第2話「おやすみ、寝るね」
数年後
『今日の訓練終わった? 通話でもいいから一緒に夕ご飯食べたいな』
スマホを持ったまま両方の手に持ったまま2本の親指で1秒に1文字よりもたぶん少しくらい早いスピードで文字を打っていく。書き終わった後、ゆっくりと息を吐きながら脇を力を入れないで閉めた状態で、ただもも姉とのラインを眺めてた。
画面に反射するので僕の水色の瞳とそれに近づいてる眉毛の様子を見たら、すぐにそこに力を入れながら片方の目に拳の硬い所を押し付けながら、もう片方の腕を落っことす。それと一緒にラインに入力してた文字も全部消した。
それから背中の近くにあった手すりに体重を乗せる。それでしばらくただ上の方に視線を向けながら、ただそっちの方にあるモニターを眺めてた。
そっちでは、また元は学園のエースだったやつらが今度は第五支部を全壊させたニュースを生徒が取り扱ってて。それからしばらくまた別のニュースを取り扱ってるみたいで。
でも、その間学校の入り口前の広場になってる箇所につながってる吹き抜け。それがある方に背中を預けながら狭めに目を開けてる。だけど、僕がいる二階よりもさらに上の方まで建物が続いてて、とてもその階数が何個かなんてわからない。
だけど、一番上の方にあるような気もするガラス張りの天井の方から降り注いでる太陽の光が見えてるのか見えてないのか。そんな様子だけをただ眺める。その間も、周囲ではうるさいくらい高い声で笑いながら手を叩いてる女子だったり、一緒に歩く他の女子が、やたら甘ったるい声を出しながらいたり。その声と一緒に靴が床を叩く音が聞こえてるのは変わらない。
僕が上の方を眺めてる間、上の階層にももちろん廊下とそれがいくつも重なるみたいになってるのを数えようとするけど、どれもおなじ形をしてるせいで途中でわけわかんなくなって、また前の方を見た。
そっちには学園の中庭があって。そこに色とりどりのチューリップが植わってる姿が嫌でも視界に入ってくる。小さく息を吐きながら視線をまっすぐに向けながら、その中心辺りにある噴水を見てると、なんだか口元の下の所にえくぼが出来る感じを味わうことになってた。
それを前までよりもちょっとだけ目を大きく開きながら見つめてるだけ。それでも、こっちと噴水の間にある窓ガラスには僕の姿だけが反射して映ってて。でも、たぶんいつもよりも小さく、肩くらいの高さに頭が来てる感じになってた。
少しの間はそっちを見てるつもりだったのに、上の所に取り付けられるモニターが兵頭彩芽のことを取り上げだしたせいで、息を吸いながら視線をそっちに吸われて。口をほんのちょっとだけ開けながら見つめてた。
でも、話が進むにつれて、僕との件も話してて。それのせいで喉と口を閉じながら帽子の位置を整えて。それから両方の手をポケットに入れながら出来るだけ足をまっすぐにした状態で歩き出してた。
でも、自分の足音が周囲で話してる他の子たちの声の中でも少しくらいは聞こえてて。でも数歩進んである間にどんどん自分で動かしていくペースを高めていく、でも、それと一緒に自分の肩に力を入れながら、それを両方とも持ち上げて締め付けてる。気づけば歩幅もだんだん小さくなってる。そうしながら上唇に下の唇を押し付けながら顎も同じ感じにする。
そのまままっすぐに進んでたら、しばらくずっと中庭側に並んでた窓がなくなったことで、廊下全体の黒い影が濃くなってる場所に近づく。さっきまで明るかった右側には校舎として、いつも僕らが使ってる訓練室とかがある。
でも、そんなの目もくれずにただ下の瞼を持ち上げて目を細くしながらまっすぐ前に進んで行ってた。
だけど、もも姉の声が聞こえた途端、体が前のめりになりそうなくらいの早さで止まって。すぐに体をひっくり返す。まだ両方の足が並ばない状態なのに、でも、それでも僕はただ顔を上に上げて、そっちに設置してるモニターの方で、今日ももも姉がインタビューを受けてる様子が見えてた。
ゆっくりと、なるたけ靴を床に置くのを爪先の方から慎重にする感じで落っことしつつ進める。でも、それでも両方の脇を軽く開ける感じで両方の腕をまっすぐ斜め下に落っことした状態なのは一切変えない。首を上に向けつつちょっとだけ口を開けながらそっちの方に近づいて行ってた。
その間も、画面の向こうにいるもも姉はまっすぐ前は見ないでカメラに対して斜め横を体で見る感じで、そっちにいると思うマイクを持ったインタビューアに向いてて。そうじゃない時は自分の黒い髪を整えるために顔を下に向けてる時だけ。それ以外はずっとインタビュアーの方でもカメラ目線でもない方に向けて何かよくわかんないことを話してる。
でも、それでもいつの間にか画面のすぐ下の所に来てた僕はただ両方の肩を落としながら、そこを見上げてたけど、でも、その数秒後にはもう全然関係ない広告が流れてて。
それのせいで自分の顔を下げながら両方の唇を出来るだけ力を入れないように潰す。それだけでなく、眉も同じ感じにしてた。
少ししてから声を混ぜたため息を1回だけ吐き出してからまた体全体を使って回す感じで歩きだすと、今度は最後まで止まらないでそのまままっすぐに進んで行った。
宿舎の部屋につくや否や、靴だけ適当な勢いで投げ捨てて歩き出そうとしたけど、でも片方だけ間に合わなくて、そのまま床に転がってる漫画とか服とかプリントを避けながら何度もけんけんする感じで足を動かす。
脱ぎ終わった後はそれも明後日の方向に投げ捨てて。それが終わったら少しだけ両方の靴が投げ捨ててある方を見つめたけど、またもう1回だけため息を吐いてからベッドの上に体を投げ捨てた。
掛け布団から空気が抜ける音が一気にしてから、その間も僕はただカーテンが閉めっぱなしになってるせいで薄暗い部屋の中の一部になってるだけの壁紙と、少し上の方にあるアイアンマンのポスターの端っこの方だけが見えてる。
そして、それと一緒に見えてる僕自身の手首と手の甲はほんの少しだけ持ち上げられてて、ふくらみがあるみたいになってる。でも、その両端はベッドと触れ合ったままだった。
寝てるわけでもなく、力を入れないでいる目元をほんの少しだけ薄目で開けたままそっちの方を眺めてる中で、光って見えてるのは、僕の髪の毛が抜け落ちたのだけ。それの弧を描いてる箇所だけがこっちに向けてほんの少しだけ眩しくなってた。
『宇宙まんさんとドラマのモブだけの映画とか誰が見に行くんだよwww』
片方の腕を折り曲げたのを枕代わりに、もう片方の手もベッドの上に乗っけた状態で、親指だけでポストする。その画面にはマーベルキッズと僕のポスト以外に見えてるのは、そこに反射してる僕の顔。全然表情を作ってる感じはしない。
部屋の中はほとんど夜の闇の中に溶け込んでて、その中を照らしてるのはスマホの光だけ。そこで僕は何も発さずにただ小さく口を紡いだまま相変わらず同じ動きだけを使って画面を操作してた。
だけど、しばらく上瞼を落っことしながら見つめてた視線の形を開けることで表情を変えたのは、スマホの画面がXの通知を付けた時。向こうのミスマーベルのアイコンと一緒にコメントが表示された時だった。
それと一緒に僕は体を勢いよく回転させて、体全体をうつ伏せにしながら肘を立てる。さらに、足を何度も膝の所でバタバタさせながらいる。その状態で足を使って何度もベッドを叩く。
『見てみなきゃ面白いかどうかってわかんなくない?』
画面をスライドさせてすぐに返信の所を開く。それと一緒に口元を1回だけ結びなおしながら、今度は両方の親指を使ってコメントを打ち込んで行った。最初は打ち終わってすぐに送信しようとしたけど、少しだけ頬を膨らませながら顔を明後日の方向に。
数秒間だけそっちの方を見てたけど、それもすぐに辞めるだけ。もう1回口を紡ぎ直したらまた文章を打ち終わらせる。
『見なくてもわかるだろwwwMCUはエンドゲームで終わった。ノーウェイホームとガーディアン3は認めるけど。エターナルズとか寝たw』
書き終わってからも画面を無意味に上下させながらもまたすぐに自分のさっき打ったコメントを表示させてそれを読み直す。鼻から数回だけ息を吐きながら目を細めて瞼の縁同士をくっつけ合うみたいになってた。
その間だけは画面を見れずにいたけど、それもまたそんなに変わらない時間だけ。すぐに1回だけ息を吐いてから顔を元に戻すともうすでに返信が来てるみたいで。それに対して何か他の場所で反応するよりも早く片方の親指でそこを押した。
『あなたがエンドゲームまでの方が好きなのはわかった。でもエターナルズとかストレンジとかラブサンダーは監督の作家性が出てて、こういうのが私は好きだな』
鼻から一回だけ息を吸いながら胸元を強く締め付けるみたいにしながら体を前のめりに。その結果として顔と画面が近づきすぎてたみたいで、前と同じペースと動きで文字を打ち込んだら、それの後目が痛くてそこを親指で何度も押し込んでた。
それから少しでも遠くの方を見るためにベッドがある方とは反対側の壁に目を向ける。でも、そっちの方はまだ漫画とか脱いだ服とかが置きっぱなしになってて、それが月の灯りが入ってきてる方とは逆側に濃い影を作ってた。
だけど、それに対して僕側が何をするわけでもなく、ただまっすぐ見つめるけど、向こう側の真っ白な壁紙のデコボコしてる箇所が影でより黒くなってる様子だけ。しばらく顔を反対側の横向きにしてベッドの上に頭を乗っけるだけにしてたけど、そこから顔の向きを変えて、またコメントを打ち返してた。
『あんなのが面白いとか頭湧いてんだろ、ソーもストレンジもインフィニティウォーの時はあんなに弱くなかった』
書き終わってすぐに送信しようとしたけど、でも、その瞬間にラインの通知が来てて。もも姉のアイコンが見えるなり、間髪入れずに指で押そうとしたけど、1回それを止めてスマホの画面を自分のおでこにつける。その状態で何度も呼吸を繰り返す。
目をつぶってそれを続けた数秒後にスマホを持ってる手を上下に揺らすような動きをしながら視線を上に向けて部屋の天井を眺めてた。
『今部屋に戻ったよ。返信遅くなってごめん。メイちゃんのライン。今日も全部読んだよ。おやすみ、寝るね』
少しの間だけもも姉が僕のためだけに書いてくれたラインを眺めてたけど、すぐに体をひっくり返すだけ。両方の腕を広げる感じで仰向けになってる。そのまま薄目に天井を眺めてた。
でも、それで自分の胸が動いてる感覚なんかしないし、部屋に飾ってあるキャップのポスターだったり、カーテンの向こうでほんの少しだけ溢れてる施設の他の部屋の光くらい。
僕自身の体の姿なんかこの状態じゃ全く見えないし、それ以外で今もあるのは床の上に散らかってる物の影が、建物の反対側に影を伸ばして夜の闇をもっと濃くしてるのくらいだった。
読了ありがとうございます。