第1話「ねぇ、名前は」
今日からなるたけ毎日投稿していきます。
ある程度書き貯めしていますが、失踪しないように努力します。
上瞼をほんの少しだけ落っことしてるのは、自分でもずっと視界のおかげでわかってるけど、それでも道をただ行ったり来たりしてる人たちの様子が確認できるのは、床に反射して映ってる姿だけなのをそのままにしている。
でも、見えてるって言ってもそれはだいぶうっすらとした影みたいなのだけで。僕の視界の中でわかりきってるのは自分の膝より下がずっとぶらぶら動いている足と、その上に肘だけが乗っかってる腕。
それを半分だけ覆ってる灰色のシャツとズボンは、その大きく前に伸びて胸元の肌も含めてこの場所のすぐそばにある階段のせいで暗くなってる。それでほとんど同じ色になってるみたい。
僕がいるこの硬いベンチとその横に置きっぱなしになってる葉っぱも生えてないでただ鉢植えに植わってるだけの木。それ以外の場所はみんな真っ白な壁と床ばっかりで。
外側がガラスの羽目殺しになってるし、二階はもちろん三階部分の高さまで吹き抜けになってるせいで、そっちの方から入ってくる太陽や電気の光を浴びてそれらを反射させてた。
さらに、向こうの方では飛行機が飛んでたり地面の上を進んでる音だったり、アナウンスが次のの予定だったりを放送をずっと繰り返してる音が聞こえる。でも、それで何かがある訳でもなければ、僕の前を歩いて行ってる女の係の人が通り過ぎてく足が何度も高い音をさせてるのだけは消えたりしない。
だけど、僕の目を無理やり眉のあたりを使って押し込もうとするのは辞めない。それだけじゃなくて、自分の上の唇の真ん中あたりを押し込みながら下側の右の端っこも力を入れる。
その間、何度も喉の所が小さく動くのを感じて、こっちは肩を狭めておくことしか出来ない。ずっと同じ姿勢で、足音がたくさんの人の声の中に消えていくのだったり、他の大人の人が道を尋ねてる声で止まってるのもその間は耳が捉える。
辺りで聞こえてくる音がまた今までと同じに戻った後も、ずっと同じ姿勢をしてるだけにしてた僕と同じ感じで、この空港の建物は四角い箱の中みたくなってる。さらに、ガラスになってる壁もいくつもの骨組みで羽目殺しで四角く切り分けられてる感じだった。
そっちから視線を逸らそうとすれば、飛行機に乗りにってると思う、もう膨らませてる浮き輪と大きいゴーグルを身に着けたまま、同じペースで飛び跳ねる感じで歩てる子が勝手に視界に入ってきた。
1回だけ閉じてる歯に押し付ける感じで舌を動かす。だけど、それで聞こえてくる音なんかなくて。一度強く鼻から息を吸いながら脇を強く締め付けるだけにしてた。
「だから、あれは魔女の子」
左側だけ外の空気と歯が触れ合いそうなくらいの感覚を味わいながら顔を下に向けてる。それだけじゃ全然足りなくて、眉を両方とも力を入れて、もっと顎を自分の体に近づけるみたいにした。
でも、そんなことしてたけど、そんなの意味なくて、唇から息が溢れそうになるのを何度も抑え込もうとする。一方で、向こうでは当然みたいに声が大きくなってて。僕は鼻から息を吸い込んでそれを喉に強く力を入れるくらいしか出来なくて。ずっと同じ体勢でいながら、ただ自分の膝と太もも、そして2つの間に仕舞われた自分の腕とか手だけを見てた。
そのつもりだけど、いつの間にか僕の頭の少し上の方だったり、後ろ側の中ではちょっと前の方になる辺りだったり、が少し柔らかくて生暖かいのに触れられて、それで自分の体がほんの少しだけもっと薄暗くなってるのに気づいた。
そして、それに続けてすぐにそっちにいた薄い桃色のセーターを着てた子を一気に振り払う動きをしつつ、両方の手を右側の座面に置きながら体を斜めに下に持って行く。視線もそっちと同じ方に向けちゃってた。
でも、それも数秒の間だけ。すぐに息を吸い込む音を自分にも聞かせながら相手の方にもう一度視線を向けた。
「触らないでよ」
相手に上瞼をほんの少しだけ下げながら数秒間だけこっちを見降ろしてる女の子が前のめりにしてるのを見ながらいた。
数秒間向こうから聞こえてる声の方をこっちも向こうも見てる感じにしてて。それがさらにしばらく続いた後に僕の方から目を細くして、顎を引っ込めて相手の方を見つめた。
その声はいつもより低くなってる感じで、喉を締め付けながら片方の手でその子の方に近い側の肩を抑え込む。一旦瞼だったり目を閉じ直してからもう一度相手のことを見た。
一方でその子は言葉になってない声を出しながら口を開けてるのか開けてないのかわからないのを少しの間だけ続けてて。僕も口をだんだん唇同士を力なく平たくしてく感じにしてた。
「ただ、金髪、きれいだなって思って」
視線を横に反らしながらその声を出した。それを聞いたら、自分の癖になってる髪の毛を人差し指と中指の間でつまんだらそこをだんだん降ろしていく。それだけじゃなくて脇を締め付けながら一回瞼を降ろして鼻から息を吸った。
だけど、僕の髪の毛は引っ張ったのが指の間を抜けていくのと一緒にまた元の輪っかを描く感じに戻ってて。それを追いかけるみたいにまたそれを自分の手の中に戻していく。その動きと一緒に口の居場所をしばらく探す感じでそれを小さく開けたり閉じたりしてた。
でも、指を何回か動かしてる間に、自分の目の前に手の平が来たところで上の唇がしたのを押しつぶすために力が入って。ただ、それだけじゃなくてその中の歯にも同じになって、口の所にほんの少しだけどえくぼが出来るのを感じ取った。
「これは」
ほんの一緒だけ出した声は自分でも出してるのかわからない気がする。でも確かに口はようやく息が通るかどうかわかんないくらいの大きさくらいには開いてて。自分でもそれで口の中に籠った生暖かい空気が外の冷たい空気と交じり合うのを感じる。
ただ、そこから少しでも動かそうとすると、それ同士がぶつかりそうで。視界がだいぶ滲んでて色んな色が交じり合ってるみたいになってるのを、ただ遠くで今も言葉同士の間を開けながら話してる音が反響してるのを感じてる。
「お母さんのと同じで……」
「魔女の?」
僕が言葉を出せてるのかわからなくて、何度か確認するみたいに止まりながら声を進めてた。でも、向こうの方からこっちの隙を奪う感じで言葉を突っ込んで。それのせいで僕は口を閉じて、それと一緒に喉奥で同じ音が鳴るのを感じる。
上の瞼を降ろしながら眉毛の辺りが細かく動く。ただ、それと一緒に相手の方から視線を逸らす。
だけど、向こうの方は今も大きくて真っ白な飛行機が大きな機体を動かしながら進んでる様子だったり、道路になってる場所も少し灰色が混じってるくらいで、太陽の光に照らされたまま。それ以外の箇所も背が低い草が同じ姿で等間隔で並んでるくらいで。
その手前側の空港の中には、僕よりもちょっと小さいくらいの子が同じ場所を回りながら追いかけっこをしながら何度も高い声を出してたり。あくびをしながらスーツ姿のおじさんが全然方向が足りてないくらいの顔の向きでテレビを眺めてる。それくらいしかなかった。
「こっち、来て」
気づいたらいつの間にか僕の指だけがほんのちょっとだけベンチに触れてた手を相手の子が掴んでて。それと一緒にこっちはそれを自分の胸元に戻しながら上瞼を降ろしてまっすぐに相手の様子を見つめ続ける。
そしたら、向こうは数秒間だけ自分の胸の少し下の辺りに両手を持ってきて、片方の人差し指をもう片方の三本の指で掴む。その状態で視線を上の方に向けてるのも数秒間。また僕が見てた方とは違う方の外側を見る。
「あそこにいるの、私のお母さんとお父さん、らしいんだよね」
今も数人の人がロビーの中で輪っかになってるのかなってないのかになってる方を見たら、僕もその子も少しの間、何もせずにいる。
ただ、そっちの方では座り込んでるおじさんがたまに笑い声を出したら、それに対して近くにいた女の人が足を踏みつけると一緒にまた大きな声をあげてた。その頃、相手の子が息を吸いながら顔を僕がいる方とは違う方に傾けながらいて。息を吸いながら言葉同士の間を開けて話してはいるけど、でも、言葉の最後をわざと持ち上げる感じで進めてた。
言葉が終わってから数秒間、相手の方から口の両端を持ち上げながらこっちに視線をゆっくりと回す感じで見て来てて。そっちが立ち上がってるせいで僕は相手の方を見つめることになる。
しばらくまっすぐ相手の顔を見つめてるだけにしてた後に一度瞬き。でも、相手の下瞼を頬で持ち上げてるけど口は開けてない様子を数秒間見つめるだけになってるのは変わらない。そのまま、向こうが勢いよく走り出したのを視界だけじゃなくて音でも捉えて。それは硬そうな靴で同じく硬い床を叩くせいで、すっごく高く聞こえて。
そのせいで少しだけ腕を回しながら私から離れてくと思った姿を見てたら、私ももう一回だけ好き放題やってる大人の人たちの様子が、たくさんある床の四角を挟んだ向こうでいるのを数秒間見つめて。
数秒間だけ経ってから両方の手をお尻のすぐ横について、そこに力を乗せた反動で立ち上がる。さらに、そのまま走り出してる間、体を数歩の間だけ前のめりにしながらいて。上にある階段の屋根がある場所を抜ける瞬間、その近くにあった太い柱を手の平を一瞬だけ当てる感じで押し込んで、そのまま走り続けた。
前を走ってる女の子の背中に私もすぐ追いついたと思ったら、向こうも一瞬だけ息を吸い込みながら体と頭を前のめりにしてて。両方の腕も折り曲げながら走る。向こうの細かくなった足の動きを見てたら、目の前に驚いて足を片っぽだけ持ち上げてるおじさんがいた。
すぐに片方の足だけを着地させて止まろうとしたけどそんなの間に合わない。だから、わざと自分の足元にたくさんの泡を召喚してそれで体の向きを変えたら、一緒に片側の肩から床に落っこちそうになったのを、また新しく出した泡で受け止めてる。バウンドして、おじさんを乗り越えたら素早く着地。また女の子の後を追いかけた。
向こうがこっちに向けながら両方の手を伸ばしつつ、背中側から噴水に飛び降りてて。気づけば僕もそっちについていくみたいに両方の手を軽く回す感じで、両方の足を軽く折り曲げながら飛び込んだ。
最初の一瞬だけは僕らが入ったことで一気に水しぶきが巻き上がるのを感じたけど、思ってたよりも深かったみたい。自分の髪の毛が持ち上がるのを感じながら口の中に空気をため込んで、その子も一緒になってるのだけを感じながら、互いに見つめ合う。
だけど、それもほんの一瞬だけの間。すぐに僕の視界が全部真っ白な泡まみれになってて。それのせいで辺りが何も見えなくなってるのが続いた後に、水を吸って服も髪も重いまま体にへばりついてる状態が続く。
それからも、僕と相手の子をそうした人たちがごちゃごちゃ言ってるけど、でも、そんなのよりも僕らが吹き上げられた水しぶきの方が全然大きい。それが収まった後も、ずっと2人の体から水が溢れ出てる音だけをずっと聞いてた。
「ねぇ、名前は」
やっと聞こえて来た声は、周囲のうるさい喧騒に消えそうなくらい小さかったけど、でも、確かに僕の所にも聞こえて来てて。両方の肘を曲げながら上の方に向けてるこっちと同じ姿勢のまま、胸の所を呼吸で上下にしながらいた。
こっちもこっちでほんの少しだけ瞼を落っことしながら小さく口を開けて自分の呼吸を整えてる。こっちの姿も相手の姿も、水滴をたくさん滴らせながら空港の硬そうな床の上に反射してた。
「……メイフィールド。フィン・メイフィールド」
読了ありがとうございました。