17分となったのだ。

 42.195キロなら、約4220秒もあれば完走できる。

 高低差や上り坂、下り坂、路面状況は無視出来るので、こんなバカげたタイムとなってしまう。


「チェック・ポイントのスタッフの測定では、17分ジャストで、小学生と思われる参加者が走っていったそうです」


 このペースでいくと、次のチェック・ポイントも17分台となる。


「そ、測定ミスでしょ」


「映像を出してみましょう」


 予備の中継車が天気達の後方に追い付き、カメラマンと現地リポーターが中継していく。


「本当に走っている。……百メートル十秒台のペースですかね。……あり得ないんですけど」


「男の子と女の子が並走してますね。参加者名簿と番号を捜しています。しばしお待ち下さい」


 コースに沿って走る。上り坂でもペースが落ちない。

 道沿いの応援する人々は、参加者とは思っていないようで、二人を大声で注意している人もいた。


「観客の子供が勝手に走っているぞ」


「親はどこで何しているんだ!」


「警備員とか、運営スタッフは?」


 罵声や怒号を無視し、なおも爆走。

 第二チェック・ポイントを通過しつつ、水分補給の紙コップを手に取っていく。


「走りながら、女の子が男の子に手渡してます」


「なんでペースが落ちないんですかね?」


「わかりません」


 実況と解説が匙を投げた。


「えー、先頭、いえ、中堅集団が観客からの情報提供に、困惑しておりますが、気持ちはわかります」


「ペースを上げる参加者と、このままで走る参加者に別れるようですね」


「追いかける形、になるのでしょうか?」


「まぁ……タイムをムリしてでも、縮めようとしているんでしょう」


「参加者の、自分に合わせていたペース配分は、メチャクチャでしょうね」


「それは仕方ありません」


 第三チェック・ポイント、第四チェック・ポイントと爆進(バクシン)していく。


「バクシン! バクシーン!」


「バッチリ挨拶! クラスの頼れる! シッカリ勉強! ンーッと走ってバクシーン!」


 並走したまま、バクシン体操しつつゴールする天気達。


「インタビュー受ける?」


「トイレに行きたい。用を足したら帰ろう」


「分かったわ」


 トイレに駆け込み、二人はトイレの個室でテレポートし、自宅の風呂場に帰宅する。

 リポーターはトイレに突撃までは出来ないので、トイレの近くで出待ちしていたが、実業団の参加者がゴールするまで、小学生が現れなかったので諦めた。



 後日、参加者名簿より住所を割り出し、優勝者の景品が郵送された。ゆるキャラのぬいぐるみと賞状が二つずつ。

 それと、バックレた事に対しての注意文が入っていた。

 バッチリ撮られていたりしたが、ライブ配信や録画放送が終わると、視聴者やテレビ関係者は興味を失う。

 ニンジャ・リ〇リティー・ショックとはそんなモノだ。

 たまに通用しない人も居るが、一部で騒ぐような輩と見なされて流される。

 事実を直視すれば、脳への負荷が耐えられない。防衛本能を意図的に無視するには、肉体を精神が凌駕するしかないのだ。

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